JpnIの看板に偽りなし、着差以上の完勝で久々のタイトル
開設から60年、サラブレッド導入から4年弱の福山競馬場に、ついにJpnI馬が出走した。昨年末JRAから兵庫に移籍したイイデケンシンは、一昨年の全日本2歳優駿JpnIの勝ち馬で、前走で移籍後初勝利を挙げ、勇躍ここに参戦。ダートグレード重賞勝ち馬ですらまだまだ珍しい福山競馬場にとって、2歳チャンピオンとはいえその金看板は未知との遭遇で、それだけで1番人気に推される理由としては十分なもの。競馬場に集まったファンの目は、地元所属馬たちがどこまでやれるかよりも、生で初めて目撃するG1馬の走りに注がれていた。
「絶対に(ハナは)譲りたくなかった」と強い姿勢で臨んだ木村健騎手の目論見通り、イイデケンシンが好スタートから積極的にレースを先導。福山では重賞2連勝中の高知のセトノヒットがこれに続き、笠松のキャプテンハートと高知のファンドリコンドルが直後を追走する展開となった。1周目のスタンド前ではペースを一旦スローに落とし込んだイイデケンシンだったが、2コーナーにさしかかると徐々にペースアップ。後続も懸命にこれを追うが、余力十分のイイデケンシンの脚は最後まで衰えることなく、1馬身という着差以上に危なげなく先頭でゴール。直線でインを突いたキャプテンハートが2着。一旦はイイデケンシンの外から並びかけたセトノヒットは、外を回した分ハナ差で3着に。トミノプラネットが5着に入り、他地区遠征馬による掲示板独占はなんとか免れた。
|
|
木村健騎手 | | |
| |
| |
イイデケンシンは全日本2歳優駿以来久々の重賞タイトル。3歳春に敢行したドバイ遠征の出国検疫中につきっきりで調教に跨ったという、この日のゲストのJRA西原玲奈騎手もその勝利に満面の笑み。長く続いた低迷からの反撃の狼煙を上げる勝利となったと同時に、JpnI馬という肩書きの持つ重みとその看板に偽りがないことを、福山のファンに力で納得させてみせた。
かつてはアラブ3歳の全国交流重賞として行われ、ニホンカイユーノスや先日まで現役で活躍していたグリーンジャンボらが優勝馬に名を連ねている瀬戸内賞が、今回サラブレッドの全国交流重賞としてリニューアル。アラブ系単独競走がいよいよ終焉を迎えるこのタイミングで行われ、未知なる大きな存在であったJpnI馬が勝利したことは、「アラブ王国」から次の歴史へ向かう福山競馬場の今を象徴している。そして、イイデケンシン自身にとっても、新たなキャリアのスタートを象徴する勝利となったともいえるだろう。
|