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2014年4月9日(水) 船橋競馬場 1600m

ムチを使わず7馬身差圧勝
新たな砂の女王に名乗り

 「(一昨年の秋以来となるコンビでしたが)返し馬の時も、たくましくなって完成された好馬体に感じたので、これなら僕が下手に乗らない限りは負けないだろうって思っていました」とワイルドフラッパーに騎乗した福永祐一騎手。
 ワイルドフラッパーは今年に入ってからダートグレード牝馬路線に参戦し、TCK女王盃JpnⅢは重賞初挑戦ながらも、女王メーデイアに食い下がる好走で2着。エンプレス杯JpnⅡは2着馬に2秒2差をつける大差勝ちで重賞初制覇を飾り、砂の新女王として名乗りを上げたばかり。今回はコースや距離、57キロという斤量など、初めてのことも多かったが、何ら危なげない走りだった。メーデイアが引退した今、“ワイルドフラッパー時代”が到来したことを決定づけたと言ってもいいだろう。
 レースは、サマリーズがハナを主張し、アクティビューティが続くと、ワイルドフラッパーは3番手外目を追走。「1コーナーまでに、逃げるか、外目の2~3番手の競馬をしようと思っていました。楽に逃げられれば良かったですが、行こうとする馬がいたので、あとは外に出す時に邪魔をしないように気をつけました」(福永騎手)
 3コーナー付近から徐々に動いていくと、直線では抜群の手応えで先頭に立ち、後続との差をグングン広げていった。「あまり離さないようにしようと思っても、ステッキを入れずに7馬身差なので、能力は相当あると思います」(福永騎手)。1600メートルの勝ちタイムは1分39秒5(稍重)。2着にはアクティビューティ、3着には南関東のカイカヨソウが入った。
 今後の状態を見て次走は判断するそうだが、ゆくゆくは牝馬路線に留まらず中央の牡馬たちにも挑戦し、その結果次第ではジャパンカップダートGⅠやフェブラリーステークスGⅠなども目指していきたいとのこと。馬自体はまだ一杯には仕上げていないそうで、それだけに底知れない力を秘めていそうだ。
 一方、地方最先着の3着だったカイカヨソウは、昨年の東京プリンセス賞、ロジータ記念と2つの南関東S1重賞を勝ち、3歳牝馬の頂点を極めた。レベルの高い馬であることはかかわる人たちが感じていたことだが、クイーン賞JpnⅢ(6着)もTCK女王盃JpnⅢ(7着)も不利などがあり本来の力を出していないだけに、「今日の結果は自信につながった」とコンビを組んだ今野忠成騎手。
 以前はカイバ食いの細い馬だったが、最近はこの馬なりに食べられるようになってきたぶん、船橋移籍後では最高体重の470キロでの出走で、去年の今頃に比べると毛づやもグッと良くなり、内臓面も強くなってきたそうだ。「まだこれから強くなる」と川島正行調教師。
 南関東ではクラーベセクレタやハルサンサン、ナターレ、マニエリスムといった活躍馬たちの繁殖入りが相次ぎ、寂しさも募っていたが、カイカヨソウの今回の力走は明るいニュース。今年の大目標JBCレディスクラシックJpnⅠに向けて見守っていきたい。
福永祐一騎手
以前は砂をかぶったり極端にもまれたりすると嫌気をさすところがあったので、今日は内枠(2枠2番)だったので気をつけました。深い砂もしっかり走ってくれるし、前走のような雨で湿った馬場はもっと得意です。牝馬の交流重賞だけではなく、男馬に入ってもいい勝負をしてくれると思います。
松田國英調教師
前回は仕上げ過ぎたのもあったので、社台ファームに一度戻してチェックをし、帰ってきてからも自然体で調整をしました。ダート競馬は体が慣れてくれば何回でも使えると思うので、その分、長く走ることでファンの皆さんにも喜んで頂けます。これからもたくさんの人たちに強い競馬を見て頂きたいです。


カイカヨソウ(船橋)は今後につながる3着。

取材・文:高橋華代子
写真:国分智(いちかんぽ)、NAR