2015年2月11日(祝・水) 高知競馬場
第1戦

第2戦

第1戦

第2戦

優勝は2戦とも2着の井上騎手
再会した同期が表彰台を独占

 29回目を迎えた全日本新人王争覇戦は、NARグランプリ2014優秀新人騎手賞を受賞した石川倭騎手(北海道)が、調教中に左手小指を骨折したとのことで残念ながら辞退となり、9名による争いとなった。とはいえ、NARグランプリ2013で優秀新人騎手賞を受賞し、さらに昨年は南関東で60勝と勝ち星を伸ばした笹川翼騎手(大井)や、昨年41勝を挙げた木之前葵騎手(名古屋)、そしてJRAからは昨年のデビュー年に47勝を挙げた松若風馬騎手、同じく38勝を挙げた小崎綾也騎手と、際立った活躍を見せている注目の若手ジョッキーが集まった。また、昨年出場予定ながら落馬による負傷で辞退していた山本聡紀騎手が、今年あらためての出場。再度の怪我でしばらく休んでいたのだが、デビューから3年以内という新人王争覇戦は今回が最後のチャンス。前日の地元船橋開催から復帰し、痛み止めを打っての出場とのことで、意欲を見せた。
 かつて、2009年の第23回までは1戦のみの一発勝負で争われていたこの新人王争覇戦だが、2010年の第24回からは2レースのポイント制による争いとなり、がぜん面白味を増した。1戦目の結果によって、2戦目では「自分は何着以内に入れば…」「誰に先着すれば…」などという駆け引きが生じるからだ。今回、そうした駆け引きが2戦目の結果、そして総合順位を左右するところが見て取れた。
 第1戦は、最内枠の笹川騎手が出ムチを入れてハナを取りきると、1~2コーナーを回るところで流れが落ち着いた。3コーナーから徐々に後続の差を広げると、ゴール前は手綱を緩める余裕があっての逃げ切り勝ち。
 3馬身差の2着に入った井上幹太騎手(北海道)は、「2番手に行こうと思っていましたが、外に出そうと思っても馬が内にささって、内の砂が重くて…」と、思い通りの騎乗ができなかったよう。たしかにダッシュがつかず馬群のうしろからとなり、なかなか外に持ち出すことができず、それでも3~4コーナーで外からまくると直線でも大外からよく伸びていた。
 単勝1番人気支持された江里口裕輝騎手(大井)は高知で期間限定騎乗の経験があり、「3コーナーあたりで笹川が内の重いところを走っていたので、もう少し早めにつかまえに行けば…」と悔しい3着だった。
 迎えた第2戦は、単勝1番人気に支持されていた小崎騎手の馬が躓いて落馬という波乱のスタート。8番枠からハナを主張した笹川騎手が一旦は単独で先頭に立ったが、6番枠の井上騎手が外に持ち出して1コーナー過ぎから馬体を併せにいき、それでペースが速くなった。互いに譲らず、3コーナー過ぎでは2頭が馬体を併せたまま3番手以下を離したが、しかしこれはいかにもオーバーペースだった。
 それを直後で冷静に見ていたのが木之前騎手で、「2人がガリガリやり合っていたので、ごちそうさま、って感じでした(笑)」と、あざ笑うかのように直線半ばで前の2頭をとらえると、そのまま突き抜けての快勝。井上騎手が2馬身差で2着に粘り、後方から直線伸びた山下雅之騎手(笠松)が3着、笹川騎手は4着だった。

 この結果、2着、2着の井上騎手が30ポイントで優勝。1着、4着の笹川騎手と、4着、1着の木之前騎手が29ポイントで並んだが、第2戦の結果により、木之前騎手が2位、笹川騎手が3位となった。
 表彰台に上がったのは、いずれもデビュー年から全国で活躍を見せていた地方競馬教養センターの91期生(2013年3月31日付騎手免許取得)。その同期3名が、技術の確かさを新人王争覇戦の舞台であらためて示す結果となった。

取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)


総合優勝
井上幹太騎手
(北海道)
2戦目は笹川との争いになって、焦ってしまい、仕掛けが早くなってしまいました。北海道の先輩が過去に何人も勝っているので、優勝したかったです。堂山(芳則)先生に言われて、(期間限定騎乗で)早めに高知に来た甲斐がありました。高知では道中の息の入れ方を学ぶことができました。
総合2位
木之前葵騎手
(名古屋)
(2戦目は)前の2人のヤル気がわかったので、それをうしろから差せたのは気持ちよかったです。同期の仲間と一緒に乗る機会はなかなかないので、楽しかったです。(2戦目で)勝てたのはよかったけど、でも(総合2位は)悔しいです。今年の目標は、(NARグランプリ)優秀女性騎手賞をとることです。
総合3位
笹川翼騎手
(大井)
(1戦目は)行ったほうが持ち味を発揮できると聞いていたので、叩いてハナに行きました。自分のペースで行けばなんとかなると思いました。(2戦目は井上騎手と)お互いに意識して、バトルみたいになってしまい、そういう経験があんまりないので負けてしまいました。おもしろかったけど、悔しいです。