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レディスジョッキーズシリーズ名古屋

濱騎手がリードを守って優勝
  神尾騎手は追い上げ届かず2位

10年ぶりに女性だけのレースとして復活したレディスジョッキーズシリーズ(LJS)。昨年11月23日に盛岡競馬場で開幕し、同27日高知を経て最終戦・名古屋の地へとやってきた。しかし、体調不良で休養中の佐々木世麗騎手(兵庫)から欠場の申し出があり、関本玲花騎手(岩手)は調教中に足の親指を骨折して欠場。鎖骨骨折で療養中だった木之前葵騎手(愛知)が出場したが、それでも5人とやや寂しい最終戦となった。

しかし、これを味方につけたのは95ポイントで暫定1位の濱尚美騎手(高知)。5頭立てのため、最下位でも5着の10ポイントが付与されるとあって、29ポイント差で2位の神尾香澄騎手(川崎)にこの日1着がなければ、自身の着順にかかわらず総合優勝できる見込みだ。それは本人もしっかり頭に入っていて「5頭立ては追い風かなと思いました。でもそれに甘えず、今日は全力で乗りたいです」と意気込んだ。

ポイント計算をしてきたのは追いかける神尾騎手も同様で、「勝てばまだ優勝の可能性はあるな、と思っています」と、唯一逆転優勝が可能な立ち位置であることを把握。とはいえ、最低でも1着と2着というハイレベルな結果が求められるため、さすがに厳しい戦いかと思われたが、第1戦でそんな心配を見事に晴らした。

騎乗したのは近5走いずれも逃げていたニシノステラ。外からダッシュを利かせると、4コーナーで1番人気の深澤杏花騎手(笠松)が迫るも脚色は衰えず、逃げ切り勝ちを収めた。2馬身半差の2着には向正面で一旦は最後方となった宮下瞳騎手(愛知)が鋭く追い込み、3着に深澤騎手だった。

深澤騎手は「主張しすぎずに脚を溜めてロスなく運ぼうと思っていたのですが、逃げ馬がマイペースで楽に運んでいたので追っても追いつけませんでした」と、神尾騎手を称えた。

この勝利で、1位濱騎手と2位神尾騎手の差は11ポイントまで縮まり、第2戦で神尾騎手が連勝して濱騎手が3着以下であれば逆転優勝の可能性が出てきた。神尾騎手は地元・川崎から来た報道陣からその状況を聞き、「次は『瞳さんが行くだろうから、その後ろでいいんじゃないか』と調教師に言われました」とレースプランを練った。その情報をマスコミへの逆取材でこっそり仕入れたのは濱騎手。「それならば私が逃げて、瞳さんは外に切り替えると思うので、内に封じたいです。まずは出遅れないようにしないと」と、勢いよく返し馬に出ていった。

ところが、不安は現実となった。大外枠の濱騎手がスタートの瞬間、大きく外にヨレて立ち遅れたのだ。代わって逃げたのは木之前騎手。濱騎手はなんとかダッシュを利かせて2番手を取り、神尾騎手は最後方から運んだ。3~4コーナーでは濱騎手が大きく失速し、神尾騎手も必死に追うが前との差は縮まらない。直線入口では逃げる木之前騎手に宮下騎手が迫ってきて、「名古屋の2人だ!」とファンから声が上がったが、木之前騎手とマテラシオンが粘って勝利。

戦前、「自信がないです」と話していた木之前騎手は「馬が自分でビュンッと行ってくれました。最後にアピールできてよかったです」と喜んだ。

1馬身半差の2着に宮下騎手、3着は深澤騎手、そして優勝争いをしていた神尾騎手が4着、濱騎手が5着だった。

この結果、濱騎手が首位を守り抜いて総合優勝。しかし、第1戦は1コーナーで外の馬に寄られて内に入ったところ予想以上に馬場が重たくポジションを一つ下げざるを得ない展開に、第2戦は出遅れて「馬の良さを私が失くしてしまいました」と反省しきりの1日となり、「うーん……。なんだか心から喜べないです」と、最終レース終了後の記者会見でも浮かない表情を見せた。しかしながら、「女性騎手だけのレースはひと味違うやる気が出て、すごく楽しかったです」と、初めての女性騎手だけのレースを楽しんだ様子。

それは他の騎手も同じで、「普段は他地区の女性騎手と喋る機会がないので、女性同士でしかできない会話ができてすごく楽しかったです」と深澤騎手が充実した表情を見せると、先輩の宮下騎手や木之前騎手は「若い子たちはすごく明るくて元気ですね」「後輩たちを見て『私も昔はこんな感じだったのかな?』と思いました」と、フレッシュな力を感じた。

来年度こそは全員揃っての開催が期待されるLJS。まずは10年ぶりの“オールレディース”で、新たな一歩を踏み出した。

取材・文 大恵陽子

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 濱尚美騎手(高知)

いい感じに盛岡、高知と戦えましたが、名古屋での2戦が納得いくレースができなくて、優勝できたことはすごく嬉しいですけど、とても悔しい気持ちが残りました。第1戦は1コーナーでもっと自分の位置を主張すべきだったと反省です。今度は最後に笑って優勝できるようにがんばりたいです。

総合2位/第1戦1着 神尾香澄騎手(川崎)

優勝したかったですが、いい馬に乗せていただき総合2位になれたことはすごく嬉しいです。第1戦はできるだけペースを落として1コーナーに入りました。後ろの足音も聞こえず、来ていないのは確認していました。馬を仕上げてくれた厩務員さんや丸山騎手にお礼を伝えたいです。

総合3位 宮下瞳騎手(愛知)

第1戦はもう少し気合いを入れてついて行ければよかったです。第2戦はできるだけ早めに砂を被らないところに出しました。息子たちも女性だけのレースがあることは分かっていて、「3位になったよ!賞金もらえたよ」と伝えようと思います。きっと「ゲームを買ってくれる?」って言うでしょうね(笑)。