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第60回のじぎく賞

直線抜け出し後続を振り切る
  精神面の成長でライバルを完封

朝から断続的に雨が降り、稍重からスタートした園田競馬場は、グランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズン第6戦・のじぎく賞の1つ前の第10レースから重へと悪化した。

このレースの焦点の一つは580キロ近い雄大な馬体を誇るケウ(川崎)が内の3番枠からどんなレースをするかということだっただろう。スタートはゆっくりなタイプで、前走のル・プランタン賞(佐賀)では後方3番手から1周目スタンド前で4番手までポジションを上げて勝利。

トビが大きな馬が内枠からどう捌くか、また周囲の馬がどう動くか、頭を悩ませたファンも多かったのだろうか、単勝オッズはそのケウを含む3頭が3倍台。ル・プランタン賞でケウの2着だったニフティスマイル(兵庫)が1番人気で単勝3.4倍、2番人気にケウ、3番人気にスターオブケリー(浦和)と並んだ。

向正面からのスタートは、やはりケウのダッシュがつかず最後方から。好ダッシュが持ち味のスターオブケリーは躓き加減のスタートで逃げることができず、外の3番手まで。1周目直線に入ったところでケウがポジションを上げてきたが6番手外までで、向正面半ばでは伊藤裕人騎手の手が大きく動き始め、徐々に先頭から離されていった。

そこを上手く馬群を捌いて3コーナーで逃げ馬の直後まで上昇したのはニフティスマイル。直線に向くなり外に持ち出して伸びたが、2番手外から先に抜け出したニネンビーグミ(兵庫)の勢いが止まらず3/4馬身差で勝利を収めた。3着に後方から差してきたラッキーライズ(兵庫)で、1~3着は今年1月の兵庫クイーンセレクションと同じ結果となった。

同レースでのハナ差2着に続き、またしてもニネンビーグミの後塵を拝したニフティスマイル陣営は悔しい表情。「予想していた以上にペースが上がりませんでした。このペースでは外を回すと間に合わないと思い、腹を括って馬群を割る選択をしたところ、うまく道が開いて4コーナー手前では交わせるなと思ったのですが……」と、吉村智洋騎手。

中盤で見せ場をつくったものの8着だったケウの伊藤騎手は「馬がやる気を出した時に行こうという陣営との作戦通りでしたが、2コーナーを回ってからもう一度ギアが入りませんでした」とのこと。スターオブケリーは11着に沈んだ。

勝ったニネンビーグミはこの4カ月で大きく成長。1月の兵庫クイーンセレクション以来の鞍上となった田中騎手は「馬が全然変わっていて、すごく落ち着きが出て、力強さもありました。前回は初めての姫路競馬場で物見をしてハミを全く取らなかったのですが、今回は自分からハミを取っていきましたし、返し馬の時点から良かったです」と目を輝かせた。

その成長を下支えしたのは、馬体増と攻めの調教。前走・菊水賞6着時はカリカリしていたことや、馬体を7キロ減らしていたため思い切った追い切りができなかったことから、この中間は体を増やすこととその中でもしっかり追い切ることに重点を置いた。前走からプラス1キロではあったが、中身がグンと充実していたのだった。

GDJの順位は大きな変動なく、ケウが1ポイント加算して単独2位となったものの、1位のスピーディキックとは1ポイント差。さらに1ポイント差でニフティスマイルら3頭がひしめき、残り2戦に勝負は持ち込まれる。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

田中学騎手

返し馬から良くて、今回は自分からハミを取っていってくれました。兵庫クイーンセレクションを勝った時も最後にもうひと我慢してくれた馬。今回は手前を替えるのにモタつきましたが、410キロほどの小さい体でよく最後まで辛抱してくれました。今日は厩舎関係者がビッチリいい状態に仕上げてくれました。

松平幸秀調教師

とても嬉しいです。スタッフが付きっきりでがんばってくれたのと、騎手がこの馬のいいところを全て出してくれました。長めからしっかりいい追い切りができたことが、最後の踏ん張りにつながったかなと思います。道悪でもいい脚を使ってくれ、賢い馬です。このあとは兵庫ダービーを目指します。