12月5〜6日にJRA阪神競馬場にて行われる、ワールドスーパージョッキーズシリーズは、騎手であれば誰もが立ちたい夢の舞台。そこへと至るこの関門も、遠征競馬が基本的に少ない地方競馬の騎手にとっては、自分を成長させる啓発のひとつとなる。しかしながら、最大の目標は優勝の2文字。ましてや本番では、2004年から5年連続で地方競馬代表騎手が全4戦のうち1勝を挙げているという事実も、各地のトップジョッキーを奮い立たせる要因のひとつになっているはずだ。
とはいえ、いつもと勝手が違う、戸惑いのような心理状況となっている騎手も多数。「勝ちたい」よりも「落ちたくない(園田に行きたい)」という声が多く聞かれたのは、おそらく正直な想いなのだろう。
昨年は全員が第2ステージに進めたが、今年はここで14名から12名へと絞られる設定。ましてや、不慣れな騎手も多い左回りの船橋競馬場が第1ステージの舞台である。さらに第1戦は1000メートルの短距離戦。コーナー4つ以上のレースが大半の競馬場からの代表騎手には、さらにハンデが加わることになる。
その戦いの場へと挑んでいく各騎手には、パドックの段階から張り詰めた表情が。2コーナーの待避所での輪乗りを見ていても、そんな感覚が伝わってくる。そのなかで行われた第1戦を制したのは、川崎の今野忠成騎手。外から余裕をもっての差し切り勝ちは、馬の能力を十二分に発揮させた好騎乗だった。そして2着は、好スタートから徹底してインコースを攻めた佐賀の山口勲騎手が確保。続いて、全国リーディングを走る戸崎圭太騎手が、ソツのない騎乗で3着に入線した。
1着から14着まで最初の結果は出たものの、大舞台への切符をあきらめるにはまだ早い。検量室に戻ってきた各騎手は、パトロールVTRを映す画面の前に集結して真剣な表情。そして第2戦の装鞍を済ませたあと、再び画面の前に戻ってきた。第1戦と第2戦の間に組まれているレースは、第2戦と同じ1600メートル戦。その画面を注視する表情は、とても声を掛けられるような空気ではなかった。そんな緊張感のなか、ひとり私服に着替えてニコニコしていたのが、第1戦で4着に入って第1ステージ通過を確定させた、高知の赤岡修次騎手。じつは赤岡騎手、第2戦の騎乗予定馬が出走取消になっていたのだ。2年前のシリーズ優勝騎手が解放された表情をみせるほど、この戦いには深いものがあるのだろう。
それが形となって現れたのが第2戦。福山の楢崎功祐騎手が引っ張る流れはスローペース。船橋のC1クラスで大半が5〜6馬身圏内というダンゴ状態は、普段はあまり目にすることがない展開だ。その流れから直線半ばで一気に抜け出したのが、金沢の吉原寛人騎手。早めに先頭に立った大井の坂井英光騎手を差し切っての勝利だった。
この結果、第1ステージを終えてトップに立ったのは、参加騎手のなかで唯一2戦とも掲示板を確保した、吉原寛人騎手。6ポイント差の2位には第1戦を制した今野忠成騎手、それぞれのレースで2着に入線した坂井英光騎手と山口勲騎手が、ともにトップと10ポイント差で続いた。
第2ステージに進む12名の騎手は、3週間後のその日に向けて緊張感が続くことになる。残念ながらここで脱落となってしまった2名の騎手も、これをバネにして来年も再びこの舞台を踏めるようにと、地元でさらなる奮闘を見せてくれることだろう。