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第37回全日本新人王争覇戦

雪が舞う中での熱戦
  角田騎手が完全優勝

37回目の全日本新人王争覇戦は、例年通り、地方騎手が9名、JRA騎手が3名参加する2レースでの争い。しかし今年はさまざまなアクシデントが発生した。

まず、当日朝に第1戦の池谷匠翔騎手(川崎)の騎乗馬が出走取消。さらに自身も搭乗予定の飛行機が遅延したことなどもあって、第2戦にも間に合わなくなってしまった。そのため池谷騎手は、形としては“不参加”。第2戦はポイント対象外として、地元の岡遼太郎騎手に騎乗変更となった。

その発表があったのが第1レースの発走前。その後、出場騎手の集合写真を撮る時間が近づくと、空から強い北風とともに粒の大きい雪が降ってきて、騎手が2列に並んだところで高知とは思えないほどの猛吹雪が発生した。

この日は日本各地に“10年に一度の寒波”が襲来。通年ナイターが行われるほどの温暖な地も例外ではなかった。午前中から雨と晴れと曇りがめまぐるしく変わり、第2レースで実施された第1戦では気温が0度近くまで下がった。

そんななか、11名のうち大木天翔騎手(大井)、東川慎騎手(笠松)、岩本怜騎手(岩手所属で現在は笠松で期間限定騎乗中)は手袋なしで騎乗。その一方で、大型のネックウォーマーで顔を覆っている騎手もいた。

そのコンディションでゲートが開いた第1戦は、最内枠の大木騎手の逃げで始まった。2番手には小沢大仁騎手(JRA)が続き、東川騎手、兼子千央騎手(金沢)が続く流れは見た目にもゆったり。しかし逃げた大木騎手は単勝10番人気で、「ペース的に粘れると思ったんですが」と振り返ったが、脚が上がってしまった。

4コーナー手前で小沢騎手が先頭に代わって押し切りを狙ったところに、角田大河騎手(JRA)が馬群を割って進出。そしてその後ろから飛田愛斗騎手(佐賀)がインコースに空いたスペースを突いて伸びてきた。その勢いは強烈で、残り50メートルあたりで先頭に。しかしそこから角田騎手が再び加速して、ゴール地点では首の上げ下げの勝負に持ち込んで、アタマ差で勝利を挙げた。

1馬身差3着には小沢騎手が粘り込み、さらに1馬身差で井上瑛太騎手(高知)が4着。クビ差で5着の中島良美騎手(浦和)は最低人気での健闘だったが「もったいなかったです。前がなかなか開かなくて。もう少しスムーズだったら」と残念そうに振り返った。

ひとつレースをはさんでの第2戦も雪まじりの空模様。単勝オッズは12頭のうち5頭が10倍未満で10倍台は1頭だけと、3連単の100倍未満が2組だけだった第1戦に比べると、やや力差があるメンバー構成といえた。

そのなかで1番人気の支持を受けたのは、第1戦を制した角田騎手が手綱を取るディープエコロジー。前走で逃げ切り勝ちをおさめていたその存在に、篠谷葵騎手(船橋)は専門紙を見ながら「2番手で行けるかな。砂をかぶらなければと聞いていますので」と作戦を練っていた。

しかしゲートが開くと篠谷騎手が勢いよく飛び出して先頭に。するとディープエコロジーは角田騎手が抑えきれないといった感じの手応えでスピードに乗り、1コーナー手前で先頭に代わった。

篠谷騎手はインコースの2番手で、3番手には外枠から流れに乗った兼子騎手。その後ろには中島騎手、飛田騎手と続いた。

逃げた角田騎手のリードは向正面で2馬身ほど。その後もスピードは衰えず、最後は2着に3馬身差をつけて角田騎手は連勝。全日本新人王争覇戦が2戦でのポイント争いになってから初めてとなる完全優勝を達成した。

そして2着に入ったのは、最後の直線で一気に伸びてきた飛田騎手。2戦とも1着と2着が同じ騎手という珍しい結果になった。

1馬身差3着には兼子騎手が粘り、中島騎手がアタマ差で4着、さらにアタマ差で井上騎手が5着に入った。なお篠谷騎手は4コーナー手前で騎乗馬が転倒して落馬。意識は明瞭でもケガの程度が重いとの判断で救急搬送されることになった。さらに転倒した馬に触れたことで、池谷騎手の代わりに騎乗した岡騎手も落馬してしまった。

そういったさまざまな出来事があった2023年の全日本新人王争覇戦。総合優勝と2位は明らかだったが、以下、35ポイントで兼子騎手、中島騎手、井上騎手が並び、最上位の着順を得ていた兼子騎手が3位となった。

この結果に飛田騎手は「初めての高知競馬で、新鮮な気持ちで楽しく乗れました」と話した一方で「2位でも悔しいですね。また一緒に戦う機会があれば、次は勝ちたいです」と悔しい気持ちを吐露。逆に同ポイントながら表彰台を逃した井上騎手は「(同期の)飛田騎手の背中を追いかけていきます(苦笑)。でも第2戦が3着争いでしたからね。表彰台に上がりたかった……」と話して次のレースのパドックに向かっていった。

取材・文浅野靖典

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 角田大河騎手(JRA)

第1戦は前にいた小沢騎手の手ごたえを意識しながら乗りましたが、それでもゴールの瞬間は相手の脚いろがよかったこともあって、勝ったかどうかわかりませんでした。第2戦は折り合いだけ気を付けて、馬の力を出すことができました。第1レースの前に高知の馬場を歩いたことも役に立ったと思います。

総合2位 飛田愛斗騎手(佐賀)

第1戦は気合をつけるほうがいいタイプの馬かなと思って仕掛けましたが、あと少しでしたね。優勝したかったので第2戦はうまく乗ろうと思いましたが、1コーナーで(角田騎手の馬に)篠谷騎手が付けていたので控える形を取ったのですが、結果的には逃げた馬を楽に行かせすぎた形になってしまいました。

総合3位 兼子千央騎手(金沢)

3位になりましたが、正直なところ悔しい気持ちがありますね。この気持ちを忘れずに、3月からの金沢競馬で頑張っていきたいと思います。それでも今日は(ケガでリハビリ中の)妹尾(将充)騎手を含めた同期のみんなと会って話ができたのでよかったです。