dirt
2014年10月1日(水) 大井競馬場 1200m

得意の末脚で人気にこたえる
今年重賞3勝目でJBCの主役に

 JBCスプリントJpnⅠへ向けたRoad to JBCの東京盃JpnⅡは、単勝1.4倍という圧倒的な支持を集めたノーザンリバーが鮮やかに勝ち切った。今年ここまでにダート交流重賞2勝を挙げ、スプリント界のスターに躍り出ようとしていたこの馬が、充実の秋を迎えたようだ。
 前走のプロキオンステークスGⅢ・4着からは2カ月半の休み明けとなったが、パドックでは外々を周回し前の馬を追い抜きそうなくらい元気に歩く姿を見せ、素人目にも前向きさが伝わってきた。蛯名正義騎手も「久しぶりでしたが、本当に馬が良い状態でした」と、仕上がりの良さを感じたそうだ。
 レースは、内枠を利した浦和のサトノタイガーが果敢に先手を奪った。3番人気のタイセイレジェンドが大外枠から外の2番手につけ、2番人気のドリームバレンチノは内の4番手、セイクリムズンが中団に位置取り、ノーザンリバーは中団後方で前をうかがった。
 直線に入るとサトノタイガーが後続との差を広げた。「一瞬やったと思ったけど、このメンバー相手では甘くなかったですね」と鞍上の左海誠二騎手。しかし残り200メートルを切ったところでドリームバレンチノが交わして先頭に立った。そして、前を目がけて馬場の真ん中を猛然と追い込んできたのがノーザンリバーだ。内で粘るドリームバレンチノを一気に捉えてゴールイン。コースレコードに0秒1差と迫る1分10秒2という好タイムでの勝利となった。
 ノーザンリバーの強さを「終いの脚がしっかりしている」と評価した蛯名騎手。不良馬場に脚をとられながら直線だけの競馬でハナ差2着に追い上げたかきつばた記念JpnⅢや、不利があって後方まで下がったものの差し切り勝ちを決めたさきたま杯JpnⅡなど、最後は必ず末脚を伸ばしてくるというレースぶりには目を見張るものがある。また、道中何があろうと動じない精神力も相当なものだろう。
 「一度使って状態アップも見込めます。右回りの方が安定していますが、盛岡コースは広いですし大丈夫だと思います。対戦相手がどうなるか分かりませんが、がんばってくれるでしょう!」とJBCスプリントに向けて蛯名騎手は明るく語った。充実一途の6歳馬ノーザンリバーが、JpnⅠ制覇に向けて大きな弾みをつけた。
 ダートスプリント戦線はノーザンリバーが一歩リードした状況だが、ライバルたちも黙ってはいないだろう。2着のドリームバレンチノは6カ月半の休み明けで「リフレッシュして良い状態で帰ってきた」と岩田康誠騎手はコメントし、3着のセイクリムズンは今回馬体重マイナス32キロ。服部利之調教師によると状態はまだまだとのこと。次の本番に向けてライバル陣営はしっかり調整を進めてくるはずだ。また今回の東京盃には、今年短距離(1400メートル以下)のダート交流重賞(中央も含め)を優勝した馬、9頭中7頭が出走しておらず、これまでの対戦も少ないため力関係は未知な部分が多い。ノーザンリバーが中心となるであろうJBCスプリントは、どんな出走メンバーになるのかにも注目しながら、1カ月後の戦いを楽しみに待ちたい。
蛯名正義騎手
勝ててほっとしました。スタートで寄られ気味で、様子を見ながら後ろから捌いていければと思っていました。うしろから差されないようと細心の注意を払いながら乗りました。直線は手応えどおりでゴーサインからも非常にいい伸びでした。ここを勝って本番に臨みたいと思っていたのでいい形で行けますね。
浅見秀一調教師
位置取りは少しうしろ過ぎたかなとは思いましたが、直線は良く伸びてくれました。次走は盛岡のJBCスプリントを予定しています。


取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)