吉原寛人騎手(金沢)が1位、今野忠成騎手(川崎)が2位。スーパージョッキーズトライアル第1ステージで勝利を挙げた2名が上位で迎えた第2ステージ。岡部誠騎手(名古屋)が落馬負傷によって出場をキャンセルし、代わって第1ステージで13位だった地元兵庫の木村健騎手が急遽繰り上がるというニュースが伝わったのが、第2ステージの前々日。さらに得点分布は上位拮抗という状況だから、さぞかしレース前の雰囲気はピリピリしたものだろう……。
そう思っていたのだが、そこは各地のトップジョッキーたち。検量室前では談笑する騎手も多く、“決戦前”という雰囲気はほとんど感じられなかった。第6レース終了後に、吉田勝彦アナウンサーの名調子で行われた騎手紹介セレモニーのときこそ12名の名手は神妙な表情をみせていたが、それもバックヤードに戻れば元通り。むしろ、カメラを構えたたくさんの観客のほうが、最終決戦に向けてドキドキしていたようだった。
そして迎えた第3戦のシルバーサドル賞。やはりパドックを取り囲んだ多くの観客からは、この先のドラマへの期待感と緊張感が感じられた。それに輪をかけたのが、単勝10倍以下が11頭中6頭(岩手・村上忍騎手の騎乗予定馬が出走取消)という混戦模様だった。騎手というファクターが単勝人気に加味されているのがよくわかる数字。これだけ実力が拮抗したメンバーを揃えた主催者サイドのファインプレイでもあったといえるだろう。
その11頭と11人のゲートオフ。ほとんどダンゴ状態のスローペースとなったのは、第1ステージの第2戦と同じだった。それは騎手全員が相手の胸のうちを読み合って、仕掛けどころを探り合っていたからだろう。普段の園田1400メートル戦とは流れが違うという印象で、レースは進んでいった。
その展開を味方につけたのが、このメンバーの中でもっとも園田コースを熟知している木村健騎手。ゴール後に検量室前に戻ってくるやいなや、開口一番「いいペースに持ち込んだんだけどなあ!」と、苦笑い。それを上回ったのが、今回のシリーズに出場した14名の騎手でいちばんのベテランである的場文男騎手(大井)の技だった。
道中はじっとインコースで構え、4コーナーからは怒涛のアクションで差し切り勝ち。まさに騎手生活36年のインサイドワークで得た勝利といっても過言ではない、畏怖感さえ突き刺さってくるような勝利だった。
第1ステージでは2戦の間に1レース分のインタバルがあったが、第2ステージではレースが連続。そんななか、“ぼくの優勝の目はないですからね”と、白旗を上げている騎手もいた。しかし実戦となればそんなことは忘れるのだろう。第4戦も馬と馬との間隔が狭い、12月の本番さながらのレース展開となった。
ゲートが開き、最初の3コーナーで早くも流れはスローに。12頭がじっとガマンをする道中は、スタンドにも騎手同士の緊迫感が伝わってくる。1周してスタート地点に戻ったあたりから各騎手が仕掛け始めるが、全体のペースも上がって後続は逆に苦しくなる形に。となれば先行勢。好スタートから流れを主導した的場騎手が粘りきって、好位のインコースで脚を溜めていた五十嵐冬樹騎手(北海道)が2着。2レースともに馬番の「1−2」で決まったのは、ともに展開がタイトだったことを証明しているといえるのかもしれない。
第3戦の勝利騎手インタビューで「次もがんばりますので、よかったら買ってください」とファンに呼びかけ、有言実行で期待にこたえた的場騎手。総合優勝のインタビューでは「感謝しています」と何度も口にしていた。ワールドスーパージョッキーズシリーズ初出場。南関東で長きにわたってトップに君臨してきたその技術は、世界の大舞台でも大いに堪能できることだろう。