ウェブハロン

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  • 第24回
  • TCK女王盃 JpnⅢ

1.20 (水) 大井 1800m

スローペースでも末脚発揮
 ダートで2つめのタイトル

大井のエース・サルサディオーネ、浦和の新星ダノンレジーナの名前がなく、9頭立ての少頭数、加えて無観客開催と、地方開催のダートグレードとしては盛り上がりに欠けるかと思われた今年のTCK女王盃JpnⅢ。しかし、想像以上の熱戦が繰り広げられ、牝馬路線の充実ぶりを証明したかたちになった。

人気の中心はレディスプレリュードJpnⅡを制し、JBCレディスクラシックJpnⅠでも3着したマルシュロレーヌ。ダートに転じて安定した成績を残しており、ここも大きく崩れることはないと見られた。

レースは58キロを課せられたプリンシアコメータが逃げ、前半3ハロン38秒7のスローペース。後方7、8番手を進んだマルシュロレーヌにとっては苦しい流れとなったが、4コーナーを回って外に持ち出すと、持ち前の末脚で猛追。先に抜け出したレーヌブランシュをゴール寸前で捉えると、これに半馬身差をつけて勝利した。マルシュロレーヌの上り3ハロンは37秒0で、もちろんメンバー最速。芝で鍛えられた瞬発力を存分に発揮した。

ゴール寸前での差し切りだったが、川田将雅騎手は「直線が長いのでゆっくり動かしていきながら、ゴールまでに捕らえられればと思っていました」と冷静な騎乗。前残り気味だったこの日の馬場を考えれば、着差以上の強さを見せたと言える。また、大井で生まれ育った矢作芳人調教師は今年度、ここで行われたダートグレード全10レース(JBCを含む)のうち、5勝を挙げる活躍。「JBCで悔しい思いをしたので、その悔しさを晴らせてうれしい」と満面の笑みを見せた。

明け4歳のレーヌブランシュが2着。勝ち馬の切れには屈したが、それに次ぐ上り3ハロン37秒4の末脚を発揮し、この路線での力上位を示した。松山弘平騎手は「少しズブくなる面はありますが、きょうは大外枠からうまく3番手を進めたし、いい内容だったと思います」と評価。レディスプレリュードJpnⅡでは1秒7差をつけられたが、一戦ごとに着差を詰めていることからも、明らかに地力は強化されている。さらなる成長も望めるだけに、今後も注目の存在だ。

「直線も差し返しているし、よく頑張ってくれたよ」と口元に笑みを見せたのは、プリンシアコメータの岩田康誠騎手。スローペースで逃げられたとはいえ、58キロを背負って0秒6差3着に粘ったのは、重賞4勝の底力。8歳とは思えないパフォーマンスで健在を示した。

地方勢の最先着はマルカンセンサー。直線でじわじわと伸び、マドラスチェックとの4着同着に持ち込んだ。笹川翼騎手は「思った通りのレースができましたね。ただ、調子が良すぎたぶん、少しハミをとってしまいました」とスローペースを恨んだが、勝ち馬から0秒6差に食い下がった内容は悪くなかった。地方重賞も含め、この馬にタイトルがないのは不思議だが、牝馬路線での力上位は疑いようがない。いつかはチャンスが巡ってくるはずだ。

各馬がそれぞれの持ち味を発揮したことで、手に汗を握るゴール前になった今回の一戦。JBCレディスクラシックJpnⅠを制したJRAのファッショニスタは引退、地方のサルサディオーネは回避と、それぞれの女王が不在でも、見どころは十分だった。牝馬路線の熱気は、まだまだ冷めやらない。


  • 地方最先着は4位のマルカンセンサー(大井)
  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

川田将雅 騎手

ゲート出て馬の気分次第だと思ったので、あの位置になりました。前半はそんなに進んでいかなかったのですが、向正面に入ってからその気になって、いい雰囲気で走れました。昨年ダートに転向して以降、いい走りをしているので、今年もいい内容で走りながら勝ち切っていきたいと思います。

矢作芳人 調教師

馬体重が増えたことはいいことだと思いましたし、馬がとてもフレッシュな状態だったと思います。最後は届かないかなと思いましたが、よく差し切ってくれました。今後のプランについては馬の状態に合わせて考えるつもりですが、最終的には昨年勝てなかったJBCを獲りたいと思っています。