dirt
2014年10月13日(祝・月) 盛岡競馬場 1600m

直線一瞬にして後続を突き放す
若い4歳の期待馬が他馬を圧倒

 台風19号が午前中に九州に上陸。高知競馬とJRA京都競馬は翌日に順延、佐賀競馬は中止が発表された。果たしてマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠが行われた盛岡競馬場では、ひとつ前レースのころにポツポツ降りだしたが、しかしそれもすぐに止み、表彰式まで無事に終わってひと安心。1時間ほどののちには本格的な雨になったので、ギリギリのところで天気はもってくれた。
 前日、京都競馬場で引退式を行った佐藤哲三元騎手が、この日は盛岡競馬場でトークイベントに登場。佐藤騎手といえばエスポワールシチーで南部杯を2度制覇。「引退して最初の仕事を盛岡でやりたかった」と話していた。
 そうした中で行われた、秋のダートJpnⅠ開幕戦ともいえるマイルチャンピオンシップ南部杯は、GⅠ/JpnⅠ勝ち馬不在というメンバーで、実績や近走の安定したレースぶりから単勝1.2倍という断然の支持を受けたベストウォーリアが、その評価どおりの強さを見せた。
 全馬ほとんど揃ったスタートから、逃げると思われたポアゾンブラックがやはり先頭に立った。ぴたりと外の2番手につけたのがベストウォーリア。3番手に地元のナムラタイタンで、キョウエイアシュラ、アドマイヤロイヤルら有力中央勢も差なく続いた。
 ほとんど持ったままの手ごたえで直線を向いたベストウォーリアは、坂のあたりでポアゾンブラックに並びかけ、そして鞍上に気合を入れられると一瞬にして突き放した。脚を使ったのはほとんど最後の1ハロンだけ。圧巻のパフォーマンスだった。
 淡々とした流れもあり、逃げたポアゾンブラックが2着。しかし勝ち馬との着差は4馬身。1馬身差の3着にアドマイヤロイヤルが入り、中央所属馬6頭のうち5頭が掲示板を独占する結果となった。
 中央勢6頭のうち3頭にダートグレード勝ちがないという、例年と比較してやや手薄なメンバーだっただけに、地元馬にも期待が寄せられた。中央から転入しての3連勝がいずれも大差勝ちというナムラタイタンは3番人気。4コーナーまで前の2頭を射程圏に入れた位置で、さあここからという勢いにも見えた。前走、絆カップを控えた競馬で勝つという新境地を見せたコミュニティも、中団から3~4コーナー大外をまくってきて先頭に並びかけようかという勢いがあり、2頭ともに見せ場はつくった。しかし結果は、6着と7着。特にナムラタイタンは、出走予定だったマーキュリーカップJpnⅢを夏バテぎみだったことから回避し、一條記念みちのく大賞典以来4カ月ぶりの実戦。必ずしも100%の状態ではなかったようで、それが悔やまれるところだった。
 さて、JBCクラシックとJBCスプリントの優先出走権を獲得した(実際に出走できるのはいずれか)ベストウォーリアだが、石坂正調教師によると、「距離的には、マイルからプラスマイナス1ハロン、短いほうはいいと思いますけど、長いほうはどうですかね」とのことで、JBCへの出走については明言を避けた。とはいえ、ダート路線のチャンピオンを狙う1頭として、若い4歳世代から名乗りを挙げたことだけは確かだ。
戸崎圭太騎手
もともとダッシュ力はある馬なので、普通に2番手につけられました。どこからでもレースができると思っていたので位置取りは特に意識せず、スローでも折り合いはついて、いいリズムで追走できました。今回は、ユニコーンステークスのときと同じように切れる脚を発揮してくれました。
石坂正調教師
ジョッキーに指示はしていませんでしたが、あまり後ろの位置だと包まれて出られないこともあるので、2番手か3番手からと思っていましたので、ジョッキーにとっても思ったような競馬ができんじゃないかと思います。ずっと持ったままだったので、勝てるんじゃないかと思って見ていました。


取材・文:斎藤 修
写真:いちかんぽ(佐藤到・川村章子)