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2014年6月25日(水) 大井競馬場 2000m

直線追い比べから抜け出した8歳馬
人気の4歳馬を振り切りJpnⅠ・2勝目

 今年のダート中距離戦線では、昨年のNARグランプリ・ダートグレード競走特別賞を受賞したホッコータルマエと、JRA賞最優秀ダートホースに選出されたベルシャザールが、ともにドバイに遠征し、その反動が少なからずあったのだろう、ベルシャザールは引退して種牡馬となり、ホッコータルマエは復帰が遅れている。代わって台頭したのが若い4歳のコパノリッキーで、今回の帝王賞JpnⅠでは単勝1.9倍という支持を受けた。そのコパノリッキーをはじめJRA勢は出走枠6頭の出走があり、やはりGⅠ/JpnⅠ勝ちのあるニホンピロアワーズ、ワンダーアキュートと3頭に人気が集中した。
 対する地方勢は、今年から本番と同じ2000メートルに距離短縮となった大井記念を好タイムで圧勝していたサミットストーンが挫石のため残念ながら直前で回避。ダートグレード入着級の馬はいるものの、兵庫のオオエライジン以下、いずれも単勝では万馬券と、ファンの評価も厳しいものとなった。
 ワンダーアキュートがダッシュよく飛び出したが、枠順の関係で内のニホンピロアワーズが先頭に立ち、コパノリッキーが差なく2番手、ワンダーアキュートは3番手で1~2コーナーを回り、GⅠ/JpnⅠ勝ち馬が前を固める形で隊列が決まった。そのうしろには、ソリタリーキング、オオエライジン、グランシュヴァリエらが続いた。
 3コーナー手前ではコパノリッキーが抑えきれない感じで先頭に立つ場面もあったが、直線を向いたところでGⅠ/JpnⅠ馬3頭が横一線になっての追い比べ。手ごたえ一杯のニホンピロアワーズがまず遅れ、内でコパノリッキーも粘っていたが、残り200メートルあたりからワンダーアキュートがじわじわと前に出て、コパノリッキーに2馬身差をつけての勝利。さらに2馬身差の3着にはソリタリーキングが入った。
 勝ったワンダーアキュートは、昨年の日本テレビ盃JpnⅡ以来の勝利で、JpnⅠ勝ちは一昨年のJBCクラシック(川崎)以来2勝目。勝ち切れないという言い方もできるが、2011年の5歳時以降ここまで24戦、ダートGⅠ/JpnⅠを中心に使われ、そのうち3着以内を外したのはわずか4戦という安定感は抜群だ。「どこの競馬場でも、どういう状況でも、どんな馬場状態でも、きっちり走ってくれる」(武豊騎手)のがまさにこの馬の強さ。大井2000メートルのGⅠ/JpnⅠでも、5歳以降に限ると、ここまで2、3、3、2着ときて今回の勝利。加えて、ここに向けての状態のよさ、距離適性などで、若いコパノリッキーをねじ伏せる結果となった。
 それにしても、あらためて思ったのが、日本の競馬シーンにおける武豊騎手の存在の大きさだ。昨年のマイルチャンピオンシップをトーセンラーで制したのがGⅠ通算100勝目(中央、地方、海外併せて)で、今回がそれ以来の101勝目。表彰式などでの武騎手への声援はひときわ大きなものだった。
 GⅠ/JpnⅠ・3連勝とはならなかったコパノリッキーだが、田邊裕信騎手も初めての2000メートルという距離を心配していたように、このメンバーで、時計の出やすい不良馬場を考えればスローといってもいい前半62秒3という流れ。道中は掛かり気味に3コーナー先頭で、直線でもバテていたわけではないが、脚を溜めていたワンダーアキュートに屈したのはそのぶんだろう。今後、2000メートルの路線でもチャンピオンとなるには、道中での折り合いが課題となりそうだ。
 中央勢6頭の上位独占は人気どおり。地方馬にとっては、最先着7着のゴールドバシリスクが、6着のムスカテールに6馬身差という厳しい結果となった。
 残念だったのは、兵庫のオオエライジン。先行するGⅠ/JpnⅠ勝ち馬3頭を向正面から早めに追いかけたのは、ソリタリーキングとこの馬。直線、残り200メートルのあたりで競走を中止し、左前球節部完全脱臼という診断。6歳でも気性的な面などまだよくなる余地を残していたが、期待されたダートグレードのタイトルにはついに手が届かないままだった。

武豊騎手
この馬では何度も悔しい思いをしてきているので、格別にうれしいです。3コーナーから馬が自分でペースを上げていく仕草をしたので、あまり抑えずに、そこで早めに動いていきました。早めに先頭に立ったんですけど、馬の状態がすごくよかったので、なんとか押しきれるかなと思いました。
佐藤正雄調教師
やっと(久しぶりにGⅠを)勝って、ホッとしています。直線はほんとにすばらしい脚で、今までの鬱憤を晴らすような勝利でした。このあとはひと休みして、秋のローテーションに向かって行くと思います。年齢的にも8歳ですが、いいチャンスで勝ってくれてよかったです。



取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(岡田友貴・森澤志津雄)