2015年3月22日(日) 帯広競馬場

障害4番手も自信をもって差し切る
2歳時からの期待馬が極めた頂点

 昨年のばんえい記念は、勝ったのが6番人気インフィニティー、2着が8番人気フクドリという大波乱ともいえる決着で、今シーズンのばんえい古馬戦線もそのまま波乱傾向が続いていた。それゆえ総決算ともいうべきばんえい記念も人気が割れ、単勝2.5倍の1番人気こそ昨年の覇者インフィニティーだったが、単勝10倍以下が5頭と、予想を迷っているファンが多かったようだ。
 前日までに出ていたピンポイント予報では、雪も雨も降らないような感じだったが、当日は朝から雪がちらついていた。昼過ぎに雪は止んだものの、水分量は前日よりやや高めの2.2~2.5%。前半のレースを見ていても、前日よりやや速めのタイムで決着していた。
 そして迎えた、ばんえい記念。勝負どころの第2障害で各馬じっくり溜めたあと、最初に仕掛けた4頭ほどの中から先頭で越えたのは、ばんえい記念初挑戦の7歳馬フジダイビクトリーだった。同じ7歳のニュータカラコマが2番手で、昨年の覇者インフィニティーも3番手に続いた。
 フジダイビクトリーは残り10メートルのあたりまで先頭でレースを引っ張ったが、これに一気に襲いかかったのが、やや離れた4番手で第2障害をクリアしたキタノタイショウだった。残り5メートル余りのところでフジダイビクトリーを交わすとそのまま一気に押し切って勝利。フジダイビクトリーは、ゴールラインをソリが半分ほど通過したところでピタリと止まり、2着にニュータカラコマ、3着にインフィニティーと入線し、フジダイビクトリーは4着だった。
 そして9頭がゴールしたあとも第2障害に残っていたのがファーストスター。しばしののちにようやく立て直し、ゴールしたタイムは13分27秒6。勝ったキタノタイショウからは10分近く、9着のホッカイヒカルからも6分ほど遅れてのゴールで、それでもほとんどのファンが最後まで見守り拍手で称えた。
 勝ったキタノタイショウの大河原和雄騎手は、残り30メートルのあたりで、フジダイビクトリーの手応えや息遣いから、相手はニュータカラコマだと思ったという。そして、「20メートル手前ではだいたい勝てたと思いました」と、会心のレースとなったようだ。
 今年9歳になったキタノタイショウは、2歳シーズンの最高峰イレネー記念制覇にはじまり、常に世代のトップを走ってきた。ばんえい記念初挑戦となった7歳時は3着。そして昨年は1番人気に支持されたものの、デビューからほとんどのレースで手綱をとってきた大河原騎手がアキレス腱を痛めて乗替りとなったこともあって5着。病院のベッドで見ていた大河原騎手は、「悔しかったし、臆病で難しいところのある馬を任せることになった鈴木恵介騎手には悪いことをした」と思っていたという。
 イレネー記念とばんえい記念を制した馬は、1988年(11月)にばんえい記念を制したニユーフロンテヤ以来、史上3頭目。ばんえい競馬では、2歳時から古馬一線級に至るまで活躍を続けるということはそれほど難しいことなのだ。
 大河原騎手は2001年のサカノタイソンに続いて2度目、管理する服部義幸調教師は開業30シーズン目での、念願のばんえい記念制覇となった。キタノタイショウは来季も頂点連覇を目指し、体調に問題がなければ、ばんえい十勝オッズパーク杯からの始動となる。

大河原和雄騎手
(レース前)特に意識した相手はいません。相手は自分だけ。タイムは3分半から4分だと思っていました。去年は自分の不注意で怪我をして迷惑をかけたので、そのぶんを返さないとと思っていました。厩舎に来たときから臆病な馬で、今も変わりません。だから何をする時も常に声をかけるようにしています。
服部義幸調教師
もう少し馬場が乾いてゆったりした競馬がいいのかと思いましたが、大河原騎手が折り合いをつけてうまく乗ってくれました。若いうちから一杯一杯のことをやってしまうと、古馬になってオープンの壁は破れない。そこが難しい。このレースだけは勝ちたいと思っていて、馬も人もそれにこたえてくれました。


連覇を狙ったインフィニティーは3着

取材・文:斎藤修
写真:NAR、中地広大(いちかんぽ)