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  • 第32回
  • かしわ記念 JpnⅠ

5.5 (祝火) 船橋 1,600m

発馬決め理想の展開に持ち込む
 逃げ切り完勝でジーワン初制覇

7頭立てとなった今年のかしわ記念JpnⅠ。特に地方勢はナンヨーオボロヅキ(大井)1頭のみで、なんとも寂しい頭数での頂上決戦になった。地元の南関東は翌週に川崎マイラーズ、2週後に大井記念と、古馬重賞が続く日程。昨年が同様のスケジュールで11頭立て、地元の有力どころが敬遠ぎみになる近年のGⅠ/JpnⅠの傾向からも、一概にこれが原因とも言い難いのだが、多少の日程調整は必要かもしれない。

とはいえ、出走メンバーは春のダートマイル王決定戦にふさわしいもの。フェブラリーステークスGⅠの1、2着馬モズアスコットとケイティブレイブ、デビューから8戦7勝のルヴァンスレーヴ、昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠを制したサンライズノヴァといった強豪が集結した。特にモズアスコットは地方初参戦、ルヴァンスレーヴは約1年5カ月ぶりの実戦で、ともにどんな走りを見せるのか、注目を集めた。

ところが、レースは意外な結果に終わる。最内枠からダッシュを利かせた6番人気のワイドファラオが逃げ切り、GⅠ/JpnⅠ初制覇。1番人気に推されたモズアスコットは6着、2番人気のルヴァンスレーヴは5着と、ともに精彩を欠いた。

スタートから各馬の明暗は分かれた。最内枠からスムーズなスタートを切ったワイドファラオに対し、モズアスコットはつまずき、ルヴァンスレーヴは立ち遅れぎみ。1コーナー付近でルヴァンスレーヴが2番手まで上がってきたものの無理はせず、2コーナーではワイドファラオの単騎逃げとなった。気分良く運んだワイドファラオは3コーナーからスパートすると、ルヴァンスレーヴはついていくことができず、モズアスコットは後方のまま。直線でもワイドファラオの脚いろは衰えず、2馬身差をつける完勝劇でダート路線の主役に躍り出た。

ワイドファラオは芝のニュージーランドトロフィーGⅡ、ダートのユニコーンステークスGⅢに続く重賞3勝目。手綱をとった福永祐一騎手は「スタートで脚を滑らすときがあるから、それだけを気をつけていた。もともと長くいい脚を使える馬だから早めにスパートをかけたけど、3コーナーまで『こうなればいいな』と思っていた展開になってくれた」と笑顔で話した。展開に恵まれた面はあったが、コンビを組んで8戦目だけに、馬の長所を生かし切っての騎乗。この2日前にJRA通算2300勝を達成した名手の技が光った。

2着には5番人気のケイティブレイブが押し上げた。長らく中距離を使われてきたが、フェブラリーステークスGⅠ(2着)で急流に対応できたうえ、走り慣れた地方の馬場に替われば、この結果にも驚かない。「前走と同じようにリズム良く競馬ができた。道中はロスなく内を回れたし、しまいもしっかり伸びていた」と長岡禎仁騎手。年齢を重ねて立ち回りがうまくなったことが、マイルでの好成績につながっている印象で、さらに活躍の幅が広がったといえる。

3番人気のサンライズノヴァが3着。左回りのマイル重賞で3勝を挙げており、適性の高さを示した。武豊騎手は「スタートのタイミングは良かったが、つまずいてしまい、後ろからのポジションになった。馬場も乾いていて、空回りしていた」と話しており、良に回復した馬場に脚をとられた格好だ。ただ、持ち前の末脚は発揮できており、今後も展開ひとつでチャンスが巡ってくるはずだ。

一方で、ルヴァンスレーヴのミルコ・デムーロ騎手は「1年5カ月ぶりということで、4コーナーではバテてしまった」、モズアスコットのクリストフ・ルメール騎手は「初めての地方の競馬場で、4つのコーナーや深い砂に脚をとられた」と話した。ただ、ともに敗因は明確だけに、巻き返しに期待したい。また、地方馬で唯一の参戦だったナンヨーオボロヅキは最下位の7着だったが、休み明けでJpnⅠのメンバーなら仕方のない結果。この経験を糧にしてほしいところだ。

  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 国分智(いちかんぽ)

Comment

福永祐一 騎手

強力な先行馬も見当たらなかったので、自分のペースならチャンスがあると思っていました。楽に行けたから後ろを待たずに上がっていきましたが、気持ちよさそうに走っていたので、これならと思いました。馬と一緒に気持ちのいい走りができてタイトルを獲ることができ、嬉しく思います。