2015年2月22日(日) JRA東京競馬場 ダート1600m
人気に応え史上初の連覇達成
地方期待の2頭は手応えの走り
2012年ナイキマドリード(船橋・川島正行厩舎)以来の地方馬参戦となった今回のフェブラリーステークスGⅠ。昨年9月に逝去した川島正行元調教師の跡を引き継ぐかのような活躍を見せている、南関東の若き司令塔2人が代表馬を送りだした。浦和・小久保智厩舎から、昨年のNARグランプリ2014最優秀短距離馬のサトノタイガー、大井・森下淳平厩舎からは、同じく3歳最優秀牡馬のハッピースプリントが出走。両馬とも交流重賞実績がある地方屈指の実力馬ということで期待と注目が集まった。今年で32回目を迎えたフェブラリーステークスGⅠだが、これまで複数回勝った馬はいない。そんな中、昨年は最低人気で劇的な勝利を飾ったコパノリッキーが、今年は1番人気の支持を受け、その偉業に挑んだ。
ゲートが開くと、逃げると予想されていたコーリンベリーが大きく出遅れ場内がどよめいた。各馬が横に広がり牽制し合う中、コパノリッキーが先手を取る構えを見せたのだが、外からアドマイヤロイヤルが主張。ここでコパノリッキーの武豊騎手は控えて外に持ち出し、2番手の好位置を確保した。「被されたくなかったし、1頭行ってくれて良い形になった」と、武騎手の冷静な判断が勝利への道筋を作った。
直線に入ると、早くも先頭に立ったコパノリッキー。「直線を向いてからは後ろを待つのではなく、自分から出して行こうと思った。最後は、ゴール目指してがんばれという気持ちだった」という鞍上の鞭に応え、追いすがる後続を振り切って堂々のゴールイン。昨年と同じく強い内容で、史上初の連覇を達成した。
2着は、ゴール前半馬身まで差を詰めた5番人気のインカンテーション、3着には3番人気のベストウォーリアが入り、上位3頭を5歳馬が占める結果となった。
昨年の大金星がフロックでないことをこの1年で証明してきたコパノリッキー。かしわ記念JpnⅠ、JBCクラシックJpnⅠとジーワンタイトルを積み重ね、高齢馬の活躍が目立つダート界に世代交代の風を吹かせた。しかしそこには、ホッコータルマエという大きな存在が立ちはだかった。2014年後半は、チャンピオンズカップGⅠ、東京大賞典GⅠと続けて完敗し、JRA賞・最優秀ダートホースの座も奪われていた。
それゆえホッコータルマエが不在のこのレースで負けるわけにはいかなった。「直線は、タルマエがいないんだから粘ってくれ!とホッコータルマエを意識している自分がいた」と村山明調教師。しっかりとその気持ちに応え、ダート界のトップホースの座を確固たるものとしたコパノリッキーだが、打倒ホッコータルマエという陣営の想いは相当強い。「もっと馬体重を増やしてパワーアップしたい」と、さらなる進化を目指している。次走はかしわ記念JpnⅠを目標とし、秋にはチャンピオンズカップGⅠで雪辱を狙う。
期待された地方馬2頭は厳しいレースとなってしまった。ハッピースプリントは11着。中団後ろからレースを進めたが、直線で末脚がはじけることはなかった。「2100メートル(川崎記念)からの1600メートルだったし、GⅠの流れについていくことができず、位置取りを確保するのもむずかしかった。最後は徐々に伸びてはいたけど…」と吉原寛人騎手。3歳時は実力差で比較的スムーズな競馬をしていただけに、一線級の古馬相手の難しさを実感したようだ。しかし、悲観は全くしていない。「ペースに慣れれば、このメンバーでもやれる力はあることが分かった」と森下調教師も吉原騎手も口を揃えた。ハッピースプリントも次走にはかしわ記念JpnⅠを予定している。2連覇を狙うコパノリッキーにどこまで迫れるだろうか。
終始後方に位置していたサトノタイガーは16着の最下位に敗れた。当初騎乗予定だった御神本訓史騎手が負傷のため、初めてコンビを組んだ三浦皇成騎手からは、「直線スーっと良い脚を使ったので、おっ!と思いましたが、さすがに前の馬たちが楽にしていたので届きませんでした。でも中央でやれる力は持っていますよ」と前向きなコメントが聞かれた。これまでJBCスプリントJpnⅠ・2着、根岸ステークスGⅢ・2着など高いスピード能力を示してきたサトノタイガーだが、小久保調教師によると、今後は元々適性のあった中長距離路線を進むというプランもあるようだ。
2頭とも着順としては残念な結果になってしまったが、レース後の各陣営の表情を見てもそれぞれに手応えを掴んだようだった。このGⅠ参戦が、今後に繋がる大きな経験となることは間違いないだろう。さらなる挑戦に注目していきたい。
武豊騎手
村山明調教師