昨年はレディスヴィクトリーラウンドと同じ日に行われたが、競馬場は無観客。今年は例年通りのにぎわいのなかで行われ、名古屋大賞典JpnⅢの馬券発売額は前年を2億1千万円あまり上回る、7億1992万5400円の新記録を達成した。
その舞台に臨んだのは12頭。JRAからは5頭、地方他地区からは兵庫で快進撃を続けるジンギ、前哨戦の梅見月杯を圧勝した大井のノーブルサターンを含む3頭が出走してきた。
そのなかで単勝1番人気に支持されたのは、前走の佐賀記念JpnⅢを9馬身差で圧勝したクリンチャー。昨年の1番人気も佐賀記念JpnⅢを制して臨んだナムラカメタローだったが(結果は3着)、昨年に比べると人気度は相当に違った。
本馬場入場時のクリンチャーの単勝オッズは1.1倍で、締め切り時でも1.3倍。その数字が過剰ではなかったと思えるほど、余裕がある勝利を挙げた。
クリンチャーの馬体重は前走よりプラス7キロ。リップチェーンを装着していたものの、落ち着いた雰囲気を見せていた。2番人気はロードブレスで4.9倍。静かに歩きながらも気合が入っているようだった。
一方、8.3倍の3番人気に推されたメイショウカズサは、それまでのブリンカーに加えてハミ吊りを装着してきたが、小走りになったり立ち上がりかけたりと気持ちが昂っている様子。レースでも流れに乗れないまま8着に敗れてしまった。
その要因のひとつには、先行争いが激しくなったことがありそうだ。スタート直後に先手を取ったのはポルタディソーニ。ロードブレスが2番手につけたが、大外枠からの発走だった4番人気のバンクオブクラウズが1周目の3コーナーでまとめて交わして先頭に立った。
ウインユニファイドとクリンチャーはその3頭の直後を追走し、これまで逃げ先行で結果を残してきたジンギは「あれ以上行ったらしんどくなると思った」(田中学騎手)という判断でクリンチャーの後ろから。ノーブルサターンはスタートが悪く、大きく離れた後方からの競馬になってしまった。
その流れは最後まで緩むところがなかったように見えた。実際、良馬場で2分ちょうどという勝ち時計は、重馬場の昨年より2秒も速い。そこで勝負できるのは前に行けた組。1コーナーではバンクオブクラウズの直後にクリンチャーとロードブレスが上昇し、3コーナーでは勝負圏内がこの3頭に絞られた感があった。
ただ、このなかではクリンチャーの実力がやはり上。少しずつ上昇して4コーナーで先頭に並び、最後の直線では見せムチだけで勝利。次に向けてのダメージを少なくすることをテーマにしているかのような勝ちかただった。
3馬身差で2着には逃げたバンクオブクラウズが残り、ロードブレスは3着まで。
ジンギはそこから3馬身差ながら、ゴール直前でウインユニファイドを交わして4着に入った。「こういう流れで走ったことがなかったのに、やはり力がありますね。これを糧にして、また大きいところを狙っていければと思います」と、橋本忠明調教師。田中騎手も「想定外の流れになりましたが、それでも粘ってくれたと思います。今までは楽なレースが多かったですからね」と振り返った。
Comment
川田将雅 騎手
返し馬で状態面での問題はないと感じたので、あとは58キロという斤量が課題かなと思いました。(ゲート裏の待機所で)馬の行く気がいまひとつのようだったので、前に行くことはないなと思いました。それでも道中のリズムは悪くなかったですし、徐々にうながしていきながら、最後まで頑張ってくれました。
宮本博 調教師
前走の佐賀記念のあとは、現状を維持できればという形で調整してきました。それでも1週前に馬場追いができて、坂路でも追い切れましたし、勝ってくれてよかったです。春の目標は帝王賞ですが、相手は強いでしょうし賞金額も足りるかどうか。今年はJBCが金沢なので、そこも狙いたいと考えています。