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  • 第40回
  • 浦和記念 JpnⅡ

11.28 (木) 浦和 2,000m

困難乗り越え実力馬が復活
 大台のダートグレード10勝

ケイティブレイブが強いまま帰ってきた――。

3歳時の兵庫チャンピオンシップJpnⅡ制覇を皮切りに、ダートグレードを9勝。GⅠ/JpnⅠも3勝を数え、日本のダートを代表する1頭として地位を築いてきたこの馬に、まさかの事態が起きたのはドバイワールドカップ直前のことだった。疝痛を起こしたため同レースへの出走を急遽取消し、腸捻転との診断。現地で開腹手術を行った。幸い術後の経過は良好で、5月には帰国の途についたが、今回はそれ以来の出走。通常の“ドバイ帰り”ではないだけに、かつての走りができるのかが焦点だった。

スタート直後、鞍上の御神本訓史騎手は多少促しながら先行し、早めに外に切り替える。1周目スタンド前では3番手につけ、絶好の位置でレースを進めた。手ごたえ十分のまま、2周目3コーナーで先頭に立つと、セーフティリードを築いて直線へ。JpnⅡでは格が違うと言わんばかりの横綱相撲で3馬身差をつけ、2016年以来となる浦和記念JpnⅡ制覇を果たした。

当初、騎乗予定だったクリストフ・スミヨン騎手が腰痛のため、急に乗替わることになった御神本騎手。「包まれたくなかったから外に出して、打ち合わせどおりに運べた」と振り返ったが、最内枠ながら1周目3~4コーナーでスムーズに外に持ち出したあたりは、御神本騎手らしいさすがの騎乗。JBCスプリントJpnⅠに続く浦和でのダートグレード制覇に、満面の笑みを見せた。

息の長い末脚を見せて2着に食い込んだのはアナザートゥルース。休み明けだったみやこステークスGⅢこそ6着だったが、叩き2戦目できっちり変わり身を見せた。「スタートで滑ったけど、立ち回りのうまさを発揮してくれた。少しずつ良くなっている」と大野拓弥騎手。もともと名古屋大賞典JpnⅢで3着があり、小回りにも対応できるタイプだが、展開にも注文がつかないことを証明。今後もさまざまな舞台で活躍が期待できるだろう。

1番人気に推されたデルマルーヴルは2周目向正面で手応えが怪しくなり、直線で多少盛り返したものの4着まで。オイシン・マーフィー騎手は「最後に伸びなかったのは、速い流れのなか、前々で運んだぶんかもしれない」と話したが、それでも2着から0秒2差に迫った内容は悪くなかった。これからの成長が望める3歳馬だけに、ダート路線の注目株であることに変わりはない。

一方、地方勢ではセンチュリオンの5着が最高。同舞台で行われた前走のJBCクラシックJpnⅠで3着に食い込んだだけに期待されたが、森泰斗騎手は「時計が速すぎた」と話した。この馬自身は前走と同じような時計で走れていたが、ペースや展開への対応力の差が出た印象。裏を返せば、はまればチャンスがあるはずで、引き続きこの路線の中核として頑張ってくれそうだ。

結果だけ見れば、実績馬がJpnⅡのメンバーを相手に完勝したかたちだが、開腹手術、急な騎乗変更、別定58キロなど、さまざまなハードルを越えたケイティブレイブの精神面の強さがよく表れた一戦だった。次走予定の東京大賞典GⅠへ向けても展望が開けただけに、ケイティブレイブのサクセスストーリー第2章は、ここから始まるに違いない。


  • 地方競馬全国協会理事長賞の
    副賞として畜産品が贈呈された
  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

御神本訓史 騎手

無事にスミヨン騎手の代役を果たせてホッとしました。内に閉じ込められたくなかったから外に出したけど、道中もリズム良く走っていて、手ごたえも良かったですね。作戦通りに乗ることができました。厩務員さんがよく手をかけていることが分かりましたし、もっと活躍してくれそうです。

杉山晴紀 調教師

通常の休み明けではなかったので、ただただホッとしています。馬が自分から走りたいという気持ちと、コンディションが上がってきたタイミングを見て、使うレースを決めました。1歩目から自分で行く気を見せていましたし、レース間隔が開いたことで、むしろリフレッシュできたのかもしれません。