2年前の覇者ゴールドドリームの出走こそなかったが、現時点で考えうる最高のメンバーが顔をそろえた。JRAからは大井2000メートルのGⅠ/JpnⅠで3勝をマークしているオメガパフューム、国内では6戦無敗のクリソベリル、デビューから15戦して5着以下がないチュウワウィザード、そして元祖怪物ルヴァンスレーヴ、長らくダート路線を牽引してきたケイティブレイブなど豪華な顔ぶれ。地方からも昨年末の東京大賞典GⅠ・2、3着のノンコノユメ、モジアナフレイバー(ともに大井)が、ここへ駒を進めてきた。
なかでも最も人気を集めたのはオメガパフューム。ライバルがサウジカップやドバイワールドカップGⅠといった海外出走や遠征を企図したなかで、国内レースに専念。復帰戦の平安ステークスGⅢを快勝し、得意の大井へ乗り込んできた。2番人気に推されたクリソベリルはサウジカップ7着、開催中止となったドバイワールドカップGⅠからの帰国初戦。対照的なローテーションの2頭が人気を集める、興味深い単勝人気となった。
レースはワイドファラオが逃げ、クリソベリルはこれを見るかたちの3番手、オメガパフュームは中団9番手を追走。前半1000メートル63秒9のスローペースを嫌うように、オメガパフュームが向正面で一気に4番手まで上がり、レースが動いた。しかし、クリソベリルも冷静に対処。簡単にはまくらせず、自らの進路を確保しながら直線に向いた。
こうなれば、あとは持ち前の末脚を伸ばすだけ。クリソベリルは広々としたビクトリーロードを一直線に走り抜けると、オメガパフュームを楽に突き放し、これに2馬身差をつけてGⅠ/JpnⅠ・3勝目を飾った。その着差以上に余裕を感じさせる勝利だった。
この日の大井競馬場は差しも決まっていたが、全体的に見れば前残りぎみ。前半のペースも考えれば、クリソベリルに有利な状況だったといえる。しかし、川田将雅騎手が「ゲートも上手に切ってくれましたし、そのあともリズム良く走れたことで、あの位置を楽にとることができました」と話したように、課題のスタートを決め、3番手を確保できたことは成長の表れ。4歳を迎えて、さらに進化を遂げていることは間違いない。
馬場やペースを踏まえれば、2着のオメガパフュームも底力を存分に発揮したといえる。ミルコ・デムーロ騎手は「ペースは遅かったけど、道中は我慢してクリソベリルを見ながら行った。3コーナー過ぎではプレッシャーもかけに行ったけど、相手が悪かったね」と脱帽したが、外を回らされるロスもあっただけに、GⅠ/JpnⅠ・3勝の実績に恥じない走りだった。
3着は川崎記念JpnⅠを制して以来、約5カ月ぶりの実戦だったチュウワウィザード。3コーナーから直線にかけて進路が狭くなったのが響いたが、ゴール前で鋭く伸びて存在感を示した。「クリソベリルの後ろから行ったけど、3~4コーナーでの反応が遅かった」とクリストフ・ルメール騎手が話したように、今回は休み明けのぶん。ローテーションや状態次第で、今後も十分にチャンスがありそうだ。
ノンコノユメが地方最先着の5着。勝負どころで少し置かれるかたちになったが、直線で盛り返した。後半3ハロンは勝ち馬に次ぐ36秒4で、真島大輔騎手も「スローだったけど、やはりこの馬は脚をためていったほうがいい。最後は切れた」と納得したような表情。東京大賞典GⅠでの走りからも力は見劣らず、流れ次第で今後も好勝負が可能だ。
これで国内では7戦無敗となったクリソベリル。秋はJBCクラシックJpnⅠ(大井)からチャンピオンズカップGⅠ(JRA中京)に向かうローテーションが予定されており、ダート王者として挑戦者を迎え撃つ立場となるだろう。しかし、川田騎手が成長、良化の余地を口にしたように、さらなるパワーアップを遂げる可能性もある。進化を続ける王者の走りから今後も目が離せない。
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川田将雅 騎手
ゲートをスムーズに出ることを心がけていました。我慢するかたちが続きましたが、オメガパフュームが向正面で上がってきて流れが速くなってもスムーズに対応してくれて、その後の手ごたえも良く直線を向くことができました。圧倒的なポテンシャルを持っていますし、まだまだ強くなると思っています。
音無秀孝 調教師
ドバイから帰ってきて体重が減ったので、不安はありました。でも、体重も戻って、いい状態になったから、これならいけるなと思っていました。以前はテンに行けなかったけど、好位でうまく立ち回ってくれましたし、ジョッキーも完璧に乗ってくれました。もうひと回り強くなってほしいですね。