地方のダートで素質開花、通算10勝目が念願の重賞初制覇
ここ1〜2年、中央ダート戦線の充実ぶりが目覚しい。それゆえ、今年ここまで地方所属馬がダートグレードを勝ったのは、ダイオライト記念JpnIIでのフリオーソのみ。今回の白山大賞典JpnIIIもそれを象徴するようなレースで、地方勢の出走は4頭。特に地元金沢勢はビッグドンのみと、やや寂しい状況となった。
スタートして間もなく中央勢5頭が一団となって先行集団を形成し、7〜8馬身離れて地方の4頭が追走という展開。ペースを握ったのは、最終的に僅差で単勝1番人気となったウォータクティクス。しかし、直後を追走していたアドマイヤスバル以下の中央勢が3コーナー手前の勝負どころで仕掛けると、ウォータクティクスは後退。直線ではアドマイヤスバルが単独で抜け出し、完勝となった。
「コンスタントに力をつけて、10勝目でようやくジースリー(JpnIII)制覇になりました」と、感慨深そうに語ったのは中尾秀正調教師。中央ダートのオープン特別はすでに4勝を挙げていたが、これが重賞初制覇となった。前走初の地方遠征となったブリーダーズゴールドカップJpnIIでは、スマートファルコンの1馬身差に迫る2着。「地方は(距離の)長いところを選んで使えるのがいいですね」(中尾調教師)とのことで、ゆったりレースが流れる2000メートル以上の地方のダートグレードに、この馬の適性を見出したようだ。
最後の直線、アドマイヤスバルに唯一食い下がって2馬身差の2着に入ったのが、中央勢ではもっとも人気のなかったサカラート。予定されていた藤岡佑介騎手が急遽の乗替りで、またとないチャンスが巡ってきたのは、今シーズン地元金沢リーディング2位の吉田晃浩騎手だった。大一番での2着を喜びながらも「もう少しなんとかなったのではないか」という気迫が、9歳馬を奮い立たせたように見えた。
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勝浦正樹騎手
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中央勢が掲示板独占かとも言われていたが、トライアルのイヌワシ賞を制してここに臨んだ名古屋のマヤノグレイシーが5着に食い込んだ。ウォータクティクスが前走東海ステークスJpnII同様に勝負どころで急激に失速してしまったためともいえるが、それだけが理由ではない。苦戦する地方勢の中でも、今年も金沢のリーディングに立つ吉原寛人騎手が早めに前の中央勢をとらえるべく、2コーナーあたりから積極的に追いかけた結果でもある。
地方馬劣勢の中にも、地方ジョッキーのヤル気が見て取れた。
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