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  • 第31回
  • かしわ記念 JpnⅠ

5.6 (振月) 船橋 1,600m

ライバルにリベンジ
 完成度で連覇達成

7連勝でフェブラリーステークスGⅠを制したインティが地方に初参戦。今回はタフな船橋コースが舞台だが、逃げ脚質からも息の入りやすい地方の馬場は合いそうで、今後どこまで飛躍できるかのバロメータになると見られた。

一方で、昨年の覇者ゴールドドリームは正念場を迎えた。3戦続けてGⅠ/JpnⅠで2着と苦杯をなめており、インティと初対戦だった前走でもクビ差の惜敗。地方の馬場には一日の長があるだけに、リベンジにかける陣営の思いは並々ならぬものがあったと想像できる。

そんな2頭による、絵に描いたような2強対決。単勝1倍台といえば、“断然の”や“圧倒的な”という枕詞とともに1番人気を指し示すものだが、今回はインティが1.6倍、ゴールドドリームが1.9倍という、珍しいオッズのつき方になった。これに復調を示すモーニン、地元船橋では初の実戦となるキタサンミカヅキなどが割って入ることができるか注目されたが……。

結果的には2頭による決着。順当とも、力通りともいえるが、そこへ至るプロセスには見応えがあった。

スタートで若干後手に回ったインティだったが、軽く促す程度で3番手につけ、そこで流れに乗った。このままリズム良く走れれば違ったはずだが、向正面半ばでオールブラッシュがロングスパートを敢行。これがレースを大きく動かした。インティと武豊騎手はオールブラッシュに抵抗。その勢いのまま、3コーナー過ぎで早くも先頭に立ち、リードを広げて直線に向いた。

それを射程に入れながら追走していたのがゴールドドリーム。残り200メートルでさらにギアを上げると一気に差を詰め、ゴール手前でインティを捉えた。

展開が味方した面もあるゴールドドリームだが、この日はスタートも決まり、終始インティを見ながらのレース。持ち前の末脚はそのままに、機動力を身につけた走りは“円熟”そのものだろう。「超強いです」というクリストフ・ルメール騎手の言葉は、ゴールドドリームが完成の域に達していることを示している。

インティにとっては苦しい展開だった。オールブラッシュが仕掛けたタイミングで仮に待機したとしたら、そのうしろからゴールドドリームが続けざまに上がってきて進路がなくなり、仕掛けが遅れる可能性があった。あの場面で突っ張ったからこそ、連対を確保できたと思われる。武騎手も「3コーナーの手前でオールブラッシュに来られたのは痛かった」と振り返ったが、「今回も手前を替えなかった」とも。さらなる高みを目指すには、こうした課題の克服が鍵となる。

また、東京スプリントJpnⅢを制し、勢いに乗っていたキタサンミカヅキは、しまいに追い上げたものの5着まで。ただ、距離が微妙に長く、ダート中距離のトップクラスがそろっていただけに、森泰斗騎手も納得の表情で「距離を意識して、大事に乗りすぎたのもあるけど、マイルはやっぱり長いかな。でも、その割には頑張ってくれたと思う」と話した。あくまでチャレンジャーとして臨んだ今回の地元JpnⅠ。それでも崩れなかったのは充実の表れで、ベストの距離に替われば本領を発揮してくれるだろう。

ゴールドドリーム、インティともに次走の予定は帝王賞JpnⅠ。今回は完成度の差が結果に表れた格好だが、インティも展開次第で逆転できるはず。これに昨年のJRA賞最優秀ダートホースのルヴァンスレーヴ、東京大賞典GⅠ馬のオメガパフュームも加われば、さながらダート最強馬決定戦。6月末の大井2000メートルで、また新たな歴史が刻まれることになる。

  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 国分智(いちかんぽ)

Comment

C.ルメール 騎手

連覇できて良かったです。きょうはいいスタートだったし、すぐにインティのうしろにつけることができました。その後もリラックスして走れて、いい脚を使ってくれました。イメージ通りに乗ることができましたね。マイルでいい切れを見せてくれるのがストロングポイント。次のレースも楽しみです。

平田修 調教師

以前のようにやんちゃすることもなく、落ち着いてパドックを回れていましたね。偶数枠で後入れだったから、スタートもスムーズに出てくれたし、すぐに好位置をとれました。インティが先に抜け出したけど、あの位置からなら届くかなと思いましたね。昨年と同じく、次走は帝王賞の予定です。