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第72回全日本2歳優駿JpnI

直線突き放し無敗で2歳王者に
  大井プライルードが3着に善戦

素質か、経験か――。2歳ダートの頂点を決める一戦は、毎年この2点に頭を悩ませる。器用さが求められる川崎の1600メートル戦で、左回りの経験が少ない馬も多数いる。今回も素質に優るJRA勢か、コース経験のある地方勢かという構図になったが、結果的にはJRA勢、なかでも1番人気のドライスタウトが高い素質を見せつけ、無傷の3連勝で2歳王者の称号を手にした。

好スタートから先手を奪ったのはJRAのカイカノキセキ。ドライスタウトが2番手につけ、兵庫のバウチェイサー、浦和のノブレスノアが直後を追走。3番人気のコンバスチョン(JRA)もこの一角でレースを進めた。前半の3ハロンは36秒6、その後に13秒台のラップも入ったように、ややスローペース。こうなると末脚を生かしたい2番人気のアイスジャイアント(JRA)や、北海道のナッジ、スタートで後手に回ったシルトプレ(北海道)は苦しい。脚抜きのいい軽い馬場ということもあり、先行勢に有利な流れで進んだ。

早めにスパートをかけたカイカノキセキだったが、ドライスタウトも余裕の手応えでついていき、2頭が抜け出したかたちで4コーナーへ。ドライスタウトが外から先頭に躍り出ると、直線でもしっかりと脚を伸ばし、位置取りを上げてきていたコンバスチョンの追撃を振り切った。

勝ちタイムの1分39秒2(稍重)は、このレースが1600メートルで行われるようになった第10回(1959年)以降では最速で、初めて1分39秒台をマークする驚異的なもの。戸崎圭太騎手は「跳びの大きなタイプだし、距離も心配していました」と舞台設定に不安を感じていたとのことだったが、「心配することはなかったですね。とても強い競馬をしてくれました」と笑顔を見せた。これでデビューから無傷の3連勝とし、「ここまで強い勝ち方で3連勝できていますから、今後がとても楽しみです」と期待感を口にした。

初のGI/JpnI制覇となった牧浦充徳調教師は「このレースは2017年にドンフォルティス(2着)で悔しい思いをしたから、今回この馬で勝てて良かったです」と胸をなでおろした様子。今後は「中央、地方を問わず、狙えるところを狙っていきたいと思います」と、全国を舞台にレースを選んでいく意向を示した。

コンバスチョンは兵庫ジュニアグランプリJpnIIに続く2着。先行する2頭を射程に入れて直線に向いたが、最後はドライスタウトに突き放された。松山弘平騎手は「勝ち馬を見ながら、いいポジションでレースを運べました。もう少しでしたね」と悔しさをにじませたが、小回りを苦にしない器用さは今後も武器となりそう。引き続き地方競馬での活躍が見込めそうだ。

地方勢では大井のプライルードが3着に健闘。陣営は左回りと距離延長に対する不安を口にしていたが、道中は先団の後ろで折り合い、勝負どころでもうまく馬群をさばいてきた。「砂をかぶせながら追走してほしいという指示でした。初距離だったのでゆっくり行ったけど、ものすごくいいスピードがあるので、これからの可能性を感じます」と張田昂騎手。タイトルこそないが、栄冠賞、イノセントカップでともに2着、兵庫ジュニアグランプリJpnIIでも3着と、高い次元の走りを見せている。今後の飛躍を感じさせる1頭だ。

昨年は経験に優る南関東勢がワンツーフィニッシュを決めたが、今年はJRA勢がリベンジを果たす結果となった。しかし、各馬の競走キャリアはまだ始まったばかり。半年後や1年後に、勢力図や各馬の戦歴がどう変わるのか楽しみにしたい。

なお、今年新設された2歳チャンピオンシリーズは、このレースで全日程を終了。サンライズカップを制し、JBC2歳優駿JpnIIIでも2着に食い込んだ北海道のナッジが、このレース8着で2ポイントを加え24ポイントで総合優勝。兼六園ジュニアカップを制したエンリルが2位、JBC2歳優駿JpnIII・3着のリコーヴィクターが3位で、褒賞金が与えられる上位3位まで北海道勢が独占となった。

取材・文 大貫師男

写真 築田純(いちかんぽ)

Comment

戸崎圭太騎手

能力があると思っていましたし、どこからでも競馬ができる強みがあるので、周りの出方を見て、と思っていました。2番手でスムーズな競馬ができましたし、手応えも十分で、追ってからもすぐに反応してくれました。ここまでの3戦、非常に強い勝ち方ができているので、今後がすごく楽しみです。

牧浦充徳調教師

当初は補欠の1番手でしたが、運よく出られましたし、それに応えて勝ち切ってくれました。距離を延ばしても力強い勝ち方ができていましたし、この距離もこなしてくれると信じていました。まだ幼く、伸びしろがあるので、これからもっと強くなってくれるのではないかと期待しています。