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  • 第20回
  • 兵庫ゴールドトロフィー JpnⅢ

12.23 (水) 園田 1400m

直線強襲しハナ差の接戦制す
 トップハンデでも力差を示す

地方ダートグレードの中でハンデ戦は、かきつばた記念JpnⅢ、サマーチャンピオンJpnⅢ、クイーン賞JpnⅢとこの兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢの4つ。地方馬は定量戦やグレード別定戦と比べると軽ハンデで挑めることが多い分、4つのうち、3つは勝利済み。ただひとつ未勝利が兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢだが、過去5年で2着2回、3着3回と善戦。今年も初勝利が期待できる地方馬が参戦してきた。

レース前、サクセスエナジー(プラス22キロ)、ゴールドクイーン(プラス20キロ)、トップウイナー(プラス14キロ)と中央の有力馬の大幅な馬体増が発表されると、場内がどよめいた。それでも人気上位は中央勢。単勝1番人気は春に黒船賞JpnⅢ、かきつばた記念JpnⅢを逃げ切ったハンデ57.5キロのラプタスで2.6倍。2番人気は馬体増だが、ダートグレード4勝でトップハンデ58.5キロのサクセスエナジーで3.2倍。3番人気には7戦全勝で52キロの船橋・サロルン(4.4倍)、4番人気には元中央馬で、9月のテレ玉杯オーバルスプリントJpnⅢではサクセスエナジーの2着だった56キロの川崎・ベストマッチョ(6.9倍)という地方馬初Vが期待される南関東2騎が続いた。地元の期待馬で52キロのナリタミニスターは25.5倍と7番人気だった。

1番人気ラプタスが発馬でつまずき、大きく出遅れるアクシデント。ベストマッチョが逃げ、2番手外にはゴールドクイーン、その内にサロルンがつけた。2番人気サクセスエナジーは、ダッシュがつかず中団待機。

軽快に逃げるベストマッチョに、向正面でラプタスが外から、サクセスエナジーが内から進出を開始。4コーナーではラプタスがベストマッチョに並びかけたが、直線でもベストマッチョが先頭で粘る。ついに地方馬初勝利と思われた瞬間、4コーナーではまだ5番手だったサクセスエナジーが最内を強襲。グングン差を詰めると並んだところがゴールだった。ベストマッチョの森泰斗騎手が「しのいだと思った」、サクセスエナジーの松山弘平騎手が「勝ったと思わなかった」と振り返るほどの大接戦は、わずか4センチ差で内のサクセスエナジーに軍配が上がった。レース直後の検量室前では、1着の枠場にベストマッチョ、2着の枠場にサクセスエナジーが入ったことが接戦ぶりを物語っていた。

惜敗の森騎手は「逃げても、力まなかった。勝ったと思ったが」と悔しさをにじませた。3着ラプタスの幸英明騎手は「よく頑張ったが、スタートがすべて」と肩を落とした。4着ナリタミニスターの吉村智洋騎手は「直線よく伸びたし、枠が内ならもっと差を詰められた」と今後への手応えをつかんだ。5着サロルンの赤岡修次騎手は「古馬の一線級相手では、これが精一杯」と完敗を認めた。

サクセスエナジーの北出成人調教師は22キロ増の馬体について「輸送で減るので、太めにつくったが、減らなかった」と舞台裏を明かした。松山騎手は「得意ではない内枠で勝てたのは価値がある」と振り返った。今後の目標について北出調教師はこれから検討と前置きしつつ、来年2月21日のフェブラリーステークスGⅠ(東京1600メートル)を挙げた。

悲願の勝利へ、あと4センチまで迫りながら、今年も中央勢の壁に阻まれた地方勢。しかし、勝ちに等しい内容は称えられていい。来年こそ、初勝利を期待したい。


  • 地方最先着は2着のベストマッチョ(川崎)
  • 取材・文
  • 松浦渉
  • 写真
  • 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

松山弘平 騎手

最近、スタートがズブくて、中団の位置取りも予想していたので、腹をくくって、内で脚をためた。砂をかぶると嫌がるので、内でもかぶりにくいところで競馬をした。前が開いてからは、よく伸びた。最後は何とか届いてくれの気持ちで追った。枠が外なら、もっと楽な競馬ができた。

北出成人 調教師

馬体は増えていたが、力の違いを見せてほしいと思っていた。最近はゲートで後ろにもたれたり、ずるさを覚えてきた。4コーナーの位置から勝てると思わなかったし、ゴール前はスローで見ても(勝ったかどうか)分からなかった。切れる脚がないので、地方の小回りコースが合っている。