JRA有馬記念GⅠを3日後に控え、夕方には枠順公開抽選会も行われたこの日、名古屋グランプリJpnⅡには武豊騎手やオイシン・マーフィー騎手など豪華な顔ぶれが揃った。パドックには彼らの横断幕も掲げられ、人馬ともに注目を集めた一戦を制したのは名古屋の馬場を熟知する地元の岡部誠騎手。前日の全日本2歳優駿JpnⅠに続き、地方所属ジョッキーがダートグレードのタイトルを手にした。
ここ数年、名古屋グランプリJpnⅡで地元の大将格として上位争いを繰り広げてきたカツゲキキトキトが不在なのはやや寂しいところ。1番人気はデルマルーヴルで単勝2.8倍に支持された。2番人気はJRA勢では唯一の名古屋経験馬アナザートゥルースで、地方初参戦組のメイショウワザシ、アングライフェン、アポロテネシーが続き、単勝10倍以下はこのJRA5頭。
逃げるようになってから強さに磨きがかかったメイショウワザシが先手を奪い、外から来たアポロテネシーとアナザートゥルースは控えるかたち。その後ろにアングライフェン、内にデルマルーヴルと続いた。
馬群は大きく3つに分かれ、2周目の3コーナーでアングライフェンがメイショウワザシに並びかけると、直線で先頭に躍り出た。しかし4コーナーで大外を回り、直線ではただ1頭、馬場の真ん中を通ったデルマルーヴルがひと追いごとに迫り、最後の2完歩で差し切って勝利した。
「能力はあるのですが、2歳以来、タイトルを獲れず『何とか勝ってほしい』とずっと願っていました」という戸田博文調教師の思いも通じ、昨年の兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ以来の重賞制覇。昨年の全日本2歳優駿JpnⅠ、今年のジャパンダートダービーJpnⅠ、レパードステークスGⅢ、白山大賞典JpnⅢと実に4度の重賞2着で涙を飲んできただけに嬉しい勝利となった。
鞍上の岡部誠騎手も関係者の元へ引き揚げてくるなり笑顔でガッツポーズ。2012、14年名古屋グランプリJpnⅡをともにエーシンモアオバーで制して以来のダートグレードレース制覇だった。「嬉しいです。最近、他場ばかりで名古屋ではなかなか重賞を勝たせてもらっていなかったので、少しは存在感を示せたかなと思います」と笑った。
前日に全日本2歳優駿JpnⅠをヴァケーションで制覇した吉原寛人騎手(金沢)と同様、全国で重賞レースのスポット騎乗を行い、結果を残してきた一人。この日は第5レースで7番人気馬が馬場の中央を伸びて2着など外差しが決まりやすく、「真ん中より外が一番良くて、あそこを通ろうと思っていました」とコースを熟知するリーディングジョッキーだからこその判断が光った。
一方で悔しさを味わったのはクビ差2着アングライフェン陣営。マーフィー騎手は前走(浦和記念JpnⅡ・4着)で勝ち馬デルマルーヴルに騎乗していただけに「あの馬がライバルだと思っていました」という。「前を見ながら勝ちに行く競馬をしましたが、斤量差もあって差されて申し訳ないです」と、一旦は先頭に立ちながらも2キロ軽い3歳馬に差されてしまった。1馬身半差で続いたアナザートゥルースは今春の名古屋大賞典JpnⅢに続いての3着で「ペースアップした時、小回りだと上手く加速ができないぶん、最後の差につながりました」と大野拓弥騎手は肩を落とした。
地方馬最先着は6着のオールージュ。村上弘樹騎手は「かかる癖があるので、距離が長いレースでいつもより前に行ってみようと思っていました。欲を言えば掲示板に載りたかったですが、よくがんばってくれました」と健闘を称えた。
Comment
岡部誠 騎手
前走のVTRを見て、しまいにまた伸びることが分かったので、あとはどれだけロスなく乗れるかだと思っていました。残り100メートルくらいでもう1回ギアが入ってくれました。責任も感じていたのでホッとした気持ちがあります。馬は上がってきても涼しい顔をしていて心肺機能がすごいと思います。
戸田博文 調教師
デビューの頃は出遅れることもありましたが、最近はスタートも良くなってきて、今日は行く馬を見るいいポジションを取れました。まだ子供っぽさがあってスイッチの入り方が不安定ですが、今日は岡部騎手がうまくコントロールしてくれました。この後は選ばれれば川崎記念に向かいたいと思います。