国内の競馬は無観客での開催が続いているが、この日の名古屋競馬場は例年の名古屋大賞典JpnⅢに比べると5倍以上の報道陣が集まった。もちろん大多数の目的は、同時に開催されているレディスヴィクトリーラウンドの最終戦なのだが、名古屋大賞典JpnⅢのゴール前にもたくさんのカメラマンが並んだ。
しかし単勝人気はJRA5頭のうち4頭に集中するという分布で、馬券的な興趣はいまひとつ。4番人気のロードゴラッソでも4.1倍で、5番人気のビルジキールは27.5倍と離れたが、それ以降の7頭はすべて、単勝オッズが3ケタになった。
それでもゲートが開いて先手を主張したのは、地元愛知所属で最低人気のモズオラクル。「JRAの馬に行かれたらあきらめるという感じでいましたが、自分のペースで走れました」(池田敏樹騎手)という逃げは、ダートグレードにしては遅い流れ。このレースはJRA馬が先行集団を形成し、その後ろを大きく離れて地方馬が追走する形になることが多いが、今年はモズオラクルがペースメーカーになったおかげで、全体が10馬身程度という隊列になった。
モズオラクルの直後にはフィードバックがつけ、ダートグレード連勝を狙うナムラカメタローが3番手。ロードゴラッソとビルジキールもそれほど差がなく続いたが、アングライフェンはスタート直後の行き脚がいまひとつで、中団あたりからの競馬になった。
モズオラクルの逃げはしばらく続いたが、さすがに2周目の向正面に入ったところでJRA勢が動き始めた。まずはフィードバックが先頭に代わり、続いてナムラカメタローも進出を開始。さらにアングライフェンが一気に上昇して、前を走る2頭の外につけた。
その動きをうまく利用したのが、ロードゴラッソの川田将雅騎手。追い比べを開始した馬たちを前に見ながら、川田騎手はゴーサインのタイミングを計った。
その展開はいかにも有利。ロードゴラッソが計時したラスト600メートルの推定タイムは36秒4で、2着のアングライフェン、3着のナムラカメタロー、4着のフィードバック、5着のビルジキールがいずれも37秒台だから、ロードゴラッソの伸び脚がきわだつ結果になった。
ロードゴラッソは昨年9月のシリウスステークスGⅢで重賞勝利を飾っているが、その後は善戦まで。前走の佐賀記念JpnⅢも2着だったが、勝ったナムラカメタローより負担重量が2キロ重かった。レース後に「自信を持って乗りました」と川田騎手が話したのは、そのあたりもあったのだろう。
2着のアングライフェンは、ミルコ・デムーロ騎手が「最後までバテてはいないんですが」と、残念そうな表情。3着のナムラカメタローは、石川裕紀人騎手が「ヨーイドンの形になってしまったので」と、一言だけ残した。
地元馬7頭のなかで最先着を果たしたのはマコトネネキリマル。JRA未勝利から愛知に移って10戦連続連対中だったが、ダートグレード初挑戦でその記録は途切れた。それでも手綱を取った岡部誠騎手は「5着とはそれほど差がなかったですし、力をつけていますよ。強い相手と走った経験が、この先に生きてくると思います」と笑顔を見せた。
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川田将雅 騎手
行きたい馬をいかせて自分のリズムでと思っていましたが、2周目の向正面から行く馬がいてペースが流れてくれていい形になりましたので、最後の直線で届くと思いました。佐賀でも強い内容でしっかりと走って、名古屋でも走ってくれたので、これからも安定した成績を残してくれると思います。
藤岡健一 調教師
前半がスローでポケットに入るような位置取りだったので心配したのですが、向正面からほかの馬が早めに動いてくれたので、そこから先は楽に走れたのではないでしょうか。このあとは馬の様子を見てからですが、阪神競馬場で勝ったことがあるのでアンタレスステークスを目指すことになるかなと思います。