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  • 第28回
  • ゴールデンジョッキーカップ

9.4 (水) 園田

村上騎手が7回目の出場で初優勝
 最終戦上位3名がそのまま表彰台

ファイティングジョッキー賞

エキサイティングジョッキー賞

チャンピオンジョッキー賞

通算2000勝以上の騎手が園田競馬場に集うゴールデンジョッキーカップ(GJC)は今年で28回目。2005年度(06年2月実施)以降、冬の開催として定着しつつあったが、3年前からは1988年の第1回と同じ9月開催に変更された。

気温32度と残暑厳しい中、福永祐一騎手(JRA)は「我々も騎手の中では後期高齢者に入るので、できるなら気候のいい時にやっていただければ」と冗談を交えて笑いを誘いつつ「暑いけど、がんばります!」と意気込みを語った。その福永騎手の42歳に対し、今年も最年長での出場は的場文男騎手(大井)で62歳。「そろそろ年齢的に最後かなと思うので、優勝したいです」と話すと、ファンは「最後だなんて言わなんで」と寂しそうに呟いた。同じく大井の真島大輔騎手は初出場。「すごい先輩方の中で初心に戻って勉強させてもらう気持ちです」と話した。

第1戦は的場騎手が好スタートから出ムチを入れるところ、外から真島騎手が「すんなり行けそうだったので」と、スーッと先手を奪っていった。2番手に田中学騎手(兵庫)、その後ろに下原理騎手(兵庫)で馬群はひとかたまり。3コーナー手前で中団につけていたナリタエストレジャと山口勲騎手(佐賀)が勢いよく先頭までひとまくりして6馬身差で勝利した。ナリタエストレジャは前走の転入初戦ではデビュー1年目の木本直騎手が騎乗して出遅れ3着だったが、「今日はなんとか普通にゲートを出てくれたので楽でした。仕掛けが早いかなと思いましたが、ジリジリと脚を使うタイプと聞いていたので」と山口騎手。そのレースぶりに木本騎手は「強いですね」と見入っていた。

2着は後方から直線で差し脚を伸ばした川原正一騎手(兵庫)。3/4馬身差3着で、GJC最多タイとなる3度の優勝経験を持つ田中騎手は「ゲートの出方が……」と悔やんだ。

第2戦も的場騎手が逃げるかと思われたところ、スーッと外からハナを奪ったのは戸崎圭太騎手(JRA)。やや縦長の展開から向正面半ばで中団につけていた真島騎手が馬群を縫いながら進出した。しかし、このクラスで実績上位のシュティーアと戸崎騎手が4コーナーでセーフティリード。最後は1馬身半差まで真島騎手に詰め寄られたものの1着で駆け抜けた。「出遅れたのは騎手のせいですが、気持ちよく走らせたらしぶといと聞いていたので、そんなかたちでいけたらと思いました」と戸崎騎手。

さらに4馬身差で後方から馬群を縫って進出した岡部誠騎手(愛知)が入った。1番人気で、GJCは2度優勝経験のある岩田康誠騎手(JRA)は3番手でレースを進めたが「1コーナーで無駄脚を使ってしまいました」と4着だった。

引き揚げてくると、赤岡修次騎手(高知)が真島騎手に「優勝、狙えるんじゃない?」と一言。「そんな!」と本人は謙遜したが、直後に『暫定1位、真島騎手』と速報が届き、「えっ!ホントに!?」と驚いた。隣の赤岡騎手は「俺は勝たないと無理だよ」と、下から3番目(9位タイ)に書かれた自身の名前を指差した。とはいえ赤岡騎手でもトップとは12ポイント差と拮抗しているため、1着20ポイントをゲットできれば優勝の可能性はある。ところがただ1人、優勝の可能性が消えてしまったのは前日にイヌワシ賞(金沢)でバースデーVを飾った下原騎手。それでも表彰台の可能性は残されており、「がんばるわ!」と気合いを入れ直した。

最終第3戦は地元の調教師が「こんな展開になるんや」と驚いた。先手を奪った村上忍騎手(岩手)に的場騎手がピッタリと馬体を併せてかなり縦長の隊列。さらに1~2コーナーから早めに的場騎手が競りかけてきた。しかし「息を入れることができました」と村上騎手とプリンシパルスターが4馬身差で完勝。的場騎手も2着に粘り、3馬身半差の3着には最低人気ながら「ポイントをいかに稼ぐかを考えて乗った」と川原騎手が差してきた。一方で、暫定1位で最終戦を迎えた真島騎手は最下位(12着)だった。

全3戦を終えて村上騎手が7回目の出場にして初優勝。しかし、騎手たちも誰が優勝か想像がつかなかったようで、「おめでとうございます」と声をかけられた村上騎手は、最終戦の勝利に対しての祝福だと思ったようで控えめな受け答え。その後、優勝の事実を告げられると目を丸くした。帰り支度を始めていた的場騎手も2位で「うそ?」と信じられない様子。3位の川原騎手は「運が良かったね」と満面の笑みを浮かべた。

出場騎手は12名中11名が昨年と同じメンバーだったが、名手は毎年、白熱したレースを見せる。来年はどんなメンバーでどんなドラマが生まれるだろう。

  • 取材・文
  • 大恵陽子
  • 写真
  • 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 村上忍 騎手(岩手)

最終戦はマークがキツかったですが、馬は窮屈な走りではなかったので、そのまま併走しました。馬が強かったです。(表彰台で)大先輩方の真ん中に立てて光栄です。なかなかこのレースで成績を出せなかったですが、決められて良かったですし、少しでも岩手競馬の名前を知っていただけたら嬉しいです。

総合2位 的場文男騎手(大井)

1戦目(4着)は直線で出られず、最終戦(2着)は前が止まりませんでした。2位は信じられませんが、それならば「最終戦で勝っていたら優勝かな?」と計算してしまいました。あと3日で63歳なので、今年が最後の出場かなと思っていましたが、2位に入ったのでもう少し精神力で一生懸命がんばります。

総合3位 川原正一騎手(兵庫)

このメンバーでレースに乗れることを楽しみにしていました。1戦目(2着)も最終戦(3着)もポイントを稼げるようにせこく乗りました。運が良くて、ラッキーでしたね。ゴールデンジョッキーカップは園田のお祭りのようなレース。今年もそれに参加できて、3位で満足しています。