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2014年11月3日(祝・月) 盛岡競馬場 2000m

外枠から逃げて直線突き放す
ジーワン3勝もさらなる高みへ

天候も徐々に回復し、場内はファンの熱気で包まれた
 天候が心配された盛岡競馬場のJBCデー。寒風が吹きつけ、枯れ葉が舞い、時折小雨にも見舞われる、来場したファンにはかなり厳しい1日となったが、熱気に包まれたままメインレースを迎えた。GⅠ/JpnⅠホース6頭が集結したJBCクラシックJpnⅠは、ハイレベルの激闘となったが、コパノリッキーが見事にコースレコードで逃げ切り。春からの勢いを盛岡でも見せつけた。
 ある程度人気どころがはっきりしていたレディスクラシックやスプリントと違い、実績馬の多くが休み明け。特に実績最上位のホッコータルマエは3月のドバイワールドカップ以来の出走で、現時点での状態評価が難しくなっていた。それにも増して悩まされたのが展開予想。帝王賞JpnⅠがにらみ合いのような展開になり、大井の2000メートルとしても珍しいスローペース。これに近いメンバーとなる今回もどの馬が逃げるのか、そしてどの馬に展開が向きそうなのかが読み切れない。単勝上位5頭で人気が割れ、これらの解明が予想の大きなポイントとなった。
 その悩みにスパッと答えを出したのがコパノリッキーの田邊裕信騎手。スタート直後はやはり各馬が内外をうかがうような流れだったが、それならと8枠15番からのスタートでも徐々に内へ寄せながら無理なく先頭に押し上げた。そこまでは気持ち速い程度の流れだったが、1コーナーを回るあたりからうまくスローダウン。案の定その後ろがポジションの取り合いとなり、ベストウォーリア、ホッコータルマエ、クリソライト、ワンダーアキュートがつかず離れずの位置で追走した。
 コパノリッキーには絶妙のペース配分となったのだろう、4コーナーで後続が追い上げてきた時にも田邊騎手は、「ペースを上げていない」と。十分に余力を残したコパノリッキーがここからスパートをかけ、後続を突き放して勝負あり。ゴールでは2着のクリソライトに3馬身差。フェブラリーステークスGⅠ、かしわ記念JpnⅠに続くビッグタイトルは、戦うごとに差を広げての勝利となっている。
 田邊騎手は、「1600メートルは乗りやすい。この距離では引っかかるし、ムキになるところもあるが、ゴールまでもってくれた。2000メートルで走っている馬を負かせました」という点を強調した。フェブラリーステークスGⅠでは16頭立て16番人気の勝利で日本中を驚かせたが、何度見直してもレース内容に恵まれたような点は見当たらないし、そのあとのかしわ記念JpnⅠや今日のレースはもはや自信満々の騎乗と思える。馬への信頼を田邊騎手は、「ずっと強いと思っていたから、『強いですね』と聞かれても、そうとしか言えない」と表現した。秋冬のダート路線は続き、次走は中京のチャンピオンズカップGⅠへ向かうとのこと。村山明調教師も、「今日はオーナーに言われて、(開運アイテムの)刺身を買って食べました」と笑わせながらも、「もう1つランクアップできる」とさらなる可能性を示した。
 敗れた各馬も休み明けを叩かれ、舞台を変えて反撃に出るに違いない。特にホッコータルマエの幸英明騎手が、「使いながら良くなっていく馬だから、今日これくらいのレースができるのなら……」と手応えを感じていたことは記憶しておきたい。
 地方勢はさすがに出番がなかったが、岩手所属馬はナムラタイタンがジワジワと差を詰め6着。坂口裕一騎手は、「もう少し前の位置がとりたかった」。夏場が順調でなかっただけに、この状態で南部杯JpnⅠからステップできていればと惜しまれる。南部杯JpnⅠで見せ場があったコミュニティも8着ながら、山本政聡騎手は、「流れに乗れていた」と。JRA未勝利から約1年2カ月でこの舞台へ上がり、まだ進化を続けていると感じられるだけに、好走の部類といって差し支えないだろう。JBC3競走で岩手からは入着馬を出すことができなかったが、現時点でできるだけの健闘は見せたといえる。
 12年ぶりに盛岡で行われたJBC競走は、その間、岩手競馬に様々な経緯があったことが周知されているが、様々な形で支えてくださったすべての方に対して感謝の気持ちを添えて、この観戦記を終えたい。
田邊裕信騎手
帝王賞では(前へ)行きたくなくて馬とけんかしましたが、今日は馬場の内に水が浮いていたので逃げました。4コーナーで後続が来ましたが、自分のペースは上げていないです。この距離では引っかかるし、ムキになりますが、ゴールまでもってくれました。2000メートルで走っている馬を負かせましたね。
村山明調教師
南部杯の予定が体調が上向かず、ここに切り替えて乗り込めました。入厩後は静かなところで環境が良かったです。前に行くのは勇気のいることだと思いますが、田邊騎手が馬を信じたのが良かったですね。次走はチャンピオンズカップが目標。潜在能力は高く、もう1つランクアップできると思います。

地元の総大将として出走したナムラタイタンは6着

取材・文:深田桂一
写真:いちかんぽ(佐藤到・国分智)、NAR

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(YouTube地方競馬チャンネル内)