何より生で見たい、見せたいレースがばんえい記念。主催者側も、ばんえい記念の1レースだけスタンド前を開放する案も検討したが、新型コロナウイルスが収束しない現状ではそれも難しく無観客での開催となった。それでもスタンド前では陸上自衛隊によるファンファーレが鳴り響いてのスタートとなった。
馬場水分は1.4%だが、晴れて風が強く乾いた重めの馬場。特に前半のレースではゴール前で止まってしまう馬が目立つ“バテ合い”という感じのレースが続いていた。
第1障害では、31連勝中のホクショウマサル、条件クラスから挑戦のカブトゴールドがやや苦戦。中間は各馬3、4完歩ごとに脚を止める見るからに重そうな馬場で、オレノココロ、センゴクエース、コウシュハウンカイという重賞実績馬がレースを引っ張った。
第2障害。最初に仕掛けたのはオレノココロだが、じっくり溜めたコウシュハウンカイがひと腰で天板に前脚を掛けた。ヒザを折ったがすぐに立て直して先頭でクリア。他はみな障害に苦戦し、2番手のアアモンドグンシン、さらにオレノココロがようやく障害を越えた時、コウシュハウンカイはすでに残り30メートルを過ぎていた。
そのままコウシュハウンカイが独走かに思えたが、残り10メートル、アアモンドグンシンがじわじわと差を詰め並びかけようかというところで、しかしヒザを着いて立て直せず。続いてホクショウマサルが障害4番手から迫り、この大一番でさらに連勝記録を伸ばすかという見せ場を作った。
すると一度止まって息を入れたオレノココロがぐいぐいと伸びて先頭へ。さらに障害で4度もヒザを折って絶望的と思われたセンゴクエースが一度も止まることなく一気に追い込んできた。
それでもオレノココロが振り切っての勝利。連覇を狙ったセンゴクエースはわずか1秒9差。ホクショウマサルは3着に健闘。5年連続ばんえい記念出走のコウシュハウンカイは宿願成就せず4着。5歳馬では2002年のシンエイキンカイ(3着)以来18年ぶりの出走となったアアモンドグンシンは倒れて起き上がれず競走中止。ソリを外されると歩いて厩舎に戻ったので大事はなかったようだ。
有力5頭がいずれも勝ったかと思わせる場面のある見ごたえのあるばんえい記念だった。
ゴール前で有力馬が止まっての争いは重い馬場もあったが、その流れを演出したのはオレノココロの鈴木恵介騎手だ。「去年のように流れがゆったりだと降りてから止まらないレースになってしまうので、前の馬が止まるように速めのペースを自分でつくりました。最後は自分が止まるか止まらないか、一杯でした」。一方、わずかに届かなかったセンゴクエースは、「降りてからはけっこう楽に引っ張っていたので、(ゴール前は)オレノココロ、止まれ止まれと思っていました。障害で手間取ったぶんです」と菊池一樹騎手。
勝ったオレノココロは、ばんえい記念3勝目。重賞勝利は自身のもつ最多勝記録を更新する24勝目となった。10歳となっての来シーズンは、体調を見てレース間隔を空けながら使っていくとのこと。センゴクエースも管理する槻舘重人調教師にはばんえい記念4連覇となった。
なお無観客開催にもかかわらず、ばんえい記念1レースの売上8623万100円は帯広単独開催後では最高額。1日の売上2億7157万3300円も昨年(2億4344万1900円)を上回った。
Comment
鈴木恵介 騎手
センゴクエースにはもう負けるわけにはいかないと思っていたので、雪辱を果たせてホッとしています。暑さに弱くて、年もとって、回復するのに時間がかかりました。寒くなってだんだん上向いてきて、9割くらいの状態には戻っていたと思います。ゴールするまで勝ったかはわかりませんでした。
槻舘重人 調教師
夏バテが長引いたのであまり無理をしないで体調を見ながらやってきました。帯広記念のころからだいぶ調子は戻ってきて、今日は万全だったと思います。思った以上に第2障害で苦戦して、時計もかかって、馬には大変だったと思いますが、オレノココロには馬場が重いのが有利だったと思います。