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ヤングジョッキーズシリーズ TR 園田

JRAのルーキー川端騎手が初勝利
  2戦とも2着の大山騎手が首位に

西日本地区のトライアルラウンドは折り返し地点を通過。ファイナルラウンドへ向け、ポイント争いにより注目が集まるようになってきた。

園田競馬場では前日に通算2000勝以上の騎手が集う『ゴールデンジョッキーカップ(GJC)』が行われており、名手のすごさを間近で感じようと地元の若手騎手が総出で鞍拭きなどの手伝いに来て大賑わいだった。そこで総合2位だった下原理騎手は「昨日とはまた雰囲気が違いますね。検量した鞍を装鞍所まで自分たちで運ぶのも若手ならではかも。GJCではありがたいことに、誰かが持って行ってくれますから」と、準備の段階からの違いを説明。「でも、若手にとってはこういうことをするのも大切なんですよ」という言葉は、下積み時代の長かった下原騎手だけに重みもあった。

なお、濱尚美騎手(高知)と東川慎騎手(笠松)はそれぞれ1鞍のみの騎乗だった。

第1戦は内から山田義貴騎手(佐賀)が好ダッシュから先手を取り、その外から濱騎手と木本直騎手(兵庫)が追いかけたことで馬群が前と後ろでやや2つに分かれる形。それもあって1~2コーナーではやや促されながら後方を進んだハシノオージャと泉谷楓真騎手(JRA)だったが、3~4コーナーで馬の間を縫って進出すると、先に抜け出した大山龍太郎騎手(兵庫)をクビ差交わして勝った。

泉谷騎手は「ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)では勝負所でスペースが空くと思っていました」と、冷静な判断が引き寄せた好結果。加えて、ハシノオージャはYJSにこれまで4回出走し、1勝、2着と3着が1回ずつと馬も“YJSベテラン”だった。

2着大山騎手は「いけるかと思いました」というところを外から差され、表情に残念さが滲み出ていた。3着に粘った濱騎手は9番人気を考えると健闘と言えそうだが、「2番手に収まって手綱を緩めたところ、外から木本騎手が来た分、こちらも行く形になって最後のひと脚に影響したと思います」と本人にとって悔いの残る内容。これでトライアルラウンド(TR)騎乗はラストとなる見込みながら、今年のYJSで初めて掲示板に載れたことに満足しつつも、「先行馬でこういうレースをどのTRでもやりたかったです」と、ひと足先に高知へと帰っていった。

第2戦は昇級馬が2頭で、成績的に突出した馬もおらず混戦模様。先手を取ったのは単騎逃げで好成績を収める馬に騎乗の木本騎手で、2番手には騎手人気もあってか僅差で単勝1番人気に押し出された今村聖奈騎手(JRA)だった。それを見る形でインで脚を溜めたのは川端海翼騎手(JRA)とジュンダッシュ。逃げた馬が4コーナーで内をやや空けて回ったタイミングを見逃さず、最内を突いて伸びると、大外から差してきた大山騎手に1馬身半差をつけて勝利。

川端騎手にとってはこれが嬉しい初勝利となった。2日前のTR大井では同じく今年3月にJRAでデビューするも未だ勝利を挙げられていなかった水沼元輝騎手が念願の初勝利を手にしていて、その様子を見ながら「僕も早く勝たなきゃ」との思いを抱いていたよう。笑顔で戻ってくると、JRA・地方双方の記者たちからも「おめでとう!」と祝福された。さらに、同期の角田大河騎手が「初勝利のカードを持ちたい」と志願し、今村騎手も駆け寄ってくると、同馬を管理する玉垣光章調教師が「一緒に口取りに写ってあげて」との計らいで、同期も交えた記念撮影となった。

対照的に「勝てへんかった……。めっちゃ悔しい」と、肩を落としたのは2戦続けて2着だった大山騎手。3着は松本大輝騎手(JRA)で、4着に逃げ粘った木本騎手だった。

佐賀競馬場で期間限定騎乗中で、久しぶりに地元に帰ってきた青海大樹騎手(兵庫)は「馬を動かせませんでした。成長した姿を見せたかったですが、佐賀で修行して出直してきます」と再び九州へ。同じく佐賀から来た山田騎手は初遠征だったが、「吉村智洋騎手にここでの乗り方などをレクチャーしていただきました」と、交流があったよう。今回、上位に入れなかった騎手でも佐々木世麗騎手(兵庫)は「次の笠松で頑張ります」と前を向いた。

なお、長尾翼玖騎手(兵庫)、大山騎手、山田騎手、濱騎手、泉谷騎手、今村騎手、松本騎手、川端騎手はこれでTRラスト騎乗となる見込み。

地方西日本の暫定1位は2着2回で40ポイントを獲得した大山騎手で72ポイント、JRA西日本は第1戦を勝った泉谷騎手が大幅加点に成功し、66ポイントで暫定1位に立ち、第2戦で初勝利を挙げた川端騎手も8ポイント差で暫定2位につける。

この週は2人が初勝利を挙げ、歓喜に包まれたYJS。TR終盤に向けてここからどんなドラマが生まれるだろうか。

取材・文大恵陽子

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 泉谷楓真騎手(JRA)

ずっと手応えはあって、あとは進路だと思っていました。YJSなので勝負所でスペースが空くだろうと思い、3~4コーナーで上手く進路取りができた時点で「勝てる」と思いました。今年はJRAで結果を出すことができていないので、YJSではファイナルに行こうと思っていました。力のある馬で結果を出せてよかったです。

第2戦1着 川端海翼騎手(JRA)

すごくホッとしています。前にいた今村騎手の馬が強いのは分かっていたので、そこが空くか内が空くかを待っていました。4コーナーでは気持ちはすごく焦っていて不安に駆られましたが、手応えがよく馬が頑張ってくれました。JRA時代にはレースでも調教でも乗ったことのある馬だったので嬉しいです。