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第46回名古屋大賞典JpnIII

競り合い制して初タイトル
  川田騎手は3日連続DG制覇

新競馬場に移転して約1年。そのほとんどのレースで内ラチから数頭分を空けて走る様子が見られたが、この日は違った。前日の終盤レースから騎手たちは「内が軽い」と徐々に感じはじめ、名古屋大賞典JpnIII当日は内をほとんど空けないレース。第1レースから第5レースまでは全て逃げ切り勝ちで、インが有利な馬場傾向となった。

注目は2日前の黒船賞JpnIIIをシャマル、前日のダイオライト記念JpnIIをグロリアムンディで制覇した川田将雅騎手。3日連続のダートグレード勝利へ期待が寄せられた騎乗馬はハギノアレグリアスだ。松田國英厩舎でデビュー後、同厩舎の解散と屈腱炎による1年8カ月の休養を経て四位洋文厩舎にやってきた馬で、2走続けてダート重賞2着と、タイトルまであと一歩のところまできていた。そうなれば単勝1.2倍の1番人気に推されるのは当然と言えるだろう。

好スタートから先手を取ったのはアルサトワ。芝で挙げた6勝中5勝が逃げ切りで、初ダートのここでも同じ戦法に出た。その外に同厩舎のバーデンヴァイラーが続き、ハギノアレグリアスは6番手あたりにつけた。レースはゆったりした流れで、1周目スタンド前では地元のコウエイスーシェフが抑えきれない手応えで3番手外まで位置取りを上げたほど。鞍上の大畑雅章騎手も「ダートグレード競走ではこんなペースにならない、というくらい遅い」と感じた。

その流れは残り800メートル過ぎで一気に変化。有力各馬が追い出してペースアップし、4コーナーで外から先頭に並びかけたのはハギノアレグリアス。そこへ内をロスなく回ったケイアイパープルも脚を伸ばしたが、約100メートルにわたる追い比べをアタマ差で制したのはハギノアレグリアスだった。

「ケイアイパープルがずっと内で脚を溜めていて、怖いなと感じていました。直線は『頼む!』と思いながら見ていました。ジョッキー時代と違って、調教師はレースでは何もできませんからね」と、安堵の表情を浮かべた四位洋文調教師。騎手時代、1586勝(JRAのみ)を挙げた名手にとって、調教師として初の重賞制覇の瞬間でもあった。

ケイアイパープルは惜しくも2着に敗れたが、藤岡康太騎手は「今後に向けていい材料になりました」と話した。というのも、これまでは揉まれる競馬では結果が出なかった馬。それにもかかわらず、道中はずっと内で揉まれながらも直線で伸びてきた。「最後は並ぶところまでいってくれて、もう少しだったので残念です」と悔しさを抱えながらも、レースの幅が広がったといえるだろう。

3着バーデンヴァイラーはこれまで外から被されると力を発揮しきれないレースがあり、「前走のようなセーフティリードが欲しかったです」と岩田望来騎手も4コーナーで勝ち馬が来る前に抜け出したかったよう。4着はスローペースと逃げ有利の馬場傾向を味方につけたアルサトワ、5着に差したニューモニュメントで、地方馬最先着は今年もジンギで6着。このレースでは2021年4着、22年3着と上位に食い込んでいたが、昨年6月の六甲盃以降は勝ち星を挙げられず、ここでも掲示板を外す結果となってしまった。

「メンバー的に走れているとは思いますが、最近は追い切りでも大人しくなっています。気持ちを入れるためにハミを替えたりしていて、こんなところで終わる馬だとは思っていません。悔しいです……」と田中学騎手はジンギ復活へ思いを強くした。

取材・文 大恵陽子

写真 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

怪我もあり時間はかかってしまいましたが、無事に重賞ウイナーの仲間入りができ良かったです。向正面で2着馬の雰囲気が良く、こちらは外を回さないといけない形になるので直線で併せに行けるよう進路を探し、アングル的には差されたように見えたかもしれませんが、終始こちらが出た状態でした。

四位洋文調教師

(川田)将雅君はレース前に今日の馬場傾向も調べてくれて、今週は絶好調ですし「頼むよ」と、安心してレースを見ていました。最後は地力だと思います。上の舞台で活躍してほしい馬ですが、脚元のことがあって1戦1戦が大事なので、帰って馬の様子を見て、問題なければ帝王賞を目標にしたいです。