さらに国際色を増した交流競走
シンガポール馬が強さを見せる
2年目を迎えた韓国の国際交流競走は、当初は昨年と同じく大井競馬場とソウル競馬場の2場間での交流が予定されていたが、シンガポールで韓国の馬券を発売することが決まり、新たにシンガポールを加えて『アジアチャレンジカップ』に変更。舞台は変わらずソウル競馬場のダート1400mだが、さらに国際色を増して行われた。昨年のファイナルスコアーに続き、ショコラヴェリーヌとピエールタイガーの2頭で挑んだ荒山勝徳調教師が「シンガポールからは(地元の)GⅠ、GⅡ、GⅢを勝っている馬が来ますからね」と気にしていたように、シンガポールは、最初からなかなかのメンバーをそろえてきた。その筆頭が、国際レーティングで115を獲得していたエルパドリーノ。韓国のファンもその数字を信頼したようで、単勝2.8倍の1番人気に支持された。
できれば逃げたいタイプが多かった韓国勢にあって、逃げてこそのソウルのフライトップクインが14頭立ての大外枠。それだけでも流れが速くなりそうな予兆はあったが、3、4番手を進んだショコラヴェリーヌの真島大輔騎手が「ちょっと速すぎましたね」というほどのハイラップを刻んでレースは流れた。その真島騎手が「窮屈になったところもあった」というごちゃついた先行勢から離れずに的場文男騎手のピエールタイガーが行き、それらを見ながらエルパドリーノが中団でぴったりと折り合っていた。エルパドリーノをマークするように進んだのが地元の期待を背負っていた3番人気のワンダーボルトで、その後ろに矢野貴之騎手のトシギャングスター。昨年3着で高知から遠征中の倉兼育康騎手が手綱を取るソウルのインディアンブルーが指定席の最後方から進んだ。
コーナーに入るとフローレス騎手がうまく外に出してエルパドリーノが上昇。遅れずにワンダーボルトが追走して、直線に入ると2頭があっさりと抜け出して後続を引き離していった。ワンダーボルトも追いすがったったが、最後は脚色が同じになってしまい、エルパドリーノが2馬身差で快勝。従来のレコードを0秒6も短縮する1分23秒8というタイムを良馬場で叩き出したのだから、5着に敗れたピエールタイガーの的場騎手が「シンガポールは強いよ」と舌を巻いたのも無理はない。「思ったよりも後ろになったのがちょっと誤算でしたが、最後はジリジリと伸びてくれました」という矢野騎手のトシギャングスターが4着まで差を詰めたが、これが日本馬の最先着。「馬体重が減ってパワー的にも劣る部分があったかな」という真島騎手のショコラヴェリーヌは7着に終わった。また、ワンダーボルトから8馬身差の3着には短期免許で大井に遠征した経験のあるニュージーランドの田中正一騎手(現在は韓国に遠征中)が騎乗したプサンのニューヨークブルー、6着には追い込んだ倉兼騎手のインディアンブルーが入線して、日本人騎手が3着から7着までを占めるという結果になった。
昨年の2着馬で大井競馬場で行われたインタラクションカップを逃げ切ったソウルのワッツヴィレッジが13着、逃げたフライトップクインが14着という結果に、このレースの激しさが現れているが、エルパドリーノの強さが際立った一方で、ほかのシンガポール勢は9、10着に敗れている。やはり海外遠征には能力以上にその対応力も必要だということなのだろう。来年以降の日本勢の巻き返しを期待したい。
デイヴィッド・フローレス騎手
とても賢い馬だということは分かっていましたが、すべて思い通りに反応してくれて、すばらしい勝利になりました。スタート前も冷静だったし、スタート後の反応も素早くて、いい位置を取ることができました。最初の1ハロンで落ち着いてくれて、最後の1ハロンまでしっかり走ってくれました。
アルウィン・タン(タン・ハイワン)調教師
いいレースをすれば勝てると思っていましたが、パドックでジョッキーがここの馬場はシンガポールとは違うからどうなるか分からないというので自信をなくしていました。それでも、とにかくただ幸運を祈って勝利を期待してレースに出しました。機会があれば、また韓国に来たいですね。
シンガポール所属馬関係者のカタカナ表記はウェブハロン独自のものです。KRAによる正式名(アルファベット)は競走成績をご覧ください。
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