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第53回高知県知事賞

復活した王者を競り落とす
  二冠馬がグランプリも制覇

2022年、高知競馬に彗星のごとく現れたララメダイユドール。転入後の成績は6戦6勝で、そのうち3勝は重賞レース。多くの馬券師は、高知県知事賞で7連勝を飾る可能性は濃厚と予想した。だから単勝1.4倍の1番人気。ただ、彼が2000メートルを超えるレースを走るのは初めてのことだった。

2番人気は安定感のあるグッドヒューマーで、3番人気は2021年の覇者グリードパルフェ。19、20年と高知県知事賞を連覇したスペルマロンは4番人気。高知優駿と黒潮菊花賞を制したガルボマンボは、5番人気に落ち着いた。

ガルボマンボは出走メンバーで唯一の3歳馬。コンビを組む林謙佑騎手は、高知の古馬の層の厚さを痛感していた。だから古馬に胸を借りるような気持ちで、ガルボマンボの力を出し切ろうと思っていた。第一関門は“スタート”。ガルボマンボはスタートにムラがあり、ポンとゲートを出ることもあれば、タイミングが合わず出遅れることもある。

(スタートを決めて、いい位置につけたい)

第53回高知県知事賞のゲートが開いた。ガルボマンボは抜群のスタートを切って、第一関門突破。

(ララメダイユドールとグッドヒューマーが前に行くから、その後ろぐらいを付いて行こう)

逃げを打ったララメダイユドールをジョウショーモードが追いかけて、2400メートル戦としてはペースが上がる。ガルボマンボ&林騎手は4、5番手を追走。掛かることもなく、気を抜きすぎることもなく、ちょうどいい手応え。2周目の1~2コーナー、林騎手がかすかな扶助でガルボマンボの反応をたしかめると、ガルボマンボはスッと応答した。

『僕はいつでも行けるよ』

林騎手は仕掛けのタイミングを考えつつ、先頭のララメダイユドールを見ながらレースを進めた。ところが3コーナー手前でララメダイユドールが失速。さらにスペルマロンが一気にマクッて先頭に立った。林騎手はすぐにゴーサインを出してスペルマロンを追いかける。2頭びっちり馬体を併せて4コーナーへ。直線、抜け出しを図るガルボマンボに、スペルマロンが食らいつく。鬼気迫る攻防。林騎手は必死に追った。

(早くゴールに着いてくれ!)

大歓声が弾ける。二冠馬ガルボマンボが先頭でゴールに飛び込んだ。アタマ差の2着にスペルマロン、5馬身差の3着にグリードパルフェが入った。

3歳馬による高知県知事賞制覇は、05年のシルバークロス、17年のフリビオンに続いて、史上3頭目の快挙。夢広がる勝利だ。林騎手は言う。

「ガルボマンボはどんな距離でもしっかりレースをしてくれますし、出走馬のなかで、長距離適性がずば抜けていたように思います。大井のジャパンダートダービーで、速い流れに付いて行ってレースをしたことも、成長の糧になったのかもしれないですね」

一方、スペルマロンとコンビを組む倉兼育康騎手はこう振り返る。

「馬体を併せる形になれば、本来のスペルマロンは絶対に負けないんですけどね。まだ心が弱っているぶん、交わすことができなかった。道中の手応えも物足りなかったし、いい頃と比べたら、まだ6割か7割ぐらいの感覚です。そんな状況でよく頑張ってくれました。それだけに、勝ちたかったですね……」

見る者の心を震わせる好勝負を演じ、復活の狼煙を上げた王者スペルマロンにも、大きな拍手を送りたい。

10着に敗れたララメダイユドールは、距離的な問題か、それとも見えない疲れがあったのか。仕切り直しの次走を待ちたい。

取材・文井上オークス

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

林謙佑騎手

ガルボマンボが直線でしっかり動いてくれることはわかっているんですけど、スペルマロンの強さも知っているので、ゴールまで必死に追っていました。ガルボマンボに高知優駿と黒潮菊花賞、そして高知県知事賞を勝たせてもらって、嬉しい1年でした。遠征にも乗せていただいて、感謝の気持ちで一杯です。

細川忠義調教師

ガルボマンボには2400メートルが合うと確信していたので、長距離戦に向けた調教を詰んでいました。ただ、最初は補欠の一番手だったんですよ。繰り上がりで出走が叶って、本当によかった。スタートしていい位置につけられた時に「勝てる」と思いました。今後はだるま夕日賞を視野に調整を進めていきます。