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第14回兵庫若駒賞

早め先頭に立って押し切る
  騎手・調教師とも重賞初制覇

兵庫若駒賞は“未来優駿”シリーズのタイトル通り出世レースである。過去の勝ち馬からオオエライジン、マイタイザンなどは3歳や古馬になってからも活躍し、兵庫県競馬を代表する存在へと成長した。また、勝ち馬だけでなく、昨年2着のスマイルサルファーは3歳となった今年、兵庫ダービーと西日本ダービーを制して、飛躍を遂げ、兵庫県競馬の未来を占う意味でも見逃せない一戦と言える。

そんなスターへの登竜門レースに今年も12頭が駒を進めてきた。単勝オッズは4頭が1桁台の人気を集めたが、中でもガリバーストームが2.3倍で頭ひとつ抜けていた。これまで2戦2勝だが、ともに1400メートル戦のタイムが2歳馬としては破格の1分31秒台だった。しかも、デビュー戦の1分31秒4は、同日同距離の古馬A2で2着に相当するもの。デビュー戦の2歳馬が簡単に出せるものではなく、底知れない能力をうかがわせた。デビュー戦から2カ月半ぶりとなった9月30日の2走目をたたき、中1週での参戦。デビュー21年目となる鞍上の廣瀬航騎手にとっても、重賞初制覇の大きなチャンスだった。

続く2番人気は同じアジアエクスプレス産駒のベラジオボッキーニが3.1倍。3番人気には兵庫リーディングの吉村智洋騎手が騎乗するこちらも2戦2勝のウーニャで5.1倍、4番人気は園田プリンセスカップで地元最先着の3着だったアンサンが7.7倍で続いた。

注目のガリバーストームは、他馬の枠入りの遅れで待たされ、隣の馬が落ち着かない素振りを見せるなど不安なシーンもあったが、ゲートが開くと、好位2番手の外にぴったりとつけた。内から逃げたのは4番人気のアンサン。「経験の浅い2歳馬。砂をかぶるより、行った方がいいと思ったので。マークはされますが、あとは力比べですから」と松木大地騎手。ベラジオボッキーニは3番手、ウーニャは中団を追走した。

3コーナーでアンサンをとらえたガリバーストームが4コーナーで先頭に立ち、押し切りを図る。その直後で脚をためていたベラジオボッキーニが外から上がってきた5番人気のピロコギガマックスに外からかぶせられ、内に押し込められる。先頭のガリバーストームをピロコギガマックスが一完歩ずつ追い詰めるが、クビ差まで迫ったところがゴールだった。ピロコギガマックスの杉浦健太騎手は「力はつけているし、成長も感じましたが、勝ち馬がしぶとかった」と振り返ると、3着ベラジオボッキーニの鴨宮祥行騎手は「4コーナーでかぶせられたのが痛かった」と唇をかんだ。

21年目での重賞初制覇となった廣瀬騎手は検量室前に引き上げてきた時には、既に目をうるませ、こみ上げる思いを押さえきれなかった。下馬すると、尾林幸二調教師と抱き合って、喜びをわかちあった。尾林調教師も騎手時代にはアラブのヒカサクィーンなどで一時代を築いたが、調教師としては、開業16年目での重賞初制覇。騎手、調教師ともに積年の思いが詰まった勝利となった。

3戦3勝となったガリバーストームの今後は、順調なら11月25日の兵庫ジュニアグランプリJpnII(1400メートル)から12月31日の園田ジュニアカップ(1700メートル)への出走が予定されている。

取材・文 松浦渉

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

廣瀬航騎手

道中は行く馬がいれば行かそうと思った。馬の力を信じて仕掛けどころを間違わないように乗った。バタバタはしたけど、馬がしのいでくれた。乗りやすいし、テンも速いので、今後も楽しみ。この世代を引っ張っていってほしい。重賞初制覇はホッとしたし、うれしいですね。

尾林幸二調教師

重賞を勝てないまま終わるかなと思った時もあったが、いい馬に巡り会えた。中1週のローテーションはきついかなと思ったが、夏から決めていたし、馬が頑張ってくれた。まだ幼さも残っているし、成長を促したい。スピードがあって折り合いもつくので、また大きいところを狙いたい。