牝馬限定のダートグレードとして23回目を迎えたマリーンカップJpnⅢ。今年の出走馬は8頭と少頭数で、中央馬3頭に南関東勢5頭が立ち向かう図式。しかし、クラスターカップJpnⅢの覇者オウケンビリーヴが、発走直前に前扉から飛び出すアクシデントで、馬体に故障を発症(左後肢挫創)し競走除外。7頭立てとなった。
波乱の幕開けとなったが、御神本訓史騎手がエスコートした3番人気ラーゴブルーの沈着冷静な走りが光った。
クイーン賞JpnⅢの覇者アイアンテーラーが逃げるかたちで、2番手には全日本2歳優駿JpnⅠやスパーキングレディーカップJpnⅢなどの勝ち馬リエノテソーロ。中央馬2頭が先行する中、ラーゴブルーは内の3番手をすかさずキープ。3~4コーナーの勝負どころから、この3頭が後続を離しにかかった。
最後の直線に入ってもアイアンテーラーが快調に進めていたが、2番手に上がってきたラーゴブルーが外から一気にとらえにかかると、並ぶ間もなく抜き去った。ラーゴブルーは2着のアイアンテーラーに1馬身半差をつけ、勝ちタイムは1600メートル・1分40秒6(稍重)。2馬身半差で3着にリエノテソーロが入った。
「レースでは注文のつかない馬なので、ゲートが開いて流れを見ながらと思っていました。内のポケットに入れて折り合いもつけられたし、4コーナーを回るまで抜群の手応えだったので、この馬のレースはできたと思います。時計も速いし、またこの馬の成長力が垣間見られた一戦でした」(御神本騎手)。
御神本騎手はゴール後に大きくガッツポーズ。このマリーンカップJpnⅢを地方馬が制したのは、2007年のトーセンジョウオー以来12年ぶり。御神本騎手がダートグレードを制したのは、08年東京盃JpnⅡでのフジノウェーブとのコンビ以来だった。
ラーゴブルーは中央未勝利から南関東に移籍し、川崎・内田勝義厩舎の外厩馬(ミッドウェイファーム)としてレースを使われている。成長がゆっくりで体質の弱さがあったために、じっくりと仕上げられてきた。
昨年のしらさぎ賞と東京シンデレラマイルを勝利し、3つ目の重賞タイトルがダートグレード初制覇となった。体質はだいぶしっかりしてきたというがそれでもまだ弱さがあるために、前走後は早くからここを目標に、間隔を空けて仕上げてきたという。
最近の南関東では中央実績馬の転入が増えているが、ラーゴブルーのように中央未勝利から転入し、古巣の中央勢を打ち破る姿は、地方競馬の醍醐味でもあるだろう。
今後については未定とのことだったが、11月4日に浦和競馬場で実施されるJBCレディスクラシックJpnⅠでの戦いぶりも今から興味深い。これでもまだ途上であることは関わる人たちが話していることだが、完成形はどんな姿になっているのだろう。
Comment
御神本訓史 騎手
レース前にはいろいろアクシデントもありましたが、その中でもしっかりと結果を出してくれました。ダートグレード競走で地方の馬が勝つチャンスは少ないのですが、それをモノにできたことはすごくうれしいです。これからもラーゴブルーに大きな夢を叶えてもらえるように、一生懸命騎乗したいです。
内田勝義 調教師
予定では3、4番手くらいから、逃げた馬のうしろあたりについていけるようにと御神本君とも話しをしていたので、うまく運んでくれました。さらにパワーアップした印象ですね。兄弟たちもJRAで活躍している馬が多くて、血統もすばらしい馬なので、これからもっと力をつけていってくれると思います。