地方で実施されるダートグレードの多くは、JRA馬が上位を独占。それでも近年、短距離の舞台では、中長距離と比較すると地方馬が好走することが多い。
北海道スプリントカップJpnⅢは前年まで23回の歴史で、地方馬の優勝は第2回(1998年)のカガヤキローマン(大井)と第4回のオースミダイナー(北海道)だけで、それ以降は19年連続でJRA馬が優勝。それでも一昨年は岩手のラブバレット、昨年は地元のメイショウアイアンと、地方馬の2着が続いていた。
今年こそという期待がかかるところだが、JRAから参戦した4頭は強力な顔ぶれ。マテラスカイは海外遠征で2着が2回。ノボバカラは1週間前のさきたま杯JpnⅡで優勝したばかりだ。ショームとスズカコーズラインは2走前にオープン特別戦を勝利。単勝オッズもその4頭が10倍未満となった。
対する地方馬は、北海道へ移籍初戦の前走を圧勝したニットウスバルが10.8倍で、昨年の2着馬メイショウアイアンが20.0倍。その2頭はJRA時の成績で比較すると劣勢という感は否めないが、門別の砂に慣れている点はアドバンテージといえるだろう。
この日の門別競馬場は良馬場で、時計がかかるコンディション。各馬が蹴り上げた砂が舞い上がる様子は、パワーが必要である状態であることを想像させた。
夜7時20分を過ぎたころ、無観客開催が続く門別競馬場のパドックに北海道スプリントカップJpnⅢの出走馬が姿を現した。地元のジョウランが出走を取消し14頭立て。前走がサウジアラビアでのレースだったマテラスカイは、デビュー以来の最高体重となる528キロで登場。浦和からの連闘で臨むノボバカラは前走よりプラス5キロだった。
大方の予想どおり、ゲートが開いた瞬間にマテラスカイが先手を取った。スズカコーズラインと大井のハヤブサマカオーが続き、岩手のスティンライクビーなどが追走。ノボバカラは出遅れて、ショームも後方からになってしまった。
マテラスカイは後続を引きつけての逃げ。直線に入ったところで差を広げにかかったが、2番手につけたスズカコーズラインと、中団から徐々に上昇してきたメイショウアイアンが並んで差を詰めてきた。
そしてゴール地点では3頭がまったくの横並び。写真判定となり、まずはメイショウアイアンの馬番が1着と画面に表示された。続いて「写真を拡大して判定中です」という放送。しばらくして、2着は同着で確定となった。
写真判定の間、検量室とその周辺は、まさに“お祭り騒ぎ”といった様子。2着を死守したマテラスカイの武豊騎手は「今日のような乾いた馬場は向いていないんですよね」とコメントを残したが、現地の取材記者からは「盛り上がりすぎて、武豊騎手以外からは話が聞けませんでした」と連絡が入った。
ちなみにダートグレードで10歳以上の馬が優勝したのは、前記のオースミダイナー(12歳)、2001年にさくらんぼ記念GⅢ(上山)を制したセタノキング(10歳)以来で3頭目。そしてこのレースの馬券発売額は、ホッカイドウ競馬における1競走あたりのレコードを記録した。
Comment
落合玄太 騎手
冬場は休養に充てて、休み明けの前走を叩いて状態がぐんぐんとよくなっていましたし、レースの前は“もしかしたら”という思いがありました。砂をかぶると下がってしまうところがあるので、枠順がとてもよかったですね。そのおかげでいいポジションを取れましたし、最後まで馬が頑張ってくれました。
田中淳司 調教師
年齢との戦いになるので、いかに衰えを出さないようにするかと考えてきました。今日の馬場はタフだったので大丈夫かなとは思っていましたが、枠順が出たときにはひょっとしたらというところはありました。勝てて感無量です。今後は無理なローテーションは組まず、一戦一戦を狙っていけたらと思います。