1. Presented by National Association of Racing
  2. 地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロン
  3. ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。

クローズアップ

当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の
気になる話題を写真と共にご紹介致します。

2019年6月14日(金)

ハッピーグリン(北海道)の馬主
会田裕一氏へインタビュー

香港・チャンピオンズ&チャターカップ挑戦について

【川﨑】チャンピオンズ&チャターカップは9頭立ての8着という結果でした。率直なご感想を。

【会田】残念でした。これが僅差で負けたとかであれば悔しいという気持ちにもなると思いますが、勝ち馬から17馬身くらいの差がありましたから、完敗と認めざるをえません。馬場状態とか位置取りとか展開とかいろいろ言われてますけど、これだけ負けたら完敗かなというのが正直なところです。

【川﨑】大外9番枠、枠順が決まっていかがでしたか。

【会田】正直、内枠のほうがいいと思っていました。内枠のほうが有利みたいですし、当時の馬場も内のほうが伸びると聞いていたので。でも外になったらなったで仕方ないとも思いました。

【川﨑】スタートしてすぐに内に行きました。あれでうまく落ち着いたのかなと思ったのですが。

【会田】3頭分、外々を回らざるをえなくなって。ただハッピーグリンは、今でこそ気性が落ち着いてジャパンカップのように内で我慢できるようになりましたが、もともと外枠歓迎なので、外のほうがリラックスして進めるのかなという思いもありました。

【川﨑】4コーナーまではいいポジション取りで、優勝した馬と一緒に上がっていくのかなと思って見ていましたが。

【会田】その4コーナーまでで力尽きてしまったのは、やっぱり馬場が合わなかったということはあると思います。

【川﨑】脚質的には後ろからのほうがいいですか。

【会田】先行もできなくはないですが、基本的に差し馬なので。勝ちタイムの2分26秒00は、過去10年で一番速いタイムなんです。雨で緩くなった馬場でそういうタイムが出るというのは、どうなんでしょう。

【川﨑】本来の力を出し切れていない、まだまだ潜在能力はあると思いますが、今後また機会があればどういうところに気をつけて海外遠征をしたらいいと思いますか。

【会田】今回、検疫で十分な施設を使わせてもらえなかったというのも敗因のひとつかと思います。あまり時間がなかったということもありますが、もう少し準備期間をとって検疫施設なども選定できたらと思いました。
今回、帰国しての着地検疫は地方競馬教養センターを使わせてもらいましたが、(教養センターは)輸出の際の申請がなく、出国検疫はできないとのことでした。大井の小林分場や大手の牧場、JRAの白井の競馬学校にも確認をしてみましたが、条件やルール等があって難しいという話でした。
結局、出国検疫には栃木の鍋掛牧場さんを使わせてもらうことになりました。鍋掛牧場さんには広いコースもあるようなのですが、今は使うことができず、検疫中の1週間は1周400mのトラックと角馬場で乗るくらいしかできなかったので、そういう面も結果に影響したかなと思います。

【川﨑】出国と帰国の検疫を同時期に行うためには、基本的に離れた場所にしないといけないんです。地方競馬教養センターの検疫は入国で許可をとっているので、仮に出国でも使用する場合は、出国検疫の申請をする必要がありますが、その手続きについては時間的に間に合わないという事情もありました。また、もし両方を同時期にやるなら離れた場所に2カ所それぞれに検疫施設を作る必要がありますが、それは今後の課題でもあります。
馬の輸送についてはいかがでしたか。

【会田】門別から東京や中山に20時間くらいかけての輸送を何度も経験しているので、輸送はまったく問題ありませんでした。東京や中山のときでも環境が変わって1~2日飼い食いが落ちたりしていましたが、今回もその程度で、輸送は問題なくこなせたと思います。

【川﨑】香港の競馬場で日本と違うと思ったところはありますか。

【会田】馬主へのホスピタリティの話になりますが、香港は本来18歳未満の子供は競馬場には立入禁止なんです。ただ馬主席は事前に申請しておけば、子供を連れていくことができます。ただ馬券売場のあるところなどは通ることができず、馬主席まで行くにはかなり遠回りさせられました。
香港の馬主席には馬主の子供が遊ぶための専用の施設がありました。テレビゲームもあるし、工作をするところでは専属の女性スタッフが一緒に工作をしてくれたり、クッキング教室もあって、クッキーに絵を付けたりとか、そういうサービスがありました。これすごいなと思ってちょっと感動しました。

【川﨑】馬やレースのことで日本の競馬とは何か違いはありましたか。

【会田】発表される馬体重の計量がレースの2日前だというのは初めて知りました。
当初は4月28日のクイーンエリザベスⅡ世カップに申し込んでいましたが、そこには選ばれませんでした。時間もないし分からないことだらけだったので、海外遠征に慣れているレーシングマネージャーの田中敬太さんに依頼して、手続きをしてもらったら一気に事が進みました。輸送にも帯同してもらって、通訳もしてもらってすごく助かりました。

地方競馬の馬主になるまで

【川﨑】ところで、馬主になろうと思ったきっかけを伺いたいのですが。

【会田】東京競馬場の近くに住んでいた親戚のおじさんに、子供の頃に連れて行ってもらって興味を持ちました。内馬場の子供用の施設で遊んだり、花火大会も毎年行っていました。競馬を覚えたのは小学校6年から中学校1年にかけて、ゲームのダービースタリオンが流行ったときです。それでおじさんと競馬の話をしたりとか、テレビで見るようになったのは、フジキセキとかサンデーサイレンス産駒の最初の世代の頃です。
中学の頃には競馬オタクになって、最初はジョッキーになりたかったんです。それで馬術部のある高校に入ったんですが、体験入部だけでくじけてやめました(笑)。朝早く起きて馬に餌をあげたりするのが朝が弱い自分には向いてなかったんですね。当時はその程度の思いだったんですが、なんとなく馬主になりたいという思いはありました。

【川﨑】競馬ファンには、大きく分けて馬券を購入するのが好きな人と、馬を見るのが好きな人と2種類あると言われていますが。

【会田】ぼくはロマン派ですね。ただ、ゲームで競馬を覚えて、ダビスタブームが落ち着いたら競馬から気持ちが離れて、10年近くブランクがありました。
久しぶりに競馬場に行ったのは、2007年のウオッカが勝った日本ダービーです。当時自分の会社に競馬の好きな従業員がいて、競馬の話はよくしていました。でも大人になってからは競馬場に一度も行ったことなかったんです。それで日本ダービーを見に行こうということになって、安倍首相と皇太子様もいらっしゃっていて、そういう中で1頭だけいた牝馬が勝って、盛り上がって、自分の中で競馬熱が一気に戻ってきました。それからですね、競馬場にも行くようになったし、馬産地にも足を運んだり。

【川﨑】競馬以外に他の公営競技などには興味はありますか。

【会田】ないですね。競艇は見に行ったことがありますけど。中央競馬でいうと、ウオッカを見に行っていた当時、交際していた女性がぼくが競馬好きということは知らないはずなのに「トゥインクルレースに行きたい」って言ったんです。そういうことが彼女の口から出るということは、デートスポットの1つとして大井競馬場が認識されているんだなと思ってびっくりしました。「実はぼく競馬わかるよ」って言って、東京ダービーを見に行きました。アンパサンドが勝ったときですね。それから地方競馬にもハマりました。その年は、ボンネビルレコードが勝った帝王賞も見に行きました。

【川﨑】実際に馬主になったのはいつ頃ですか。

【会田】それから7年後、2014年です。

【川﨑】馬主になって、実際に登録証が届いてどんな感じでしたか。

【会田】登録証が届く前にセレクトセールで馬を買ってしまいました。大丈夫かなとは思ってたんですが、無事に登録されてよかったです。ぼくのときはタイミングがよかったので、申請から3カ月弱くらいでした。

【川﨑】馬主になって、いいこと、悪いこと、それぞれお聞かせ下さい。

【会田】まず悪かったことから話すと、僕は馬主にすごい憧れていて、中央でも地方でも馬主はすごいというイメージがあったんです。実際にこの世界に入ってみると、中央の馬主と地方の馬主を差別する生産者がいて、ちょっとがっかりしました。
海外のGⅠレースを見に行ったときに現地で会った生産者と親しくなって、「帰ったら日高の名産を送るから」って親しくしていただいたんですが、あとから地方競馬の馬主だということに気づいたら急に冷たくなって。牧場まで馬を見に行っても、やっぱりそういう態度でした。

【川﨑】生産者の皆さんが総じて同じだとは思いませんが、ちょっと悲しくなる話ですよね。では、地方競馬で馬を持つことのメリットはどうでしょうか。

【会田】やはり預託料が安いことがメリットでしょう。馬主ってたぶん9割くらいの人が損してると思うんです。だからやっぱり好きじゃないと続けられないと思うんです。そういう状況で、預託料がリーズナブルで、月に2走すれば出走手当で預託料のかなりの割合をまかなえる、地方競馬にはそういう競馬場が今は多いと思います。海外を見渡してみても、出走手当がここまで厚い国はなかなかないと思うんです。馬を維持するのにそれほど持ち出しがないというのはメリットだと思います。

【川﨑】地方競馬では多くの競馬場から自分に合った競馬場を選べるのが魅力的だと言う馬主さんもいらっしゃいますね。また預託料だとか主催者ごとにそれぞれ利点や特徴があると思います。会田さんはこれまで地方の競馬場ではどちらに行かれましたか。

【会田】行ったことがない競馬場はないです。全部行きました。馬を預けたことがない主催者も、金沢とばんえいだけです。

【川﨑】いろいろお預けになっていただきありがとうございます。でもそんなにたくさんの競走馬をお預けになっていただいていたなんて正直驚きました。

【会田】気に入っている競馬場では、岩手競馬はもっと上にいくポテンシャルがあると思うんです。水沢と盛岡があって、右回りと左回り、ダートと芝もある。そんな主催者はほかにないですよね。岩手競馬はそういうポテンシャルを活かしきれてないと思うんです。馬主にしてみれば、右回り左回り、ダートと芝、輸送の良し悪しなど馬の適性を見極めるのにも利用する事が出来ますし、岩手から強い馬を作れればおもしろいと思うんです。

【川﨑】中央と地方では調教師や厩務員などスタッフにも違いがあると思いますが、会田さんの目から見て感じたことはありますか。

【会田】地方の厩務員さんがすごい。人手不足という中でやっていて、みなさん大変だと思います。地方競馬で働くことがもっと魅力あるものにならないといけないと思います。将来の地方競馬のためにも必要じゃないかと思うんです。賞金だけでなく、そこで働く人の私生活を充実させて、魅力のある仕事にしていかないといけないと考えています。

【川﨑】(厩務員の人手不足について)主催者はもとより協会でも出来るところからあの手この手で今も取り組んでいるのですが、以前よりも競馬場が少なくなって、一般の方が実際に競馬を見て接する機会が少なくなってきています。就労環境が厳しく、賃金がよくても、条件に合わないということで定着率も低いのが実情です。各主催者や厩舎関係者もできるだけ生活条件を改善するようにはしているのですが。
ところで、外国人の厩務員が増えてきていることに対しては何か、ご意見をお持ちですか。

【会田】東京あたりではコンビニの店員さんで日本人を見ることのほうが少ないので、それは悪いことではないと思います。ただ厩務員の仕事環境をもっと魅力あるものにしていかないといけないなと思っています。たとえば最近では引退馬のためのクラウドファンディングのようなものがありますけど、地方競馬の厩務員の支援するシステムがあれば、それに投資しますよ。

【川﨑】地方競馬の調教師についてはどう思われますか。

【会田】地方の調教師さんは馬のことをすごく知ってる方が多いですし、中央の調教師とは仕事が違ってきているんじゃないかと思うことがあります。中央では外厩で仕上げるようなことがめずらしくなくなって、厩舎では直前の最終調整だけとか。初期調教からやることもある地方の調教師は、中央に負けないくらいの技量はあると思っています。

ハッピーグリンとの出会いからこれまで

【川﨑】ハッピーグリンの出会いはどういう経緯でしたか。

【会田】セレクトセールの当歳で買いました。セレクトセールは、北海道市場のサマーセールやオータムセールと客層が違って、低価格帯の馬を買いに来る人は少ないので、特に上場番号が後ろのほうになると残っている購買者も少なくなって、そこが狙い目だと思っています。初めて持った馬もセレクトセールで買って、ハッピーグリンは2頭目になります。本当は他の馬がほしかったのですが、それは競り負けて、上場番号がその3つか4つあとで、もう1頭候補にしていたのがハッピーグリンでした。

【川﨑】どなたか購入にあたって、アドバイスはありましたか。

【会田】僕は自分で探すのをポリシーにしています。人に選ばせて走らなかったら後悔するので、自分で見つけました。まず見た目がいいなと思いましたね。左後一白で、栗毛のきれいな馬体でオルフェーヴルみたいだなと。歩かせてみると関節の伸びもよかったし。当歳なので何ともいえないんですけど、セリの時点ではそれほど見栄えがしなかったんです。それでも(生産牧場の)社台ファームの人に聞いたら、生まれたときの体重が70キロ近くあって、体重面で苦労することはないということを言っていて、その言葉を信じて決めました。

【川﨑】馬名はどのようなことから。

【会田】「うれしそうな笑み」という意味なんですよ。父のローエングリンのスペルを分割して調べたら、「grin」には歯を見せてにっこり笑うという意味があるみたいで、辞書には「with a happy grin」という熟語が書いてあって、これはいいなと思いました。田中淳司厩舎でデビューして活躍したハッピースプリントにもあやかって。

【川﨑】田中淳司調教師に預託したきっかけは。

【会田】まずハッピースプリントのファンだったので。まだ馬主資格をとる前でしたが、2013年の全日本2歳優駿も見に行っていました。正直、血統的にはぱっとしない馬で、それでもこんなに強い馬を育てることができるんだと思いました。ちょうどそのころグリーンチャンネルでホッカイドウ競馬を取り上げたドキュメントで田中淳司厩舎に密着する番組をやっていて、意識の高い先生だなと思って、ここに馬を預けてみたいと思い、知り合いに紹介してもらいました。

【川﨑】田中調教師は、ハッピーグリンを初めて見て何かコメントしていましたか。

【会田】正直、期待してなかったと思います。1歳の7月くらいにお願いしました。そのときは社台のブルーグラスファームという門別競馬場から近いところにいたと思うんですが、1度も見に行ってくれなかったです(笑)。

【川﨑】いつごろから評価が変わったんでしょうか。

【会田】デビュー戦のときもそこまで期待してなかったと思うんです。デビューしたあとでしょうね、たぶん。

【川﨑】フレッシュチャレンジは1番人気で差し切って3馬身差の勝利でした。

【会田】そのときは地元テレビの取材が来ていました。ハッピーグリンを担当していた、当時19歳の厩務員に密着するみたいな企画で、それがたまたまデビュー戦でした。1番人気にもなっていたし、これは負けられないと思っていたら、見事に快勝してくれました。

【川﨑】その後、芝で活躍しましたが、最初から芝でというのはあったんでしょうか。

【会田】芝向きの血統で、芝向きの走りをすると先生は言っていました。門別のターフチャレンジを勝って、まず札幌のコスモス賞では、のちにGⅠを勝つステルヴィオをあわや負かせたかもしれないという3着でした。そのあと札幌芝1200メートルのすずらん賞は、先生があまり乗り気ではなかったんですが、それでも3着に来てくれて。1800、1200という異なる距離で中央馬相手に3着、3着だったので、芝適性を確信しました。ただ腰に弱いところがあるので、たとえば2歳で朝日杯フューチュリティステークスとかホープフルステークスなどのGⅠに挑戦するとなると、トライアルを使って上位に入らないといけない。年内に2度、本州に輸送するのは厳しいかなと先生と話をして、楽しみは来年(3歳)にして、年内はダートで全日本2歳優駿を目指しましょうということになりました。

【川﨑】芝でということになるとJRAに転厩という話にはなりませんでしたか。

【会田】まず僕がJRAの資格をとったのが、そのあと去年(2018年)の11月だったので、その時点では無理でした。北海道の2歳戦でそれなりの成績を残した馬であれば、普通なら中央や南関東に移籍すると思うんですが、中央の馬を負かすにはやっぱり坂路での追い切りが必要だという考えがあって、それなら門別には坂路があります。冬も門別に在籍したまま中央に挑戦した馬は今までいなかったと思うんです。コスモバルクがいましたけど、コスモバルクは外厩でした。道営所属のまま中央挑戦というのを試してみたかったんです。

【川﨑】やはり地方馬に頑張ってほしいという気持ちはありますか。

【会田】たぶんファンのみなさんもそうなんじゃないでしょうか。強い地方馬が出てくると競馬が盛り上がる。ハイセイコーとかオグリキャップとか、競馬ブームの火付け役にもなりましたし。良血馬が大きいレースを勝つより、地方から出てきた馬が勝つほうが面白いと思うので。

強化指定馬制度、国際競走出走奨励金事業について

【川﨑】近年地方馬は大きなレースで中央になかなか勝てていません。誰でも知っている活躍した馬はほとんど20年、30年前の馬になっています。私どもは地方から強い馬が出てくることを目指して、「強化指定馬制度」を設けて取り組んでいますが、ハッピーグリンの海外挑戦にあたっては、こちらの制度も利用していただきました。地方競馬のこうした取り組みに対して要望などありますか。

【会田】まず中央と地方では入厩する馬の質が違うと思います。大井(の馬主会)では1000万円以上の馬を(セリで)買うと500万円の補助金を出すとか、名古屋でも700万円以上で300万円とか、各地でいい馬を入れてもらうような取り組みをしてると思うんですが、調教施設が中央に比べると劣るということはあると思います。ですので、外部の調教施設を使うための補助金をいただけるのはありがたいですね。

【川﨑】できることから着実にということで、今年度は国際競走出走奨励金を設け、昨年来の強化指定馬制度と併せて、地方からも強い馬が出て、さらに飛躍できるようにと予算を確保しました。ハッピーグリンは、その国際競走出走奨励金の制度ができたことも、海外に挑戦するきっかけになったという話をお聞きしましたが。

【会田】日経賞で4着に好走して、中長距離に適性を見せはじめました。ただ4歳ではそのあと中央で使えそうな1800m以上のレースが宝塚記念までありませんでした。そうなるといよいよ中央転厩も視野にいれないといけないかなと考えていました。その矢先に奨励金のことが発表(4月3日)されて、それですぐに問い合わせました。香港遠征はそれがかなり後押しになりましたし、もしそれがなかったら中央に移籍していたかもしれません。

【川﨑】それを聞いて、担当としては奨励金を設けてよかったと思います。

【会田】今回の香港遠征では、招待ではなく自費での遠征なので1200万から1300万円くらいかかっています。海外のGⅠになると、登録料だけで数百万円になります。500万円奨励金を出していただいて、あとクラウドファンディングでは280万円ほど集まりまして、実際には手数料を引くと200万円台前半ですが。香港は6着以内に入らないと賞金も出走手当も出ないので、結局5~600万円は自己負担になりました。

【川﨑】オリンピックのように強化選手を育成して、早い時期に強い馬づくりへの環境を整えたいと考えたのが、強化指定馬の制度です。海外遠征に関しては、勝ったときに報奨金のようなことも考えたのですが、その前に地方からも海外に挑戦してみようと意欲のある馬主さんが、海外のパートⅠの重賞などに出走する場合に補助金を出しましょうということで、国際競走出走奨励金が生まれました。
ところで、クラウドファンディングをやってみて280万円集まったということに対してはいかがでしょう。

【会田】馬券とは違った形で応援したいとファンの皆様からの提案だったのですが、280万円も集まったことにはびっくりしました。準備期間も足りないなか、300人以上のファンの方がハッピーグリンを応援してくれました。馬券があれば直接買って応援もできますが、それとは違う新しいモデルケースになったのではないかと思います。
当初は批判とかもあるかなと思ったのですが、それよりも圧倒的に応援のほうが多くて、これはやってよかったと思っています。

【川﨑】海外馬券の発売は、競馬法上は地方馬も対象になっているんですが、但し、実施規則などで発売環境を整え、国に申請してレースを特定するなどの手続きを経て実現することになりますが、現実的には馬券発売のシステムはJRAさんに委託する方法なども検討しなければなりません。単に馬券発売だけでなく現地の情報も出さないといけないので、そこのところをどうするか、今後は様々な課題を整理して海外馬券の発売にも対応していかなければいけないとは思っています。

ハッピーグリンの今後について

【川﨑】ハッピーグリンの今後の予定は。

【会田】着地検疫のあと3週間は隔離する決まりがあるようなので、門別競馬場の近くの牧場で3週間過ごしてから厩舎に戻します。次走は札幌日経オープン(8月3日)を予定しています。

【川﨑】地方でもハッピーグリンの勇姿を見たいというファンの方もいると思います。地方での出走予定はありますか。

【会田】チャンピオンズ&チャターカップにもし選出されなかったら、実は赤レンガ記念も候補のひとつだったんです。やはり芝向きの馬なので、札幌日経オープンのあとは盛岡のOROカップ連覇を目指すこともあると思います。年末は有馬記念に向かうにしても、去年のように除外の可能性も考えて、東京大賞典に登録しておこうとも考えています。久々にダートを試してみたいということもあるので。

【川﨑】ハッピーグリンには、馬主としてどこまで行って欲しいと考えていますか。

【会田】中央のGⅡで好勝負してることを考えると、さすがに中央のGⅠとなると厳しいと思いますが、GⅢとかGⅡなら勝つ実力はあると思っています。そういう意味でも今回のチャンピオンズ&チャターカップは残念な結果でした。ただオーストラリアのGⅠですとか、そういうところなら勝負になると思います。ただしばらくは地に足をつけたローテーションで、力をつけて、また海外の大レースや中央の重賞にも挑戦できたらと思っています。

【川﨑】ハッピーグリンの今後の活躍を我々も期待しております。もしまたハッピーグリンに続く海外挑戦という競走馬についてお考えがあれば、お話しいただけますか。

【会田】今年の2歳ではハッピークラシックという新馬が田中淳司厩舎にいて、かなり期待しています。中央のGⅢ(福島記念)を勝ったサニーサンデーという馬の下です。僕や服部騎手はダートだと思っていますが、田中先生は芝向きと言っているので、またハッピーグリンと同じように活躍できたらいいと思っています。

【川﨑】最後に会田さんの馬主としての夢をまとめていただけますか。

【会田】オグリキャップやハイセイコーのように地方所属馬、地方出身馬が中央の大レースで活躍する下剋上のようなことにファンの皆さんも魅了されると思いますが、ハッピーグリンに関して言えば、地方所属のまま中央の重賞やGⅠを勝ちたいというのが夢ですね。

【川﨑】ぜひ地方のままで挑戦していただけるとありがたいですね。

【会田】地方の馬主資格は中央に比べればかなりハードルが低いと思うので、(コスモバルクの)岡田繁幸さんのように大規模のオーナーではなく、僕のような挑戦を見て、若い馬主さんにはどんどん中央とか海外のレースに挑戦してもらえたらうれしいと思います。そういう人が増えてくれば地方競馬全体が盛り上がると思うし、「俺達も負けないぞ」みたいな地方の調教師やジョッキーも増えると思います。

【川﨑】今後、ハッピーグリンに続いて地方競馬から海外に遠征するような馬が出てきたときのために、是非、参考にさせていただきたいと思います。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。

  • 構成
  • 斎藤修
  • 写真提供
  • 斎藤修・TCK