2014年11月13日(木) 門別競馬場 2000m

好位から早め先頭で押し切る
ベテランの手綱で北の頂点に

 予報通りとはいえ、ここまで天候が荒れるとは。今年度のホッカイドウ競馬最終日は、時おり雪が混じる強風で、外を歩けないほど。第4レースは取り止めとなり、その後もレースの進行が心配された中、重賞2レースを含む11レースが行われた。
 2歳牝馬重賞ブロッサムカップに続く最終レースは、北海道所属馬のみで行われる大一番の道営記念。実績馬がそろう好メンバーで、1番人気は前哨戦・瑞穂賞の勝ち馬ウルトラカイザー。3連勝中の上がり馬キタノイットウセイ、ファン投票1位のコスモスイング、JRAの重賞勝ちがあるシルクメビウス、クラキングオーとの父仔制覇を目指す生粋の道営血統クラグオーなど16頭が出走した。
 レースが近づくと、スタンドの中にいた人たちがどっと寒空の下に出てきた。この日の入場人員は1,267人。誘導は今年の長崎国体障害馬術で優勝した高校3年の小山達平さんが務め、今年から新調されたファンファーレは静内高校吹奏楽部が演奏した。
 そろったスタートから、予想通りニシノファイターが先頭に立ち、少しかかり気味にシルクメビウスが2番手。ウルトラカイザーが続く。2番人気のクラグオーは中団から。向正面で一旦ペースが落ち着き、3コーナーあたりから4年連続の道営記念参戦となる金沢・吉原寛人騎手のキタノイットウセイが仕掛けた。一緒にコスモスイングも上がっていく。直線で先頭に立ったウルトラカイザーに迫るが、そのままウルトラカイザーが半馬身差でしのぎ、人気に応えた。前日の雨で重馬場となり、2分4秒9と速いタイムでの決着となった。
 2着はキタノイットウセイ。ゴール前でハナ差交わされて3着だったコスモスイングの井上幹太騎手は悔しそうな表情で戻ってきたが、デビュー2年目で初めての道営記念騎乗、11番人気ながら積極的な競馬が光った。クラグオーは伸びず15着に終わった。
 佐賀デビューのウルトラカイザーは、当初脚部不安を抱えており、調教坂路のあるホッカイドウ競馬に昨年移籍してきた。林和弘調教師は道営記念4度目の制覇となり、「何度勝っても嬉しいね!」。ホッカイドウ競馬では現役最年長の井上俊彦騎手は今年重賞5勝で、「絶好調だよ!」とトレードマークの笑顔を輝かせた。「(引退した兄)アスカクリチャン(アルゼンチン共和国杯など)の雪辱ですね」とは生産した新冠・つつみ牧場の関係者。「仔馬の時からバネがあっていい馬」だったという。
井上俊彦騎手
予定通り前に行けました。ニシノファイターを楽に逃げさせたらだめだと思って、早めに抜け出しました。ゴール前は焦った! 気性が荒いけど、レースでは真面目な馬。こういう馬にはなかなか巡り会えないね。道営記念は(ベストボーイ以来)27年ぶり。結婚する前の年なのでよく覚えています(笑)。
林和弘調教師
状態は良かったよ。前は止まらないし、後ろを気にしないといけない。難しいレースでした。力のあるところを見せてくれて、騎手もうまく乗ってくれた。1ハロン手前からずっと声が出てた(笑)。ベテランなので好きに乗ってもらいました。(門別2000メートルは初めてでも)距離は問題ないです。



 レースが終わるのを待っていたのかのように再び雪が降り出した。表彰式の後は、恒例のファンと騎手との交流会。今シーズン101勝を挙げ、初の北海道リーディングとなった岩橋勇二騎手をはじめ、怪我で戦線離脱中の五十嵐冬樹騎手や櫻井拓章騎手も駆けつけ、写真撮影やサインに応じていた。
 80日間の今開催は前年度対比、計画比ともに112%の売上げを記録し、2年連続での黒字が見込まれる。JRAとの相互発売やインターネット投票が浸透し、なおかつ関係者や馬産地の人たちが盛り上げようとした努力が表れた結果だろう。

取材・文:斎藤友香
写真:中地広大(いちかんぽ)