隙間を突いて直線突き抜ける
南関東の伏兵が潜在能力発揮
今年のダートグレード戦線では地方馬の苦戦が続き、かきつばた記念JpnⅢ(4月29日・名古屋)のタガノジンガロ(兵庫)以降、しばらく地方馬が勝つシーンを見られないでいた。ところが11月も後半になり、浦和記念JpnⅡでようやく船橋のサミットストーンが勝ち、しかも地元南関東所属馬が3着までを独占。そしてその1週間後、この兵庫ジュニアグランプリJpnⅡでは、単勝169.7倍という伏兵、浦和のジャジャウマナラシが勝利。2着には北海道から遠征のオヤコダカが入り、地方馬のワンツーという結果になった。逃げたのはエーデルワイス賞JpnⅢを逃げ切っていた中央のウィッシュハピネスだったが、直後に続いたのは、地元期待のトーコーヴィーナス、オヤコダカ、ジャジャウマナラシという地方勢だった。3コーナーでトーコーヴィーナス、オヤコダカが仕掛けて先頭に並びかけた。そして遅れて仕掛けたのがジャジャウマナラシ。4コーナーでは狭い隙間をこじ開けるように割って抜け出すと、そのまま直線で鮮やかに突き抜けた。外で食い下がったオヤコダカが2馬身半差で2着に入り、中団から徐々に位置取りを上げてきた中央のトーセンラークが迫ったもののアタマ差で3着だった。
一方、単勝1.6倍の断然人気に支持されたキャプテンシップはといえば、後方からの追走となって見せ場をつくれず6着。「ソエが出て、休んだ影響があったかも」と岩田康誠騎手。デビューからダートで2連勝した走りの手応えもなかったとのことだった。
勝ったジャジャウマナラシは、重賞初制覇がグレード制覇。そして今年も南関東リーディングを独走する小久保智調教師にとっても、念願のダートグレード初制覇となった。平和賞5着、そしてハイセイコー記念でも5着という成績だったが、小久保調教師には期するところがあった。「新馬戦を勝った時には追えばどこまでも伸びるという感触があったんだけど、それがここ2戦は見られなかったからどうしたのかなと。でも期待していたとおり、右回りだとやっぱり切れる」と、してやったりの表情。
手綱を任された田中学騎手にとっても、これがダートグレード初制覇。他地区からの遠征馬への騎乗で、しかも人気薄でということでは、思わぬところで転がり込んできたビッグタイトルといえよう。これも目下全国リーディングでトップを走る勢いだろうか。
惜しかったのはオヤコダカだ。「今日こそ勝ったと思ったけど、勝ち馬にうまく乗られたし、相手が強かった」と原孝明調教師。前走、北海道2歳優駿JpnⅢでは2番人気に期待されながら5着だったが、あらためて素質の高さを見せた。
田中学騎手
4コーナーではまだ手ごたえがあって、どこをどうさばくかの問題だったので、あそこはよく頑張ってくれたと思います。初めて跨がらせてもらったんですけど、素直な乗り味のいい馬だなというのが第一印象でした。しばらく重賞には恵まれてなかったんですが、これを勝てたのはうれしいのひと言です。
小久保智調教師
ソエで一度デビューを遅らせたんですが、最近ではぜんぜん気にしなくなって、使うごとによくなってきていました。平和賞は直線で追いづらそうにしていたし、前回(ハイセイコー記念)は慌てて2番手からで自分の競馬ができなかたので、その時から次はここと決めていました。やっぱり走りますね。
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残念だったのは、ここまで5戦5勝で地元兵庫の期待となっていたトーコーヴィーナス。4コーナーでは内に入ってきたジャジャウマナラシと、外のオヤコダカに挟まれるような格好になり、それで馬が走る気を失くしたか、そのまま後退して7着だった。
さて、勝ったジャジャウマナラシの今後だが、「今は左回りで無理をさせたくない」(小久保調教師)とのことで、大井の京浜盃からの始動になるか、もしくは中央の芝への挑戦という可能性もあるそうだ。いずれにしても、平和賞、ハイセイコー記念を連勝したストゥディウムに続いて、来年の南関東クラシックの有力馬としてまた1頭、名乗りを挙げたことは間違いない。
取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)
写真:桂伸也(いちかんぽ)