web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第43回浦和記念JpnII

向正面から仕掛けて差し切る
  遅咲きの4歳馬が重賞初制覇

小回りの浦和で湿った馬場となれば、もちろん先行有利の意識が強まる。それはレースを見る側も、レースに乗る側も同じ。騎手としては最良の結果を手にするべく、ペースや騎乗馬の脚質などを考慮しながら、普段以上に試行錯誤を繰り返す。

そんななか、クリノドラゴン騎乗の武豊騎手は「この馬の競馬に徹する」という答えを導き出した。JBCクラシックJpnIで4着に食い込んだ実力馬だが、追い込み一手の脚質を考えた際に「浦和でどうか」という懸念は常に付きまとう。しかし、終わってみれば“さすがベテラン”。その判断が見事に的を射た。

JRAのアイオライトが先手を奪い、地元・浦和のランリョウオー、船橋のエルデュクラージュがその後ろに続く。前半の3ハロンは35秒2のハイペースで進み、縦長の隊列。クリノドラゴンはスタンド前を9番手で通過した。

向正面で外めに持ち出したクリノドラゴンは、先行集団を目がけて徐々に進出。早めに突き放しにかかっていたアイオライトを4コーナーで射程に収めると、直線の半ばでこれを交わし、重賞初制覇を飾った。

追走でなし崩しに脚を使わされた各馬は、後半3ハロンで39秒前後をマークするのがやっとだったが、クリノドラゴンは37秒9と、次元の違う末脚を披露した。初勝利に9戦を要し、その後も一進一退を繰り返してオープン入りを果たした遅咲き。たくましさと器用さを兼備して、いよいよ本格化を迎えた印象だ。今後は放牧を経て、東海ステークスGII(JRA中京)などを目指す。

2馬身半差の2着には中団から早めに動いたラーゴムが入線。白山大賞典JpnIIIに続く連対を果たし、ダートグレード路線にめどを立てた。鮫島克駿騎手は「馬場状態を考えて、早めの競馬を心掛けました。前走に続いての2着ですから、うまくかみ合えばタイトルのチャンスはあると思います」と手ごたえをつかんだ様子。今回は勝ち馬にうまく乗られ、展開も向かなかったが、鮫島騎手が話すように、流れ次第でチャンスが巡ってくるに違いない。

地方勢ではタービランス(浦和)が4着。今年の川崎記念JpnIで右前の繋靭帯を痛めて休養を余儀なくされたが、JRA勢とも互角の立ち回りを見せ、復調気配を示した。「枠順が良かったし、この馬の競馬はできました。衰えは感じられないですね」と笹川翼騎手。昨年のこのレースでも2着に食い込んでおり、本来ならダートグレードタイトルも十分に狙える器。10歳を迎える来年も現役を続行する予定で、まだまだ地方のトップホースとして活躍してくれそうだ。

一方で心配なのはランリョウオー。2周目の向正面に入ったところで失速し、10着に敗れた。本橋孝太騎手も「2コーナーで手応えが全くなくなってしまいました」と呆然としたような表情。2走前の東京記念で完勝したように、ダートグレードレベルの力はあるはず。立ち直りを期待したい。

取材・文 大貫師男

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

武豊騎手

4歳でもキャリアは豊富ですし、安心して乗ることができました。小回りコースはあまり気にせず、この馬のスタイルで乗ってみようと思っていましたが、ここにきてさらに力をつけてきた感じです。未勝利の頃からコンビを組ませてもらって、重賞を勝つまでになったので、特別にうれしく思っています。

大橋勇樹調教師

JBCクラシック後も順調に来ていました。浦和コースは小回りなので、それさえ対応できればと思っていましたが、早めに上がっていったので安心して見ていることができました。いつも最後はきっちりと脚を使ってくれます。賞金面で苦労してきましたが、これでジーワンにも胸を張っていけますね。