2019年8月24・25日
ワールドオールスタージョッキーズ
JRA札幌競馬場
リポート動画
全国リーディング吉村騎手が世界に挑む
顕著な活躍で62歳の的場騎手も出場
夏の札幌競馬場が舞台のワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)も迎えて5年目。その1年目こそ地方代表騎手は、スーパージョッキーズトライアル(SJT、当時)優勝者とは別に北海道所属騎手枠があり地方競馬から2名が出場したが、その後は地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ(旧SJT)優勝者のみが出場となっていた。しかし今回、ジョッキーズチャンピオンシップで優勝した吉村智洋騎手(兵庫)ともうひとり、的場文男騎手(大井)が“顕著な活躍”の枠で選出された。JRA騎手では今回、“顕著な活躍”枠で武豊騎手、藤田菜七子騎手が選出されており、地方騎手にもこの枠が適用されるとはちょっと驚きだった。
前日に札幌市内のホテルで行われたウェルカムセレモニーでは、武騎手、的場騎手が一緒に囲み取材に応じた。「ここ数年は最年長として出場していたんですけど、今年は大先輩がいるのでヤングジョッキーになったつもりでがんばりたい」と武騎手。すると的場騎手は、「これが最後のJRAでの騎乗になると思うので、46年間乗ってきた技術を出したいと思う」と意気込みを語った。
的場騎手はJRA最年長騎乗記録
迎えた初日。吉村騎手は5鞍のエキストラ騎乗の機会を得た。しかしいずれも能力的に厳しい感じの評価の馬ばかりで、ゲートに難があり出遅れた馬もいて8着が最高という成績。やや意気消沈という様子でWASJ第1戦に向かった。一方、初日にエキストラ騎乗がなかった的場騎手は、第1戦が今回の初騎乗となった。
その第1戦は芝1200メートル戦。A評価の馬に騎乗した的場騎手がダッシュ良く飛び出し逃げる構えを見せたが、気合を入れて外枠から機先を制したのが、なんと吉村騎手だった。
奇しくも地方騎手同士の先行争いとなり、いかにもハイペース。4コーナーで的場騎手の手応えが怪しくなり、直線を向いて単独先頭だった吉村騎手も後続勢に飲み込まれた。
ゴール前、クビ、半馬身、クビという4頭の接戦を制したのはクリストフ・ルメール騎手(JRA)。2着は武騎手だった。吉村騎手はなんとか踏ん張って6着、的場騎手は13着だった。
「吉村騎手の馬に外から行かれたからねぇ、きつかった」と的場騎手。一方の吉村騎手は「ハナを切るとしぶといタイプで行ききってくれ、という指示だったんで、行ききりました。外枠から脚を使ったぶん、最後は脚が上がってしまいました」と。地元での競馬なら臨機応変な対応もできただろうが、慣れない環境で抽選で選ばれた馬でということになると、たしかに調教師の指示に従うのが最善の策ということになる。
芝2000メートルの第2戦は一転スローペースとなって、先行2頭の追い比べ。ぴたりと外の2番手につけたカリス・ティータン騎手(香港)が、主導権を握った戸崎圭太騎手(JRA)をとらえただけという決着。
スタート後、後方2番手だった吉村騎手はラチ沿いを回って徐々に位置取りを上げ、直線半ばでは4着もあるかという態勢だったが、うしろから来た馬に交わされて6着。的場騎手は好スタートを切ったものの、徐々に位置取りを下げた。この日の馬の状態だったのか、そもそもの能力面なのか、3コーナーあたりで馬群から置かれ、第1戦に続いて13着だった。
初日を終え、残念ながら地方騎手はともに掲示板が一度もなかったが、6着、6着という結果の吉村騎手は、「エキストラ騎乗よりはだいぶ競馬になったと思うので、明日につなげることができます。みんなそれぞれトップジョッキーなので、どこかでミスするのを探さないと自分にチャンスは来ない」と前向きな感想を語っていた。
というのも、第1戦を制したルメール騎手、第2戦を制したティータン騎手は、ともにもうひとつのレースが着外の1ポイントのみ。暫定1位が4着、2着の戸崎騎手という混戦で、当然吉村騎手にも2日目の成績次第では表彰台が狙える状況だった。
一方、的場騎手はこの日“JRA最年長騎乗記録更新”ということが盛んに言われたが、自身は「騎乗記録じゃなくて、最年長勝利記録をやりたいよね」(従来の記録は岡部幸雄騎手の56歳2カ月24日)という期待を持って2日目に臨むこととなった。
吉村騎手は最終戦で見せ場
2日目、的場騎手は2鞍のエキストラ騎乗を得た。用意したのは栗東の矢作芳人調教師。同師の父(矢作和人元調教師)はかつて大井の名調教師で、当然的場騎手とのつながりも深い。第1レースの2歳未勝利戦(芝1800メートル)は7番人気で6着。第3レースの3歳未勝利戦(芝2600メートル)は5番人気で9着。的場騎手は、「地方では7200勝以上していても、中央ではなかなか勝てないねぇ」と、なかなか思い通りにはいかない様子だった。
ちなみに的場騎手は、1992年のブリーダーズゴールドカップ(ハシルショウグン・8着)や、2007年のスーパージョッキーズズトライアル(6・7着)など、道営開催の札幌競馬場では騎乗経験があるが、中央開催は初めて。つまり札幌競馬場の芝コースは、初日の第1戦が初めての騎乗だった。
迎えた第3戦はダート1700メートル。外目の11番枠から的場騎手がハナを取ろうかという勢いで2番手につけたものの、直線脚色が一杯になって8着。A評価の馬に騎乗した吉村騎手は中団うしろから徐々に位置取りを上げたものの、直線伸びそうで伸びず7着だった。
勝ったのはフランスの女性、ミカエル・ミシェル騎手。口取り写真の撮影と、“JRA初勝利”の表彰式は、この2日間を通じて一番の歓声だった。
芝1800メートルの第4戦は、1番枠から吉村騎手が逃げた。「スタートもよかったし、二の脚もついたので、これなら行ってしまおうと思いました。けっこうペースは落とせたと思います」(吉村騎手)というとおりのスローペース。そして直線半ばでも先頭。これは、と思わせたが、最後は6番人気の川田将雅騎手(JRA)が一気に抜き去って勝利。2馬身離れての2着争いが、アタマ、クビ差という3頭の接戦で、吉村騎手は4着だった。
的場騎手が痛恨だったのは、この4戦目だったという。ゲートが開いた瞬間、馬が立ち上がるような格好で大きく出遅れ、最後方からとなった。「スタートが決まれば着はあったと思うんですよ。ちょっと不甲斐ない騎乗で、悔しいですね」。的場騎手は12着という結果でWASJを終えた。
世界への挑戦はまた来年
パドックで行われた総合表彰式で的場騎手は、藤田騎手やミシェル騎手以上に大きな歓声でファンに迎えられた。
総合成績では、3、3、5、1着と、すべて掲示板内で最終戦を制した川田騎手が70ポイントを獲得して逆転優勝。58ポイントでルメール騎手が2位、53ポイントでティータン騎手、ミシェル騎手が3位タイ。勝利を挙げた4名が表彰台に立った。またチーム戦では、WAS選抜(外国・地方騎手)の202ポイントに対してJRA選抜が246ポイントで勝利となった。
6、6、7、4着(34ポイント)で7位だった吉村騎手は、「(力を出せたのは)30パーセントくらいじゃないですか。ぜんぜんうまいこといかなかったんで、それだけ出場しているみなさんがうまいということですね。それでも2日間楽しめて、いい勉強になりました。もっと上手になって、また来年来たいと思います」と話して札幌競馬場を後にした。
13、13、8、12着(7ポイント)で13位タイだった的場騎手は、「地方競馬代表として来たんですけど、大井で乗ってるように思うような騎乗ができなかったですね。2日間、このトシでもほんとうに楽しめました。また大井に戻って頑張りたいと思います」と、休む間もないまま翌日から騎乗する地元大井開催ではファンを楽しませてくれることだろう。