約4カ月間無観客開催だった帯広競馬場は、7月11日に国内の競馬場のトップを切って開場した。それも「生で見てもらってこそのばんえい」だから。声援を控え、距離を取ってと看板やプラカードがあるが、ばん馬の力強さに観客からは思わず声がもれる。
ファン投票によって出走馬を決める、ばんえいグランプリ。暑い帯広では調子を崩す馬も多く今年は2009年以来のBG2に格下げ。1着賞金は200万のまま基礎重量が10キロ減となった。“生産者の祭典”として生産者や牧場を紹介する動画やパネルが公開された。
ファン投票1位、過去2勝のオレノココロは特に暑さに弱く、早々と回避を表明。実際レース前は30度以上の気温が続き、暑さをどう乗り越えるかの闘いでもある。ファン投票上位6頭、賞金上位3頭の9頭が出走した。
今年度の古馬戦線はミノルシャープが北斗賞、旭川記念と重賞2連勝中。最強世代といわれる6歳馬の1頭で2番人気に支持された。1番人気はコンスタントに結果を残すコウシュハウンカイ。回避したオレノココロの主戦・鈴木恵介騎手はセンゴクエースに前走から騎乗。その前走では課題の障害も難なく越え、かつてのコンビが復活の兆しをみせた。
乗用馬のプリンスと病気から復活したPR馬ミルキーが誘導馬を務めた。レース10分前には、帯広青年会議所による市内のサプライズ花火が競馬場からも見られ、コロナ禍の中元気をくれる人や馬の存在に感謝の気持ちがわく。前日の雨が残り馬場水分は1.7%でスタートした。
メジロゴーリキ、ミスタカシマ、ミノルシャープが先行するが、第1障害でセンゴクエースが膝をつくアクシデント。コウシュハウンカイが道中追い上げて第2障害手前で先頭に立った。
最初に仕掛けたのはミノルシャープ。ほぼ同時に隣のコウシュハウンカイも上がった。ひと腰で越え、ミノルシャープの島津新騎手は「今なら(コウシュハウンカイと)一緒に降りても、逃げ切れると思った」。そのまま差は詰まらず逃げ切った。勝ちタイムは2分21秒6。
2着は昨年の優勝馬コウシュハウンカイ。10歳ながら常に上位をキープし続け頭が下がる。3番手で障害を降りた6歳のメジロゴーリキが復調を見せ3着。3番人気のセンゴクエースは第1障害のロスが響き7着。ホクショウマサルはばんえい記念後の重病みが続いており、最下位に終わった。
「これまでは『勝てるかな』という気持ちだったが、今回は『勝つんだ』という気持ちで乗った」と島津騎手。馬を信じ、自信を持ったレース運びが光った。今年度ここまでの重賞7戦で4勝を挙げ「いい馬に乗せてもらっている」と謙遜する。道南の自宅にはばん馬やポニーがおり、馬とともに育った30歳。ミノルシャープとともに、ばんえいの世代交代を狙う。
Comment
島津新 騎手
馬が強いというその一言。降りてからの踏ん張りと、伸びに成長を感じる。馬が行きたがったので逆らわずに障害を越えた。障害前で横を向くのは癖で、前を向くのが行く合図。これからまだまだ強くなり、王者となっていく風格があります。
大友栄人 調教師
嬉しいです。大外の不安もあったがうまく走ってくれた。厩務員も午前3時半ころの涼しい時間に運動させていたので、夏バテもなかった。騎手はもう手の内に入れたんじゃないかな。これからはハンディもきつくなるので大事に使います。ばんえい記念、出したいね。