浦和競馬場の無観客競馬の始まりは桜の季節だったが、今は緑が美しい季節になった。5月27日に実施されたさきたま杯JpnⅡは今年で24回目を迎えた。
前走の東京スプリントJpnⅢを優勝したばかりのジャスティンが単勝1番人気で、昨年のJBCスプリントJpnⅠを制した地元のブルドッグボス、オープン初勝利を飾って勢いにのるブルベアイリーデや昨年のかきつばた記念JpnⅢの覇者ゴールドクイーン、重賞4連勝の実績がある大井のキャプテンキングが、10倍以下のオッズとなった。
終わってみれば、南関東競馬を知り尽くす不動のリーディング・森泰斗騎手に初めてエスコートされたノボバカラのパフォーマンスが光った。中央馬の中で最も人気はなかったが、それを覆す力走で、4年前のカペラステークスGⅢ以来となるうれしいタイトルを獲得した。森騎手は、「初めて乗せていただきましたがいい馬ですね。すごく大人しくて素直で、さすがベテランだなぁという印象です」と、8歳馬の頑張りを労った。
逃げ宣言を出していたノブワイルドがスタートで先頭に立つと、前半3ハロンのタイムは35秒2と縦長の展開を作っていった。以前はスタートが課題だったというノボバカラはしっかり決めて、内の3番手から。その外にキャプテンキングが続き、ブルドッグボスは中団の前を追走していった。
3~4コーナーではノブワイルドの楽勝ムードにも感じられたのだが、最後の直線に入るとそのリードが一気に縮まり、ポジションを上げていったノボバカラがゴール前で力強く抜き去った。
「内ラチ沿いが取れたのが大きかったですし、スタート後に内枠の馬たちが多少モタモタしたので、レース展開みたいなものも味方につけられました。勝ち時計も含めて優秀で、これからもまだまだ頑張れる馬だと思います」(森騎手)
人気の一角ブルドッグボスも追い込んできたがノボバカラに1馬身届かず2着で、逃げ粘ったノブワイルドは3着。1番人気だったジャスティンは、スタートで躓き中団から進めていく展開で5着に終わった。
ノボバカラは夏休みに入る前にもうひと頑張りする予定で、この後は連闘で6月4日の北海道スプリントカップJpnⅢに向かうという。
惜しくも敗れたブルドッグボスだが、メンバー中一番重い斤量58キロを背負う中、さすがの走りを見せてくれたと思う。今年の目標はJBCスプリントJpnⅠ連覇になっていくだろう。NARグランプリ2019年度代表馬が大一番に向かっていく姿を、今後も楽しみにしていきたい。
なお、昨年11月に浦和競馬場からデビューしたばかりの中島良美騎手が、愛知のペイシャゲランの手綱を取り、自身にとって初めての重賞騎乗がダートグレードになった。さすがに道中は後方から進めていく形で11着に終わってしまったが、この舞台に立てたということは何よりの財産だろう。「ペースについていけませんでしたが、初めての重賞に乗せていただいていい経験になりました」と中島騎手。
11年5月に平山真希騎手(現調教師)が引退してから、長らく女性騎手不在だった南関東競馬だが、現在はこの中島騎手と4月にデビューしたばかりの北島希望騎手がそれぞれ魅力的な騎乗を見せている。成長を見守っていきたい。
Comment
森泰斗 騎手
初めて乗せていただいたので前との比較はつかないですが、返し馬の時点から力強さも雰囲気もあって体調がすごくよかったと思うので、いいタイミングで乗せていただきました。JRAの馬の騎乗依頼をいただいて結果を出せたのは、地方競馬のジョッキーとしてすごくうれしいです。これからも精進していきます。
森秀行 調教師
スタートも速くて逃げた馬のすぐ後ろにつけられたのですが、前の馬が止まるとは思わなかったので、楽に5馬身くらい離されるのかなと見ていました。(前の馬が)止まりだしたので、これなら交わせるかなと思いました。8歳ですがゲート難が解消されたことで、これからも頑張ってくれると思います。