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第55回ばんえい記念

人気の7歳2強が一騎打ち
  障害2番手から差し切る

ばんえい競馬の最高重量1トンを引く大一番、ばんえい記念は今年、出走希望頭数が10頭を越えてフルゲートとなった。最終週は好天に恵まれて久しぶりの重馬場。止まっては進み、を繰り返すばんえい記念デーにふさわしいレースで場内は盛り上がった。

ばんえい記念の馬場水分は1.3%。陸上自衛隊第5音楽隊による新旧ファンファーレでスタートした。第1障害から膝をつく馬がいる、1トンならではのレースで各馬が何度も刻みながら進む。コマサンブラック、メムロボブサップ、昨年の覇者メジロゴーリキが先行する展開。

メジロゴーリキが2分3秒で最初に第2障害に到達した。各馬が並び、息を整えてまず始めにメジロゴーリキが仕掛けた。続いて障害巧者のインビクタ。キタノユウジロウ、メムロボブサップと次々と障害に脚をかけ、止まりながら一歩ずつ登る。

最初に天板に脚をかけ、越えたのがばんえい記念現役最多5勝の藤野俊一騎手のアオノブラック。それから隣同士のメムロボブサップとメジロゴーリキが上り、先にメムロボブサップが抜け出した。降りてからは1トンを引いているとは思えない脚力で、逃げるアオノブラックを捕らえにかかる。

ゴール手前10メートルでアオノブラックが止まり、メムロボブサップが交わすが、アオノブラックも立て直し攻防戦に。0秒4差でメムロボブサップが先着し、1番人気に応えばんえい記念初制覇を飾った。勝ちタイムは3分34秒4。

3着はメジロゴーリキ。マツカゼウンカイが4着、同レース初騎乗の金田利貴騎手のコマサンブラックが5着と初挑戦の2頭が健闘した。障害を越えられなかった2頭を残してインビクタがゴールするとスタンドからは大きな拍手がわき起こった。

ホクショウマサル以来2年ぶりのばんえい記念制覇に、阿部武臣騎手は「ほっとした」と笑顔を見せた。昨年2着の雪辱を果たすため、1トン以上のそりを引かせ、つきっきりで調教を付けてきた。馬体が小さくデビューまで買い手の付かなかったメムロボブサップは、前走から34キロ増の1082キロとふっくらとした馬体に。希望通り先行できたのは「第1障害をすんなり越えられた」からといい、第2障害を降りてからは止まらずゴールした。オーナーブリーダーの竹澤一彦さんは「(ライバルの)アオノブラックに勝てたことがうれしい」とほっとした表情。来季もこの7歳馬2頭を中心とした戦いが続きそうだ。

最終レース後には、マツカゼウンカイと6着キタノユウジロウの引退式が行われた。

初めて平日のナイター時刻に行われたばんえい記念の発売額は1億9723万400円で、1レースあたりの最高額を更新した。この日をもって今季149日間の開催を終え、発売金額合計は554億7988万5100円で帯広市単独開催後最高額を更新。27万9837人の総入場人員も、コロナ前の過去最高約29万に迫る勢いだった。

取材・文小久保友香

写真浅野一行(いちかんぽ)

Comment

阿部武臣騎手

ほっとしています。差しきれないかと思ったが、頑張って歩いてくれました。ポイントの第1障害をスムーズに越えられたので先行できた。ばんえい記念は夢のレース。スピード、瞬発力、持久力と全てを兼ね備えた馬です。

坂本東一調教師

こんなにうれしいことはないです。主戦騎手はハラハラドキドキさせてくれますね。第2障害のひと腰目で勝った、と思ったが2回目の腰でまだ早い、と声が出た。負けても悔いはないほど最高の健康状態。皆さんに喜びを与えられるよう頑張っていきます。