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第59回のじぎく賞

折り合い重視で直線差し切る
  調教師も念願の重賞初制覇

グランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズンは首位に立つサンシェリダンがのじぎく賞に登録があったものの回避し、暫定3位のニジイロ(愛知)が参戦。終盤にさしかかり、ポイント争いが注目を集める中、GDJ初参戦となった地元のクレモナが勝利を飾った。

前述のニジイロを含む愛知から2頭の遠征馬を迎えて行われた一戦は、1700メートルという距離が一つの鍵だった。

逃げたパールプレミアは1400メートルの重賞・若草賞(名古屋)勝ち馬。今回と同距離で行われた前走の菊水賞では控える競馬を試みたものの、溢れるスピードを抑えきれず、早めに先頭に並びかけ6着に敗れていた。今回は戦前から「場合によっては逃げても」と陣営は話しており、スタートから数完歩で半馬身前に出ると、そのままハナに立った。その直後を取りたかったのはクレモナ。しかし、「そこまで押していく勇気がなくて、1列後ろになりました」と田中学騎手。2走前も道中で口を割るシーンがあり、折り合いを重視して進められた。

向正面半ばで各馬が仕掛けていくところ、パドック周回直後は1番人気に推されていたニジイロが進みそうで進んでいかない。同馬を抑えて最終的に1番人気に躍り出たエイシンウィンクも、4コーナーまで食らいついたものの距離の壁なのか、直線では先頭との差が開いてしまった。そこを、内を立ち回って直線外に持ち出して伸びてきたのがクレモナ。逃げ粘りを図るパールプレミアを差して、3馬身差で重賞初制覇を掴んだ。

長倉功調教師にとってもこれが初タイトル。5年前、朝から雨が降りしきる中で行われた菊水賞では、タケマルビクターが直線一旦は抜け出し、「勝ったと思いました」というところ、シュエットにハナだけ差されて悔し涙を飲んだ。あの時、タケマルビクターに騎乗していたのが田中騎手。彼の胸には悔しさや申し訳なさがずっと刻まれていたのだろう、「(重賞制覇を)プレゼントできて嬉しいです」と、いつも以上に喜びを表現した。

長倉調教師も「重賞には縁がないと思っていました」と諦めかけた中での嬉しいタイトル。「馬主さんにいい馬を預けてもらったおかげです」と感謝を述べた。

北海道でデビューし、昨年11月に兵庫に移籍してきたクレモナの父はクラグオー。1歳上の同産駒2頭も勝利を挙げており、いずれもクレモナと同オーナーの生産・所有馬だ。クラグオーの全姉・クラキンコは牝馬にして北海道三冠馬に輝き、クラグオー自身も2600メートルの重賞・ステイヤーズカップを制覇している。その血を受け継ぐクレモナの距離適性については「折り合いがつくようになればもう少しもつようになるかもしれませんが、現時点では1700メートルがギリギリじゃないでしょうか」と長倉調教師。とはいえ、田中騎手は「奥があります」と感じており、さらなる飛躍が期待される。

のじぎく賞を終えて、GDJの順位はサンシェリダンとケラススヴィアの上位2頭に変化はないものの、今回2着に粘ったパールプレミアが3位に浮上してきた。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

田中学騎手

追い切りの動きがすごく良く、枠も良かったので折り合い重視で乗りました。園田では1勝で、少し勝ちきれない面があったので直線は半信半疑でしたが、しっかり勝ってくれましたし、今日は最高に馬と会話できました。乗り心地がすごくいい馬で、心身ともに成長してくれば、まだまだやれると思います。

長倉功調教師

嬉しいのひと言です。間隔を十分に空けて、これまでのようなカリカリしたところもなく、体重も戻っていい状態で出走できました。ここ3走はスローペースで掛かって、苦しい競馬をした経験が生きたかなと思います。とにかく競馬が上手な馬。このあとはオーナーと相談してゆっくり考えたいと思います。