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第67回 桜花賞

馬名に込められた桜のタイトル
  余裕の手応えで直線突き放す

南関東のクラシック戦線が、今年も牝馬一冠目の桜花賞から始まった。浦和1600メートルで、フルゲートは11頭。グランダム・ジャパン3歳シーズンの第2戦として他地区枠もあるだけに、出走することも非常に難しい。前哨戦のユングフラウ賞を優勝したウワサノシブコが疾病(感冒)のため出走取消となり、10頭立てになった。

主役はもちろん、昨年のグランダム・ジャパン2歳シーズンで優勝したケラススヴィア。ユングフラウ賞では斤量差など不利な条件が重なり2着に敗れたが、この馬だからこそクリアして欲しかった、というのが陣営の共通の思いでもあった。仕切り直しの一戦で、この馬らしいスピードと強さを発揮し、まずは一冠目を獲得した。

ケラススヴィアは二の脚速く先頭に立つと、すかさずスマイルミュも続き、その後ろには内からグロリオーソ、外にはレディブラウンが追走し、結果的には上位3着までの馬たちがこの位置にいた。

「ゲートを切る直前にちょっとガタガタしてヤバイと思いましたが、出るタイミングは合ったのでスタートは良かったです。道中はマイペースに運べて脚もたまっていたので、いい内容の走りでした」と、ケラススヴィアの手綱を取った森泰斗騎手。

3~4コーナーの勝負どころでは、追いかける馬たちの鞍上の手が激しく動く中、ケラススヴィアは変わらず手応え十分なまま。4コーナーでステッキが入ると後続との差を広げ、2着のグロリオーソに3馬身差をつける快勝。さらに3馬身差の3着にはレディブラウン。勝ちタイムは1分42秒1(稍重)。

逃げたケラススヴィアにメンバー中最速の上り37秒6の脚を使われては、他の馬たちはなすすべもない。ケラススヴィアは前走2着に敗れた鬱憤を晴らすかのような完璧な走りを見せた。

「普通に走れば大丈夫と考えていましたが、自分自身も硬くなっていたのか、最後はゴールが早く来て欲しいと思いました。馬名の由来が桜花賞にまつわるものなので、ここは落とせないと思っていたので良かったです。すばらしい走りでした」(森泰斗騎手)

ケラススヴィアはラテン語で“桜の道”を意味するという。浦和競馬場もちょうど桜の季節を迎え、その中を走るシーンも非常に印象的だった。

なお、担当する浦志光輔厩務員は、調教師補佐試験に合格したため、厩務員として挑んだ最後のレースとなった。肩書きが変わってもケラススヴィアに寄り添っていくことに変わりはないが、ひとつのレースに様々なドラマが散りばめられているのも競馬の魅力だ。

ケラススヴィアの今後は、南関東牝馬二冠目の東京プリンセス賞へ進んでいく。「心配事が何もないのが逆に不安でした」と管理する小久保智調教師は胸を撫でおろしていたが、430キロ台の小柄な馬体でも、スピードはもちろん持久力も絶賛している。距離が延びての戦いでどんな強さを見せるのか、スケールの大きな走りを期待したい。

取材・文 高橋華代子

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

森泰斗 騎手

目標であった桜花賞を突破できてホッとしています。僕自身も桜花賞にあまり縁がなくて初勝利なので、ケラススヴィアと関係者の皆様に感謝しています。次は二冠目(東京プリンセス賞)にチャレンジしていくと思いますが、いい競馬をして勝ち続けていって欲しいと思います。これからも期待しています。

小久保智 調教師

どの位置でも競馬ができるので枠順は気にならなかったです。スタートを普通に出てくれたら、スピードの違いで逃げられるだろうなとは思っていました。身体能力の高い馬です。お客様のいない場内は寂しいので、みんなで頑張って、また元のように競馬が見られるようになって欲しいと願っています。