2020年11月20日(金)
馬産地門別と初の2場開催
生産者の祭典として進化
20回目、2歳カテゴリーの追加、史上初の2場開催という、記念すべきJBCは、残念ながらコロナ禍というきわめて特殊な状況で行われた。
2月下旬からどこの競馬場も無観客開催が続いていたが、大井競馬場では9月の開催から人数を限定する形で入場を再開。門別競馬場ではJBC当日を含む今シーズン最後の3日間(11月3~5日)のみ、やはり人数を限定しての入場となった。
大井競馬場の入場は事前応募による抽選。一般席は375組750名、JBC当日の指定席はG-FRONTのみに限られた(11月1~6日の開催で、JBC当日以外はL-WINGも抽選販売された)。終了後、当日の入場は777人と発表された。
門別競馬場も事前応募による抽選で、50組(同伴者1名まで)最大100名。馬主や生産者の入場も制限され、JBC出走馬主および生産者は、それぞれ本人と随行者1名まで。その他のレースの出走馬主・生産者は、それぞれ本人のみに限定された。
JBCが開催された競馬場ではこれまでも施設改善が行われてきたが、はじめてのJBC開催となった門別競馬場では、Aスタンドのポラリススタンド側に3階建部分が拡張され、おもに来賓や招待者用の部屋や席が確保された。
馬産地にある門別競馬場は普段から生産者同士の交流の場ともなっている。今年はコロナ禍の状況ゆえ入場が制限されたのは仕方ないが、来年以降、コロナ等を気にせず通常の開催ができるようになったときには、JBC開催に併せて多くの生産者が集まれるような、いわば社交の場として盛り上がれるようなことがあってもよいのではないか。
時刻 | 競馬場 | レース名 |
---|---|---|
15:50 | 大井7R | |
16:05 | 門別8R | |
16:30 | 大井8R | JBCレディスクラシック |
17:10 | 大井9R | JBCスプリント |
17:50 | 門別9R | JBC2歳優駿 |
18:30 | 大井10R | JBCクラシック |
19:00 | 門別10R | |
19:15 | 大井11R |
JBC前後の発走時刻
初めての2場開催ということでは、発走時刻も工夫された。
JBC以外のレースでも、大井・門別それぞれ第1レースから40分間隔で組まれ、互いに重ならない等間隔となっていた。
JBC4競走ではきっちり40分の間隔が確保され、大井のスプリントとクラシックの間に、2歳優駿が挟み込まれた。これによって単なる相互発売やリレー開催ではなく、2場で連携した一体感があった。
またコロナ禍で室内の密集は避けなければならない状況で、大井・門別とも天候に恵まれたのは一安心だった。
スプリント・2歳で地方馬が勝利
JBCレディスクラシックJpnⅠは、Road to JBCのレディスプレリュードJpnⅡを快勝して断然人気となったマルシュロレーヌが直線意外に伸びず3着。ファッショニスタがマドラスチェックとの追い比べをアタマ差で制した。ファッショニスタは、一昨年京都、昨年浦和と本競走連続3着で、まさに三度目の正直が実った。その後、引退を発表。JBCレディスクラシックJpnⅠは今年で第10回だが、それ以前の牝馬ダートグレードはJpnⅡのエンプレス杯が最高格付だった。繁殖になるに際して、JpnⅠのタイトルが付く価値はきわめて大きい。
オッズ的にも混戦だったJBCスプリントJpnⅠは、地元大井のサブノジュニアが4コーナー11番手からゴール前で突き抜けた。JBCでは、最初の10年で地方馬の勝利はスプリントのフジノウェーブのみだったが、近4年では、レディスクラシックのララベル、昨年スプリントのブルドッグボス、そして今回のサブノジュニアと3頭の地方馬が勝っている。それは近年右肩上がりの馬券の売上げと、それにともなう賞金や手当の上昇と無関係ではないのかもしれない。
一方で中央勢との圧倒的な能力差をあらためて感じさせられたのがJBCクラシックJpnⅠ。昨年の浦和は小回りを理由に回避したクリソベリルだったが、大井のこの条件なら何度やっても負けないのではないかとも思える圧倒的な強さだった。大井得意のオメガパフュームも相当に高いパフォーマンスを発揮しているが、相手が悪かった。現在、マイル以上のダートGⅠ/JpnⅠは地方・中央合わせて年間8レースあり(2・3歳限定戦、牝馬限定戦は除く)、さらに従来からのドバイだけでなくサウジアラビアにも超高額賞金のレースができた。場合によっては芝より稼げる可能性があるため、中央勢のダートの層がますます厚くなっていると思われる。
そして第1回JBC2歳優駿JpnⅢは、地元ホッカイドウ競馬所属馬のワンツー。格付こそ前身の北海道2歳優駿を引き継いでのJpnⅢだが、“JBC”のタイトルが付いたことで、ホッカイドウ競馬の厩舎関係者にはこのレースに向けて戦前からこれまでと違った意気込みが感じられた。それが“2歳戦は譲れない”という結果にもつながったと思われる。
その門別競馬場では、これまで開催最終日に道営記念とともに行われていた2歳牝馬のブロッサムカップがこの日に実施された。持ち回り開催のJBCは、地方競馬のさまざまなコース形態を考えると距離のカテゴリーをさらに増やすことは難しそうだが、ブロッサムカップを“JBC2歳優駿牝馬”に進化させることはできるのではないか。
生産者主導らしい祭典
2場開催となった今回のJBCで画期的だったのは、各レースの表彰式後に生産者のインタビューが実施されたこと。レディスクラシックではファッショニスタの生産牧場であるダーレー・ジャパン・ファームの方の都合がつかなったようでインタビューがなかったが、スプリントのサブノジュニアは藤沢牧場の藤沢亮輔氏が大井で、2歳優駿のラッキードリームは谷岡牧場の谷岡康成氏が門別で、それぞれインタビューが行われた。そしてクラシックのクリソベリルでは、ノーザンファーム・吉田俊介氏のインタビューが門別競馬場で行われた。場産地・門別競馬場との2場開催で連携がしっかりと機能した。
かつてのJBCでは、競馬場によっては表彰式で生産者の表彰台すらないということがあり、勝ち馬の生産者ががっかりしていたということもあった。しかしようやくこうして生産者の顔が見えるようになったことは、生産者主導の祭典と呼ぶにふさわしい。
売上は全4戦でレコード
売上面では、従来からの3競走すべてでレコードを更新(2018年のJRA京都開催を除く、以下同)。しかもスプリントとクラシックは、ともに初めて20億円超えとなった。門別の2歳優駿では、ホッカイドウ競馬における1競走のレコードを更新。さらに門別競馬場では、今年何度か更新されていたが、このJBC当日もホッカイドウ競馬における1日の売上のレコード更新となった。
レース名 | 2020年売上 | 2019年までの売上レコード(※) |
---|---|---|
クラシック | 2,991,791,200円 | 1,812,368,300円(2017大井) |
スプリント | 2,047,129,900円 | 1,626,144,900円(2019浦和) |
レディスクラシック | 1,296,549,200円 | 1,131,146,900円(2019浦和) |
2歳優駿 | 974,898,000円 | |
JBC競走合計 | 7,310,368,300円 | 4,555,605,600円(2019浦和) |
※2018年JRA京都開催は除く
JBCの歴代の売上では、第1回大井の2競走合計24億円余りという額がその後はなかなか超えられないでいた。それは地方競馬全体の売上が下がり続けていた時期でもあり、レディスクラシックが加わった11年大井、12年川崎の3競走の合計でも、ともに20億円に届かなかった。しかし地方競馬全体の売上が12年から上昇に転じると、JBC3競走の売上は翌13年以降毎年上昇を続け、昨年の浦和では初めて40億円超えとなる45億5560万5600円。そして今年は従来の3競走の合計でも63億円余りとなり、2歳優駿も含めた4競走の合計では73億1036万8300円となった。
そして2021年のJBCは、8年ぶり2回目となる金沢と、2歳優駿は引き続き門別。2場開催の盛り上がりがさらに進化することを期待したい。