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2023JCS ファイナルステージ

宮川騎手が初出場で優勝
  最年少の福原騎手が2位

20代での出場となった福原杏騎手(浦和)、落合玄太騎手(北海道)、渡邊竜也騎手(笠松)がそれぞれ暫定1位、2位、4位と上位を占めて迎えたファイナルステージ園田。3位にも初出場の宮川実騎手(高知)がつけるなど、例年にも増してフレッシュな顔ぶれで優勝争いとなった。

なお、山口勲騎手(佐賀)は7月1日の地元レースで本馬場入場時に負傷し、第1戦は川原正一騎手、第2戦は廣瀬航騎手にそれぞれ乗り替わりとなり、2人はポイント対象外として騎乗することとなった。

「なんせビリなので」と苦笑したのは全国リーディングに5度輝いた実績を持つ森泰斗騎手(船橋)。ファーストステージ盛岡では2戦で2ポイントのみの獲得だったが、勝てれば30ポイントの加算。11位・山本聡哉騎手(岩手)も「ポイント的に厳しいですが、精一杯頑張ります」と話したように、全ての騎手が暫定1位・福原騎手の34ポイントを逆転できる状況にあった。

そうした中、生き生きとした表情を見せたのは吉村智洋騎手(兵庫)。2019年には「僕の庭」という地元・園田競馬場で2連勝を果たし、大逆転優勝を手にしたとあって、今回も自信の笑みを浮かべた。

第1戦はその吉村騎手のスターザサンライズが近走の持ちタイムでは頭一つ抜けており、向正面で中団から内を通ってポジションを上げると、4コーナーでは5頭が一団となった中、冷静に進路を見つけて完勝。逃げた山本騎手が3馬身半差2着に粘り、クビ差3着の渡邊騎手は「惜しかったなあ。ポイントを稼ぎたかったです」と顔をしかめた。

上位組で対象的な雰囲気だったのは落合騎手。最後方から6着まで追い上げたが、「前が壁になってしまって、それがなければ掲示板もあったかも。いい順位につけていたので、なんとかと思っていたんですけどね。最後まで頑張ります」と、意気消沈ぎみ。それでも最終戦を前に暫定3位で、暫定1位は勝った吉村騎手と福原騎手が同ポイントで並んだ。

しかしながら吉村騎手は「次は一つでも上の着順に入るためにどう乗るか」と思案顔で、福原騎手も「もちろん勝ちに行きますが、少しでも上位に入着できれば」と、共にBグループの騎乗馬とあって、このまま逃げ切るには一筋縄ではいかない様子。

とはいえ、Aグループの馬にも抜けた存在は見当たらない第2戦。好スタートから逃げたのは宮川騎手とアヴニールレーヴだった。短距離で逃げて強さを発揮する馬で早々に先手を取ると、ペースを程よく落とし、馬にとっては約4年ぶりのコーナー6回の中距離を4馬身差つけて勝った。

そうなると気になるのは上位騎手たちの着順で、その中では落合騎手が最先着の7着だとスローモーションで判明すると、見守っていた園田の騎手や調教師たちは「(宮川)実さんが優勝じゃない?」とにわかにザワつき始めた。

そこに9着・福原騎手が「返し馬の雰囲気で、ちょっと厳しいかもと感じました」と肩を落として帰ってきて、優勝を逃したことを分かっている表情。10着・吉村騎手も「表彰台に上がれれば賞金はありますか?」と、なんとか気持ちを切り替えようとした。

その後、ゆっくり検量室から出てきた宮川騎手は多くのカメラと記者に囲まれた。しかしながら、第1戦を終えて暫定7位だったとあって本人は優勝を諦めていた模様。地方競馬全国協会(NAR)の職員から優勝を告げられると「えっ!本当?」と目を丸くして、「札幌に向けて、もう緊張してきました」と言いつつも、ワクワクした表情を見せた。

宮川騎手は09年の落馬により左目を失明。のちに妻となる別府真衣騎手(当時)は「命だけは助かって」と祈り、実況の橋口浩二アナウンサーは見舞いに訪れ「早く馬に乗りたい」と聞くと、帰りの車中で一人涙を流したという。

そんな状況から約1年後にNAR職員立ち合いの模擬レースで復帰を認められてカムバック。「片眼が見えないことを言い訳にしたくない」と、レースに真摯に向き合い、昨年はじめて高知リーディングに輝くと、今年1月の佐々木竹見カップジョッキーズグランプリで初出場初優勝を果たした。

デビュー前から二人三脚で歩んできた現所属の打越勇児調教師は「泣きそうです」と高知から喜びを語り、JRA札幌競馬場での騎乗に向け、最大限のサポートをしたいと話した。

V字回復を果たした高知競馬からの優勝は07、14年・赤岡修次騎手、16年・永森大智騎手に続き4回目(17年まではスーパージョッキーズトライアルとして実施)。8月26・27日のワールドオールスタージョッキーズに地方競馬代表候補騎手として選定される予定となっている。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 宮川実騎手(高知)

第2戦は向正面で後続が来た時も雰囲気が良く、トップジョッキーが集まるレースで初めて勝ててホッとしました。札幌に向けてすでにドキドキしていて、明日から眠れるかどうか(笑)。高知だけでなく地方競馬の代表になったので、恥じない騎乗をして、今度は札幌で優勝してきます。

総合2位 福原杏騎手(浦和)

盛岡が終わってからは特に意識しすぎることなく、「いい馬が当たればいいな」と思っていました。いま門別で期間限定騎乗をしていて、浦和のような早仕掛けにならないよう乗り方を変えている最中です。園田に合わせた乗り方をしたつもりですが、イマイチでした。またこの舞台を目指して頑張ります。

総合3位 吉村智洋騎手(兵庫)

第1戦は馬が強くて勝てました。4コーナーは大外を回してもギリギリ届いたでしょうが、このレースでそれではいけない、と思いました。第2戦は一つでも上の着順を、と思って乗りましたが、宮川騎手がすごくいい逃げをしました。地元・園田は自分の庭ではありますが、そう甘くはありませんね。