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2010年2月18日(木) 園田競馬場
ファイティングジョッキー賞 seiseki movie
エキサイティングジョッキー賞 seiseki movie

第1戦 ファイティングジョッキー賞
第2戦 エキサイティングジョッキー賞

ひとつでも上をという執念、岩田騎手が念願の初優勝

 風こそ冷たかったものの春を思わせるような陽射しに恵まれた2月18日、第18回ゴールデンジョッキーカップが園田競馬場で開催された。
 今年も、すっかり名物となっている吉田勝彦アナによる騎手紹介で幕を開けた。全12人の騎手の騎乗馬は、競馬ファンによる公開抽選で決まっている。例年と違うのは、計2レースでのポイント争いになったことだ(昨年までは3レース)。
 2000勝以上の達人たちが繰り広げたレースは、息を呑むほど見応えのあるものであった。馬場が稍重だったことや、2戦ともメンバー的に混戦であったこともレースをおもしろくした面があろう。が、園田競馬場のコース特性をまずは頭に浮かべて欲しい。向正面にある上り坂のあたりからの攻防が、いつにも増して刺激的であったからだ。
 第1戦は、1400メートルのファイティングジョッキー賞。1、2コーナーでは縦長になる流れで、それでも向正面の中間あたりではかなりの動きが出た。なかでも目を引いたのは、武豊騎手鞍上のスナークホーオーと内田利雄騎手が手綱を取ったヒビキマーカーである。ただ、そのあとこの2頭は他馬とともに3コーナーから4コーナーにかけての下り坂を利して行くのだが、前者は「砂をかぶらずに行け」、後者は「砂をかぶったがゆえに馬が少しヒルんでしまった」そうだ。終いはヒビキマーカーの末脚のほうが目立ったが先に先頭に立っていたスナークホーオーも譲らず、激しい叩き合いの末、スナークホーオーにハナ差、軍配が上がった。「うまく外へ出せた」と微笑んだ武豊騎手は、ゴールデンジョッキーカップでの勝利は初めてなんだそうだ。
 2戦目のエキサイティングジョッキー賞は、有馬澄男騎手騎乗のザサンデーアミフジの逃げで始まった。すぐ後ろを人気の1頭である安部幸夫騎手のセレスマリオットがぴったりマーク。1番人気に推された岩田康誠騎手のシルクストラーダもいいスタートを切って好位につけるも、こちらはペースに合わせて少しずつ位置取りが前になって行った。それにしても驚いたのは、2コーナーを回ったあたりでザサンデーアミフジとシルクストラーダがほぼ並ぶと、そこからはもうほとんどこの2頭のための競馬のようになったからである。後ろの馬たちは、手も足も出ない。我々は、ただただ固唾を呑んでレースを見守った。絶妙なペースで3コーナーを過ぎ、4コーナーを回ると、あとはシルクストラーダの独壇場であった。

 
総合優勝
岩田康誠騎手
(JRA)
  勝った2戦目はペースが遅い中で、馬と話をしながら自然な流れに乗って行きました。ゴールデンジョッキーカップはすごい先輩たちと一緒に出られるだけでも嬉しいし、ここで勝てたことは自信にもなります。  
 
総合2位
有馬澄男騎手
(兵庫)
 
  2戦目は勝った相手が一枚上手でしたが、馬はよく頑張ってくれましたよ。ゴールデンジョッキーカップは、各地のジョッキーと1年ぶりに会えて、みんなの元気な顔を見て一緒に乗れる。本当に楽しんで乗れるレースです。
 
総合3位
内田利雄騎手
(浦和)
  とにかく悔しいのは1戦目です。接戦でいいレースでしたけど、あのハナ差はとても大きい。勝っていればゴールデンジョッキーカップも優勝できて、しかも連覇だったのにね。でも、今年もとても楽しかったです。 
 
 
 
  

 
 

 それぞれのレースだけでも十分に堪能できたが、さらに刺激的だったのは、総合点として最高だった26点が岩田騎手と有馬騎手の2人で並んだことだ。結果として1着のある岩田騎手が優勝となったのだが、だからこそ忘れえぬ彼の言葉がある。1戦目を終えた直後のことで、6着だった彼は「6点を確保した」とつぶやいたのだ。そのことに水を向けると、力強く頷いた。
 「ね、(結果が)違うでしょう。たとえノーチャンスの馬でも一つでも上の着順に持って来ることが、のちに明暗を分けることがある。今回は、こうして優勝に繋がりました」
 そう言って、顔を大きくほころばせた。
 なにしろ兵庫在籍中の2002年に2000勝を達成して以降、ゴールデンジョッキーカップには毎年参戦してきたが、今回やっとの初優勝である。多くのファンはそれを分かっているから、祝いの言葉と惜しみない拍手を彼へ送る。表彰式が行われた頃には厚い雲が空を覆ってかなり冷え込んでいたが、それでも色紙を差し出すファンに一人残らず応えていた岩田騎手もまた、印象的であった。

 

取材・文:芦谷有香
写真:桂伸也(いちかんぽ)