2009年11月3日(祝・火) 名古屋競馬場 1900m
成長し続ける7歳馬、GI(JpnI)8勝目の日本記録
ヴァーミリアンにずらりと◎が並んだ。単勝は最終的に1.3倍。その期待にこたえれば、02〜04年のアドマイヤドンに並ぶJBCクラシック3連覇。そして、何頭かの名馬が越えられなかったGI(JpnI)勝利数の日本記録を更新して8勝目となる。
現役馬でいえば、このレースにも出走しているブルーコンコルドが昨年10月のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでGI(JpnI)7勝目を挙げ、続いたカネヒキリは今年の川崎記念JpnIでその記録に並んだ。そしてヴァーミリアンは、今年6月の帝王賞JpnIを圧勝してその2頭に追いついた。
GI(JpnI)8勝の新記録達成は、やはり楽なものではなかった。
外から一気にマコトスパルビエロが交わして先頭を奪うと、さらにワンダースピードが続き、好スタートから一旦はハナに立ったヴァーミリアンは、内の3番手に控えた。
勝負どころの3コーナーでもヴァーミリアンの武豊騎手の手ごたえは楽。しかしラチ沿いのすぐ前にはマコトスパルビエロ、外にはワンダースピード、さらには直後にブルーコンコルドが迫ってきていて、外に持ち出すことができない。手ごたえはよくても、三方を囲まれ自分からはまったく動けない状況だった。
すでに外に持ち出す余裕はなく、ほとんど隙間のないラチ沿いから抜けてこられるのだろうかと思ったが、193メートルと短い名古屋の直線で、マコトスパルビエロの内からぐいとアタマ差前に出たところがゴールだった。
「とにかく内をずっと狙っていました。見ているほうはドキドキしたかもしれません」と武豊騎手。見ている者の印象よりも、自信を持っての抜け出しだったようだ。
2着のマコトスパルビエロから、さらにクビ差でワンダースピードが入り、終始3頭が一団で競り合う見ごたえのあるレースだった。
ヴァーミリアンは、さすがに7歳の秋ともあれば、成長や上積みはないだろうと考えるのが普通だ。しかし石坂正調教師は「成長し続けている」という。それは気性面だ。「競馬に集中している。一切ムダな動きはしない」と。なるほど、そうした部分の成長が、体力的な部分をカバーしているのだろう。
JBCクラシックJpnI3連覇に、GI(JpnI)8勝目。あらためてすばらしい記録だ。
今年もJRA勢が上位を独占する結果となり、地方最先着は、地方勢ではもっとも期待されていた笠松のマルヨフェニックスの5着。勝ったヴァーミリアンから2秒4の差をつけられた。スタートに難のある馬で、今回も伸び上がるようなスタートで、出遅れというほどではないものの、決していいスタートとはいえなかった。JpnIでは、これで昨年の帝王賞(4着)に続いての掲示板確保。さすがにJpnIクラスになると厳しいが、JpnIIIならどこかでひとつくらいはと期待したい。
武豊騎手
スタートがよかったので、このコースならハナを切ってもいいかなと思っていました。とにかく乗りやすい馬です。外には出られないと思い、内がちょっとあいたときに一気に行こうと思いました。3連覇ですが、(馬の状態は)今が一番いいかもしれないです。
石坂正調教師
手ごたえは十分あるけど、前に馬がいて出られない展開。あそこから出てこられたのがヴァーミリアンの力ですね。落ち着いて競馬に集中していて、よくぞこういう精神状態の馬になれたなと思います。体力的に衰えを見せていませんし、次のジャパンカップダートでも勝利に向かっていくことができると思います。
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(宮原政典、三戸森弘康)、NAR