ウェブハロン

ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。

  • 第66回
  • 東京大賞典 GⅠ

12.29 (火) 大井 2000m

ゴール前クビ差捉えて勝利
 史上初の東京大賞典3連覇

大井競馬1年の締めくくりは年末の3日間連続重賞開催。本来ならば場内は多くのファンで賑わいを見せるはずだが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため人数を制限し約1000人の来場者となった。それでも、“今年最後のGⅠ”がテレビやインターネット中継など様々なメディアで取り上げられたこともあってか、東京大賞典GⅠ・1レースの売上げは、地方競馬1レースの売上レコードを更新した。全国の競馬ファンがそれぞれの場所でこの大一番を楽しんだということだ。

今年一番の注目馬は2018年、19年の覇者オメガパフューム。中央交流として実施されるようになった1995年以降、2連覇は同馬以外で3頭いるが、3連覇を果たせばレース史上初の快挙となる。今年の帝王賞JpnⅠ、JBCクラシックJpnⅠで先着されたクリソベリル、チャンピオンズカップGⅠを勝ったライバルのチュウワウィザードが不在となれば実績は断然だし、大井2000メートルは連対パーフェクトの得意舞台。となれば、ここは負けられない戦いだ。単勝1.3倍と圧倒的な支持を集めた。

2番人気は今年のジャパンダートダービーJpnⅠの優勝馬で前走の浦和記念JpnⅡを制した3歳馬ダノンファラオで7.0倍。3番人気はその浦和記念JpnⅡでダノンファラオと接戦を演じタイム差なしの3着だったウェスタールンドで、8.1倍と続いた。

地方からも、昨年のこのレースの2、3着馬、ノンコノユメとモジアナフレイバーや、勝島王冠でその2頭を破ったカジノフォンテン、JBCクラシックJpnⅠで地方馬最先着の4着に好走したミューチャリーなど実力馬が顔を揃えた。

ゲートが開くと予想通りワークアンドラブが先手を主張し、好スタートを決めたカジノフォンテンが14番枠から2番手を確保。その後ろにダノンファラオやモジアナフレイバーがつけ、オメガパフュームは6、7番手で先団をマークする位置取り。中団にノンコノユメやミューチャリーが控え、ウェスタールンドは後方からレースを進めた。

3~4コーナーでは抜群の手ごたえで外から上がってくるオメガパフュームの姿が。ミルコ・デムーロ騎手によると「早めに先頭に立ちたくなかった」とのこと。その思惑通り、直線では前で懸命に粘るカジノフォンテンを追いかけ、ゴール前でクビ差捉えて勝利を手にした。3着争いも大接戦となったが最後までしっかり伸びたウェスタールンドが制した。

見事に東京大賞典GⅠ・3連覇の偉業を達成したオメガパフューム。今回は過去2年とは違い、JBCクラシックJpnⅠの後、チャンピオンズカップGⅠに出走せずこのレースに臨んだ。

「年齢を重ねてレースが上手になっている分、一走一走の消耗も大きい。万全の状態でこの相性の良いレースを獲りたいということでチャンピオンズカップをパスしました」と安田翔伍調教師。また、デムーロ騎手のプレッシャーも大きかったことだろう。昨年はゴール後、両手を広げた飛行機ポーズで喜びを表したが、今年は力強く右手でガッツポーズ。レースから戻ってくると馬の首を何度も撫でながら安堵の表情を浮かべていた姿が印象的だった。実はデムーロ騎手にとってこれが20年最後の騎乗で、12月の初勝利。それがジーワン勝利なのだから喜びもひとしおだったに違いない。

オメガパフュームの今後について安田調教師は「3連覇した馬として、さらにこの馬にふさわしいキャリアを伴わせてあげなければいけない」とコメントした。1年後にはなるが、東京大賞典GⅠ・4連覇にもぜひとも挑戦してほしいものだ。

そして、大健闘だったのが2着のカジノフォンテン。9番人気の評価ではあったが、前走でモジアナフレイバーやノンコノユメをねじ伏せた実力は本物だ。今回の走りからも、来年はダートグレード制覇も夢ではない。南関東生え抜き馬からまた楽しみな1頭が出てきた。


  • クビ差の激闘を演じた2着カジノフォンテン(船橋)
  • 取材・文
  • 秋田奈津子
  • 写真
  • いちかんぽ(早川範雄、築田純)

Comment

M.デムーロ 騎手

メンバーは強くなかったけど展開がとても難しかったです。早めに抜け出すと物見をするので、ペースなど色々と考えて騎乗しました。直線はいつもより手応えが良く最後の200メートルでは差し切れると思ったので気持ちが良かった。今月勝てなくて苦しかったけれど(今年)最後のGⅠを勝てて良かったです。

安田翔伍 調教師

3回続けて出走することも簡単ではない中で、結果が伴って、このような馬に携われたことに感謝します。レースプランはジョッキーに任せているので状態の良さだけは伝えていました。状態が良いことによって起こり得るマイナス要素には気を付けてほしいと話していたので、あとはもう見守るだけでした。