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第23回JBCクラシックJpnI

先行2頭をとらえ直線独走
  JBCの舞台で重賞初制覇

JBCスプリントJpnIでイグナイターが勝利をおさめたことで、大井競馬場はどよめきが収まらないという状況。そのなかで16時30分発走のJBC2歳優駿JpnIIIの映像が大型ビジョンに映し出されると、再びスタンドは大きな歓声に包まれた。

それと同じころ、JBCクラシックJpnIの出走馬がパドックに登場。出走する10頭が夕方の淡い太陽光線に照らされてゆっくりと周回を始めた。

するとあちらこちらから驚きの声が聞こえてきた。パドックのビジョンに映し出された馬体重には、10キロ以上の増減がある馬が6頭もいたのだ。とくにノットゥルノのマイナス27キロが目立っていた。その姿を見ると、胴のくびれがはっきりと出ているシャープなフォルム。それでも明らかに細いという感じではなく、落ち着いた様子で歩いていた。

マイナス12キロと発表されたテーオーケインズもゆったりとした歩き。逆にプラス1キロのメイショウハリオは、帝王賞JpnIのときと比較すると歩様に硬さが感じられた。またマイナス2キロのウィルソンテソーロは、周回を重ねるうちに気負いが表に出てくるようになった。

入れ替えられた白い砂が照明の灯りに照らされて浮かび上がる舞台でゲートが開くと、10頭は互角のスタート。しかしサベージだけはすぐに後方待機策を取った。そのほかの9頭は一団で、内枠のノットゥルノとテーオーケインズが並ぶ形で先頭に。その直後をケイアイパープル、ウィルソンテソーロ、キングズソードが横に広がって追走したそのペースはやや速いと感じられるもの。実際に2ハロン目は11秒4を計時した。

それでも1コーナーに入ると隊列は徐々に縦長に。そこでノットゥルノが内枠の利を得る形で、自身としては初めての逃げ戦法に出た。続いてテーオーケインズが2番手を確保。3番手はケイアイパープルとキングズソードが併走し、ウィルソンテソーロ、クリノドラゴン、メイショウハリオと続いた。

しかし3コーナーに入っても中団に付けた各馬の動きはいまひとつ。3コーナーあたりでケイアイパープルが後退したのを除くと、4コーナーでも各馬の位置取りは1コーナーとほぼ同じ。最後の直線を向いてノットゥルノにテーオーケインズが並んだ。

その争いに加わってきたのが、外を回ったキングズソード。競り合う2頭を横目に残り300メートルあたりで先頭に立つと、さらに加速して独走に入り、4馬身差をつけて勝利を飾った。

2着争いは、テーオーケインズが前に出る場面もあったが、残り100メートルあたりで内からノットゥルノが差し返した。テーオーケインズは競り負ける形でアタマ差の3着だった。

その結果にテーオーケインズ鞍上の松山弘平騎手は「勝ち馬は強かったですが、最後に差し返されたのは……」と話して納得がいかぬという様子。ノットゥルノは負傷した武豊騎手の代役として騎乗した森泰斗騎手が「勝ちたかったですね。メンバー的に前に行こうと考えていて、マイペースで進められたのですが。でもいい馬に乗せていただけて感謝しています」とコメントを残した。

単勝1番人気のメイショウハリオは3着馬から2馬身半差で4着。濱中俊騎手は「前が止まらない馬場でしたが、でも向正面から手応えがあまりよくなくて、最後の直線でも手応えがないままでした」とのこと。9月10日のコリアカップGIIIに招待されたものの、それを辞退した影響があったのかもしれない。

さらに2馬身差の5着は重賞3連勝で臨んだウィルソンテソーロで、「3コーナーでペースが上がったところでついていけなくなった」と、手綱を取った菅原明良騎手。6着のクリノドラゴンを含めてJRA所属馬が上位を独占したが、重賞未勝利のキングズソード(4番人気)が勝ち、近走成績がいまひとつだったノットゥルノ(5番人気)が2着に入ったことで、3連単は3万5080円となった。

地方馬の最先着は、大井のミヤギザオウで7着。唯一、南関東以外から参戦した金沢のトランスナショナルは8着だった。それでも手綱を取った松戸政也騎手はレース前もレース後も満面の笑顔。「地方最先着を狙っていたんですけれどね。最後の直線ではよく伸びてくれて、(ミヤギザオウの)今野さんの背中も見えていたんですが、届きませんでした。でも2年連続でJBCという舞台に参加することができて、本当にありがたいです。パドックではたくさんのお客さんの姿が見えるので、どうしても笑顔になってしまいますね」と、うれしそうに話した。

この日の大井競馬場の入場者数は24,506人。最終レース終了後には、たくさんのファンが見守るなか、JBCフラッグが来年の開催地である佐賀競馬場へと引き渡された。その風景は、初の九州開催となる次回への期待が感じられるものだった。

取材・文浅野靖典

写真築田純、早川範雄(いちかんぽ)

Comment

J.モレイラ騎手

それほどプッシュすることなく3番手につけることができて、前の馬のキックバックもなく、馬がハッピーな位置で進めることができました。最後の直線で抜け出したところで馬が気を抜くかもしれないという心配があったので、最後までしっかりと追いました。

寺島良調教師

嬉しいより驚きのほうが大きいかな。12キロ増でしたが馬体に張りがあっていい状態という感触がありました。この馬の全兄(キングズガード)で重賞(プロキオンステークス)を勝って、全弟で大きいところを勝ててよかったです。この1年くらいで一気に成長しましたが、さらに良くなってくれると思います。